1 / 4
LifeDonate
しおりを挟む
コロコロ。
静まり返った部屋に、マウスのスクロールの音が響いた。
不気味な程明るいディスプレイを虚な目で眺める。
『初心者歓迎!』『資格不要!』『アットホームな職場です!』『残業少なめ!』聞こえはいいけれど、私は知っている。
『でも優先するのは経験者!』『同じ仕事内容だけど、給料低いよ!』『あんまり職員いないから、人間関係気をつけて!』『終わらなかったらお家でよろしく!それか、お金はだせないけど頑張ってね!』・・・と変換もできるのだ。
仕事を辞めて一年。最初は嬉しかった。明日から早起きしなくて良い。仕事に行かなくても良い。職場の人と顔を合わせなくても良い。全てから解放された気持ちだった。でもそんなウキウキした気持ちは最初の一週間だけ。その後にじわじわと来たのは焦り。中々条件の合う求人が見つからない。気になったのがあっても、電話する勇気がでなくて、「明日しよう」「あさってしよう」と思って、結局期限がきれてしまう。
やっとのこと行けた面接も、緊張で上手く話せないし、何より『仕事を辞めた理由』を聞かれるたびに気が滅入る。何で皆んな辞めた理由ばかり聞くのだろうか?楽しくて辞める人なんていない。他にやりたいことがあったり、結婚とか、引っ越しとか、それぞれだけれど、そういったことがないなら、何か話したくないことがあって辞めることがほとんどだと思う。でも、皆んなこっちの思いとは反対に、気軽に聞く。「何で辞めたの?」と。
まあ、会社にとってはすぐに辞められても困るから、しょうがないにしても、人間関係とか、給料のこととか、正直に話す人って、そんなにいないと思う。「家から近い所にしたい。」「新しいことに挑戦したい。」とか、嘘にならない理由を探して言うんじゃないだろうか?だったら聞く意味って??と思ってしまう。
「もうやだぁ・・」実家に帰ってしまおうか。と、思った時もあった。でも帰ったら帰ったらで結婚を急かされるのが目に見えている。この間の電話でも、「もう従兄弟の香織ちゃんも、里花ちゃんも結婚したのよ。あなたもそろそろ見つけないと!」母はそればかり。心配してくれているのはわかっている。でも、その優しさとは反対に、心にズシっと重りがかかる。
仕事も、結婚相手も、友達も、これといった特技もない私ってなんだろう。
もう、希望がない。今後生きていても、意味がない。生きたくない。消えたい。
目の前の求人広告が滲んでいき、涙がこぼれ落ちた。ダメだ。就職のことを考えると結局いつも無限ループ。涙を拭って顔を上げ、ディスプレイを見ると、ある広告に目が止まった。
生きるのが辛いあなたへ。
『LifeDonate』
あなたの寿命、寄付しませんか?
寄付していただいた方には、天使を派遣させていただきます。
もうどうでもいいや。私なんかの命でも、誰かの役になれるなら、無駄に生きるよりずっといい。心の片隅で、ちょっと怪しいなっと思いながらも、私は『寄付する』のボタンをダブルクリックした。
静まり返った部屋に、マウスのスクロールの音が響いた。
不気味な程明るいディスプレイを虚な目で眺める。
『初心者歓迎!』『資格不要!』『アットホームな職場です!』『残業少なめ!』聞こえはいいけれど、私は知っている。
『でも優先するのは経験者!』『同じ仕事内容だけど、給料低いよ!』『あんまり職員いないから、人間関係気をつけて!』『終わらなかったらお家でよろしく!それか、お金はだせないけど頑張ってね!』・・・と変換もできるのだ。
仕事を辞めて一年。最初は嬉しかった。明日から早起きしなくて良い。仕事に行かなくても良い。職場の人と顔を合わせなくても良い。全てから解放された気持ちだった。でもそんなウキウキした気持ちは最初の一週間だけ。その後にじわじわと来たのは焦り。中々条件の合う求人が見つからない。気になったのがあっても、電話する勇気がでなくて、「明日しよう」「あさってしよう」と思って、結局期限がきれてしまう。
やっとのこと行けた面接も、緊張で上手く話せないし、何より『仕事を辞めた理由』を聞かれるたびに気が滅入る。何で皆んな辞めた理由ばかり聞くのだろうか?楽しくて辞める人なんていない。他にやりたいことがあったり、結婚とか、引っ越しとか、それぞれだけれど、そういったことがないなら、何か話したくないことがあって辞めることがほとんどだと思う。でも、皆んなこっちの思いとは反対に、気軽に聞く。「何で辞めたの?」と。
まあ、会社にとってはすぐに辞められても困るから、しょうがないにしても、人間関係とか、給料のこととか、正直に話す人って、そんなにいないと思う。「家から近い所にしたい。」「新しいことに挑戦したい。」とか、嘘にならない理由を探して言うんじゃないだろうか?だったら聞く意味って??と思ってしまう。
「もうやだぁ・・」実家に帰ってしまおうか。と、思った時もあった。でも帰ったら帰ったらで結婚を急かされるのが目に見えている。この間の電話でも、「もう従兄弟の香織ちゃんも、里花ちゃんも結婚したのよ。あなたもそろそろ見つけないと!」母はそればかり。心配してくれているのはわかっている。でも、その優しさとは反対に、心にズシっと重りがかかる。
仕事も、結婚相手も、友達も、これといった特技もない私ってなんだろう。
もう、希望がない。今後生きていても、意味がない。生きたくない。消えたい。
目の前の求人広告が滲んでいき、涙がこぼれ落ちた。ダメだ。就職のことを考えると結局いつも無限ループ。涙を拭って顔を上げ、ディスプレイを見ると、ある広告に目が止まった。
生きるのが辛いあなたへ。
『LifeDonate』
あなたの寿命、寄付しませんか?
寄付していただいた方には、天使を派遣させていただきます。
もうどうでもいいや。私なんかの命でも、誰かの役になれるなら、無駄に生きるよりずっといい。心の片隅で、ちょっと怪しいなっと思いながらも、私は『寄付する』のボタンをダブルクリックした。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる