いつの間にかそこは肉屋でした

松本カナエ

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23. 「体力がないのにすまない」だと?

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 中に受け入れる行為が初めてのことだったからなのか、俺は何回かイッた後眠ってしまっていたようだった。
 目を覚ますと、ふかふかのベッドの中だった。夢じゃないよな、と不安になって、バルさんがいなくなっているのではないかと慌てて手を伸ばすと、大きな手に包まれる。
 目の前にバルさんの顔があった。

「俺、寝てた? どのくらい??」

「心配した……そんなに時間は経っていない。初めてなのに気を失うほどしてしまった。モリトは体力がないのにすまない」

(体力がないのにすまない、だと??)

 俺は衝撃を受けた。雷に打たれたかと思った。確かに俺の腕はバルさんの腕の二分の一もないけど、そんなに体力がないとは自分自身では思っていなかった。というか、寝てしまったと自分では感じたけど、気を失っていたのか。

(体力の問題なの??)

 体力じゃなくて、多分、気持ち良すぎて、どこかに昇りつめてしまったんだと思う。俺は何だか深刻そうにすまないと言っているバルさんにできるだけ軽い口調で言った。

「俺、寝ちゃったみたいだな」

 俺もバルさんも裸のままなのは、ベッドの中で触れる感触でわかった。
 身体中香油と精液でベトベトだったと思うのだが、今はきれいになっていた。バルさんが全部拭ってくれたのかと思うと、申し訳ないやら恥ずかしい。
 多分、中にもバルさんの出したものとか入ってきていたと思う。それもすっかり多分きれいになっている。違和感はあるけど。
 それをされても、目を覚まさないほど寝ていたなんて、そりゃ心配もされるだろう。

「寝ているモリトの身体を拭きながらあまりにも華奢で心配になった。もっと食べろ」

 バルさんは、俺の腰を抱き寄せてスルッと撫でた。何だかまだエッチな触り方をするなと思ったけど、もっと食べろと言われて俺は困惑した。

「俺はそんなに華奢じゃないし体力がないわけじゃないけど……くすぐったいよ、バルさん」

 俺が身をよじると、バルさんに密着してしまう。ここからもう一戦するのはさすがに、と思っていると、バルさんが言った。

「俺が足りない。モリトをもっと欲しい……だが、モリトをこれ以上抱いたら壊してしまいそうだから」

 バルさんのまなざしは、未だに熱を帯びていた。そして、キュッと眉を寄せるその顔は最中に何回か見た顔だった。俺は気づいてしまった。バルさんは俺を壊さないように、我慢しているんだと。

「それバルさんが体力おばけなだけじゃん。それに、俺、バルさんにならもっと激しくされても大丈夫だよ」

 俺はバルさんにそっとそう言う。

「そんなわけないだろう?」

 バルさんは心配そうに俺を見返してくる。

「俺、バルさんになら、多分捌かれて食べられてもいいよ」

 自然にそう思った。
 思ったまま口にする。バルさんの目の中に映る俺は笑っていた。

「そんなこと言うな」

 バルさんは困ったように眉を下げて、俺を抱きしめた。

「俺が死んだらバルさんが捌いて、食べてよ」

 俺はなおも言った。おかしなことを言っているなと自分でも思ったけど、止まらなかった。バルさんは少し何かを考えるように息を止めると、俺をぎゅうっと抱きしめたまま、片方の手で俺の頭を撫でた。

「……わかった。まあ、そんな時が来ないことを祈るし、俺はモリトを全力で守るから、死ぬとしたら俺の方が先だ」

 俺はバルさんを抱きしめ返した。

「んー、俺はバルさんなしじゃ生きていけないからバルさんは死んだらだめだよ」

 俺がバルさんにきっぱり言うと、バルさんはようやく腕の力をゆるめて、肩を震わせた。

「ふっ……ははっ……モリトのワガママはかわいいな」

 バルさんは笑いながら、俺の髪を大きな手で梳く。そして、目を細めると、真剣な顔で俺を見つめた。

「俺は、モリトを愛している。モリトと出逢えて、俺はモリトを全力で守りたいと思った。そして、モリトと生きていきたい」

 バルさんの言葉に俺は頷いた。

「俺も、バルさんと離れて、離れてしまったことを後悔した。もう離れたくない。ずっと一緒にいたい。俺と一緒に生きて」

 俺はバルさんの耳もとに口を寄せると、愛の言葉を囁いた。バルさんにしか聞こえないようにそっと。


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