3 / 25
3. 「この肉は何の肉ですか?」
しおりを挟む27歳にもなって、たくさん泣いてしまい、めちゃめちゃ恥ずかしかった朝、こっそりそろっと起きて小さな声で「おはよう」と言った俺をバルさんはよしよしと小さな子にするように頭を撫でてくれた。
そこで俺はもしかして、とふと思い、バルさんに聞いた。
「俺のこといくつだと思ってます?」
バルさんはニコニコ笑って、「15、6くらいだろうか?」と首を傾げた。
子ども扱いしてるかどうか、微妙な年を言われてしまい、「子ども扱いしないでください!」と言いにくくて、俺はバルさんの年齢を聞いた。
「んー……24ってことになってるけど本当の年齢は覚えてない。多分もう少し上かな」
バルさんの答えは曖昧なもので、普通に年齢教えてもらえると思ったから、コメントしにくくて、もしかしてバルさんにも色々あるのかなとかアホみたいに考えながら、俺は「俺も多分そのくらいかと」と言ったらバルさんが目を見開いた。
「……成人まであと何年かあると思って、記憶がない間の保護者になるつもりでいた」
いや、俺なんてバルさんの腕にぶら下がれそうだもんな。昨日なんて子どもみたいに泣いて、本当にそりゃそう思われてもおかしくないけど、バルさんの「保護者になるつもり」という言葉にまた涙腺を刺激された。
俺を心配してくれる人が、ここに、一人でもいる。
子ども扱いされてるけど、確かに俺を保護してくれる存在が、俺の不安を拭ってくれる。
「俺大人だけど記憶ない分子どもよりひどいかも……バルさんにすごい迷惑かけてて、本当に申し訳ないよ……」
ここの生活どうしていいか全くわからないまま、バルさんの厚意に甘えている。俺はバルさんがいなかったらきっと森で丸裸でドラゴンに食われて死んでただろう。
落ち込んだ俺の頭を、バルさんはまたポンポンと大きな手で撫でると、朝食の席に俺を座らせた。
「大丈夫だ。いつまででもいていい。迷惑だとか気にしないで何でも聞いてくれ」
バルさんの言葉はまっすぐ響いて、俺はそれだけで大丈夫なような気がした。
できたての朝食が並んだテーブルに、俺は大変なことに気づいた。
「あっ……俺、起きるの遅かった……」
全然何も考えていなかった。俺は早起きをして朝食の準備でも、肉屋の仕事でも、掃除でも、何でも手伝うべきだったのだ。
「そんなのいいよ。ほら食べて!」
温かいスープと、美味しそうな肉が挟まったサンドイッチ。スープはテールスープみたいな感じで肉が浮かんでる。
「何の肉かな……」
俺がつぶやくと、バルさんはニコッと笑って「グリフォンのテールスープだよ!」と言った。ひええ。
「明け方に狩ってきたばかりだよ」
グリフォンってあれ?? 狩れるの?
俺の頭の中には、何かのカードゲームのキャラクターのグリフォンがモワワーンと思い出された。
下半身ライオンじゃん。ライオンのテールじゃん。
てことは、このサンドイッチの肉は、グリフォンのどこかの肉ですね。もう俺にはわかった。
「サンドイッチにはグリフォンの手羽先唐揚げ挟んでるよ」
手羽先って言い方で一気に鶏っぽくなったから、そう思えば大丈夫。手羽先は一番良く食べてたし大丈夫。ただ、グリフォンを狩って捌くとか、バルさんすごすぎないか。ここでは普通のことなのかもわからなくて、俺はどこまで反応すべきかわからなかった。
「グリフォンって……その辺にいるの?」
とりあえずドキドキしながら聞いたら、バルさんは「乗り物として飼う人もいるし、狩ってきたのは野生のグリフォンで、店にも出すぞ」って言うから、俺はひえってなりながら、バルさんに「他にも狩って店に出すの?」って聞いた。
「んー、仕入れたりもするけど、狩ってきた方が新鮮だしな。明け方に狩りに行ったり、店を早めに閉めて行ったりもするな」
バルさんはニコニコ楽しそうに話してくれる。
俺は狩りは流石に手伝えないな。
店番くらいなら教えてもらえば何とかなるかも。
俺はグリフォンをモグモグ食べながらそんなことを考えていた。
テールスープみたいなやつは、ホッとする味だった。俺は安心して飲み干した。バルさんは「おかわりあるぞ」って言ってくれたけど、俺は遠慮した。
バルさんは「狩りをするとお腹が空くんだ」とモリモリ肉を食べていた。良質なタンパクがバルさんの筋肉を作っているんだな、と俺はぼんやり思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる