栞の魚と人魚姫

月兎もえ

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海の城

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暗いはずの海の底は、思った以上に明るかった。見たこともない木や草花も生えていて、踊るようにゆらゆらと動いていた。その葉や枝の間を、今の私のような、色鮮やかで可愛らしい魚たちが忙しそうに泳いでいた。
「姫様!」黄色い体が眩しい魚が私たちの姿を見つけると、ロケットのように泳いできた。
「どこへ行っていたのですか?皆で探していたのですよ!さぁ早くお支度を!」黄色い魚が、人魚のの背中をぐいぐい押す。
「ごめんなさい。みちるを探していたの。一緒に準備したかったから。」 
黄色い魚が大きな目で、ギロッと私のことを睨む。怖!
「まったく!そもそも姫様がいなくなったから、みちるが探しに行ったのではないですか!逆に姫様にお手を煩わさせてしまうなんて!」
めっちゃ怒ってるよ、この魚!
「まぁ、まぁ!いいじゃない!こうしてみちるも、私も見つかったのだし!」人魚が仲裁に入ってくれた。
「いいえ!今日こそ言わせてもらいます!大体みちるはメイドなんだから、もっと立場をわきまえて!姫様も姫様です!いつもみちるに甘すぎます!大体・・」永遠と続きそうなお説教が始まった。
人魚は溜息をつき、私と目を合わせ、小さい声で「また始まったね」と言った。毎度のことなのだろうか?どうやら、この魚の話だと、この人魚はやっぱりお姫様で、私はメイドらしい。こんなちっちゃな体でメイドしてるなんて、偉いなぁ。
「みちる!聞いているのか!」びっくりした!聞いてませんとも!
「ええ、申し訳ありませんでした。以後気をつけます。」当たり障りのない返事をする。
「ふむ。わかったならよろしい。では、姫様のお支度任せましたよ。」黄色い魚は忙しそうに泳いで行ってしまった。なんだ、意外とすんなり許してくれるのね。
「あら、お説教を聞いている間に着いちゃったわね。」人魚姫は指を指した。その先には・・
あまりの美しさに目を見張る。そのお城は、優しいピンク色をした珊瑚でできていて、窓は透き通った琥珀でできていた。屋根はピカピカに磨かれた貝でできていて、度々開いたり閉まったりしていて、お城が生きているようであった。お城の周りには6個の花壇があり、それぞれまとまりが無かったが、一つ一つを見るとどれも美しい花が植えられていた。赤い花のみが植えられている花壇には、白い人型の像が立っていて、こちらを見ているようだった。
えぇー!あの花壇だけ個性的!
「みちる、どうしたの?ボーッとしちゃって?気分でも悪い?」人魚は心配そうに私の顔を覗き込む。
「何でもないです!」私は慌てて答えた。
「なら良かった!」人魚はにこっと微笑み、私の手をとって、お城の中へ入って行った。
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