栞の魚と人魚姫

月兎もえ

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人間の少女

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それから、私はしばらく飛び続けた。途中で行き交う小鳥や動物たちの噂だと、王子が、浜辺で口の聞けない少女を連れ帰ったと聞いたので、お城に向かった。お城に着いたはいいものの、外からでは人魚姫の姿を見ることはできなかった。数日たったある日、ベランダの椅子に、美しい金髪の少女が座っているのを見かけた。人魚姫だ。いや、もう人魚ではないのか。とりあえず、無事で良かった。
「人魚姫ー!」私は叫んだ。
人魚姫はパッと顔を上げた。不思議そうな表情を私に向けた。
『どうしてこの鳩は私が人魚姫だということをしっているの?』人魚姫の心の声が聞こえた。直接耳元で話されているような感覚だった。
「私はみちるです。魔女さんに薬をもらって鳩にしてもらいました。」
人魚姫は一瞬驚いた顔をして、私に抱きついた。
『みちる!私を心配して来てくれたのね!本当に優しい子!』
「当然です。召使い兼、親友ですから。」人魚姫は私を抱く腕を強めた。
『ありがとう。』私は目を細めた。
「ところで、人魚姫はテレパシーが使えるのですか?」
『テレパシー?』
「今、心の声で会話されていますよね?」
人魚姫は、ハッと驚いた。
『本当だ!みちるはどうして私の心の声が聞こえるの?』
今気づいたんかい!まぁ、ということは、彼女とテレパシーで会話できるのは、私だけだということか。
「おそらく、魔女さんの力だと思います。」
『そっか!良かったわ!やっぱり話せないのは不便なのよ!』
「ところで、王子は?」
『今、出掛けているの。もうすぐ帰ってくるのではないかしら?帰ってきたら婚約者を連れてくるそうよ。』人魚姫は悲しそうに言った。
「そんな!もし、その婚約者を好きになって、結ばれてしまったら、姫さまは・・。」
『泡になってしまうわね。でもね、』人魚姫の表情は一気に明るくなった。
『王子のお父様が勝手に決めたことだから、時期を見てお断りするっておっしゃってたわ!王子は好きな人以外と婚約は絶対しないのですって!王子は海で溺れた時、助けてくれた女性が好きで、王子が助けられたと思っている女性は、寺院にいた方だから、その方とは婚約できないわ!それに・・』人魚姫は複雑そうに笑った。『王子は私のことも好きだと言ってくれたの。本当の兄妹のように思っているって。』
「兄妹・・」
『でも、この短い期間の間に兄妹とまで思ってくれたのよ!きっといつか、恋人のように思ってくれる日がくるわ!』人魚姫は目を輝かせた。ついこの間まで、お日様や人間にしか興味がなく、どうせ、と言って諦めてばかりいた少女だったのに。今では眩しいくらいに、夢と希望で満ち溢れている。反対に私は不安と絶望でいっぱいだった。わかっているから。その婚約者が、結末が。
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