23 / 25
23. 「体力がないのにすまない」だと?
しおりを挟む中に受け入れる行為が初めてのことだったからなのか、俺は何回かイッた後眠ってしまっていたようだった。
目を覚ますと、ふかふかのベッドの中だった。夢じゃないよな、と不安になって、バルさんがいなくなっているのではないかと慌てて手を伸ばすと、大きな手に包まれる。
目の前にバルさんの顔があった。
「俺、寝てた? どのくらい??」
「心配した……そんなに時間は経っていない。初めてなのに気を失うほどしてしまった。モリトは体力がないのにすまない」
(体力がないのにすまない、だと??)
俺は衝撃を受けた。雷に打たれたかと思った。確かに俺の腕はバルさんの腕の二分の一もないけど、そんなに体力がないとは自分自身では思っていなかった。というか、寝てしまったと自分では感じたけど、気を失っていたのか。
(体力の問題なの??)
体力じゃなくて、多分、気持ち良すぎて、どこかに昇りつめてしまったんだと思う。俺は何だか深刻そうにすまないと言っているバルさんにできるだけ軽い口調で言った。
「俺、寝ちゃったみたいだな」
俺もバルさんも裸のままなのは、ベッドの中で触れる感触でわかった。
身体中香油と精液でベトベトだったと思うのだが、今はきれいになっていた。バルさんが全部拭ってくれたのかと思うと、申し訳ないやら恥ずかしい。
多分、中にもバルさんの出したものとか入ってきていたと思う。それもすっかり多分きれいになっている。違和感はあるけど。
それをされても、目を覚まさないほど寝ていたなんて、そりゃ心配もされるだろう。
「寝ているモリトの身体を拭きながらあまりにも華奢で心配になった。もっと食べろ」
バルさんは、俺の腰を抱き寄せてスルッと撫でた。何だかまだエッチな触り方をするなと思ったけど、もっと食べろと言われて俺は困惑した。
「俺はそんなに華奢じゃないし体力がないわけじゃないけど……くすぐったいよ、バルさん」
俺が身をよじると、バルさんに密着してしまう。ここからもう一戦するのはさすがに、と思っていると、バルさんが言った。
「俺が足りない。モリトをもっと欲しい……だが、モリトをこれ以上抱いたら壊してしまいそうだから」
バルさんのまなざしは、未だに熱を帯びていた。そして、キュッと眉を寄せるその顔は最中に何回か見た顔だった。俺は気づいてしまった。バルさんは俺を壊さないように、我慢しているんだと。
「それバルさんが体力おばけなだけじゃん。それに、俺、バルさんにならもっと激しくされても大丈夫だよ」
俺はバルさんにそっとそう言う。
「そんなわけないだろう?」
バルさんは心配そうに俺を見返してくる。
「俺、バルさんになら、多分捌かれて食べられてもいいよ」
自然にそう思った。
思ったまま口にする。バルさんの目の中に映る俺は笑っていた。
「そんなこと言うな」
バルさんは困ったように眉を下げて、俺を抱きしめた。
「俺が死んだらバルさんが捌いて、食べてよ」
俺はなおも言った。おかしなことを言っているなと自分でも思ったけど、止まらなかった。バルさんは少し何かを考えるように息を止めると、俺をぎゅうっと抱きしめたまま、片方の手で俺の頭を撫でた。
「……わかった。まあ、そんな時が来ないことを祈るし、俺はモリトを全力で守るから、死ぬとしたら俺の方が先だ」
俺はバルさんを抱きしめ返した。
「んー、俺はバルさんなしじゃ生きていけないからバルさんは死んだらだめだよ」
俺がバルさんにきっぱり言うと、バルさんはようやく腕の力をゆるめて、肩を震わせた。
「ふっ……ははっ……モリトのワガママはかわいいな」
バルさんは笑いながら、俺の髪を大きな手で梳く。そして、目を細めると、真剣な顔で俺を見つめた。
「俺は、モリトを愛している。モリトと出逢えて、俺はモリトを全力で守りたいと思った。そして、モリトと生きていきたい」
バルさんの言葉に俺は頷いた。
「俺も、バルさんと離れて、離れてしまったことを後悔した。もう離れたくない。ずっと一緒にいたい。俺と一緒に生きて」
俺はバルさんの耳もとに口を寄せると、愛の言葉を囁いた。バルさんにしか聞こえないようにそっと。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
イケメンな先輩に猫のようだと可愛がられています。
ゆう
BL
八代秋(10月12日)
高校一年生 15歳
美術部
真面目な方
感情が乏しい
普通
独特な絵
短い癖っ毛の黒髪に黒目
七星礼矢(1月1日)
高校三年生 17歳
帰宅部
チャラい
イケメン
広く浅く
主人公に対してストーカー気質
サラサラの黒髪に黒目
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる