上 下
2 / 58

前日譚 狭間の世界のレティア姫っ!2 竜紋 ドラゴニック・セイグラム

しおりを挟む

鋼鉄「くっ…その細い体のどこに、そんな力がっ?!」  


 鋼鉄と呼ばれる男が軽々と投げ飛ばされる。そう、今彼の目の前にいるのは世界最強と言われる存在だ。

 だが、鋼鉄と名乗った男はそれでも立ち上がる。彼は知っていたのだ。この程度では勝てないと。

 だからこそ、彼は何度でも立ち上がる。最強の男として……そして、一人の戦士として……

 レティアはそんな男の姿を見て微笑む。そして、彼女は竜紋を発動する準備をする。

レティア「私の竜紋(ドラゴニック・セイグラム)を受ければ、あなたは変わるはず」

 レティアは確信していた。この男ならば自分の力を使いこなすことができると……
 最強の男ならば、それができるはずだと……


レティア「…背中の剣は使わないの?」


 鋼鉄の背中に差した一本の剣を見ながらレティアは言う。その剣からは、ただならぬ気配を感じたから……

 だからこそ彼女は問いかけたのだ。この剣はいったい何なのかと? だが、鋼鉄はその問いに答えることはなかった。
 いや、答えられなかったといった方が正しいのかもしれない。

 なぜなら彼は語りたがらなかったからだ。自分が持っている剣を……

 そんな鋼鉄の様子を見てレティアは小さくため息をつく。そして……

レティア(これは時間がかかりそうね)

 そう心の中で呟きながら彼女はゆっくりと構えを取る。

レティア(まぁ、いい。時間はたっぷりあるのだから……)

 そう思いながら彼女は静かに笑った。そして鋼鉄もまた同じように笑うのだった。

 鋼鉄は、目の前にいる少女に勝てる気がしなかった。なぜなら、彼女の実力が桁違いだからだ。だが、それでも彼は諦めなかった。最強の男であると自負していたからだ。だからこそ彼は立ち上がった。何度でも立ち上がり続けたのだ。

 そしてついにその時がやってきたのだ。そう、彼が待ち望んでいた時が……


鋼鉄「…君は武器をつかっていない、素手で闘うのが礼儀だと、そう判断した。それに私にはこのディフュージョンスーツがある」


 鋼鉄は、拳を握りしめながら言う。彼は感じていたのだ。目の前にいる少女が、自分と同類だということを……

 だからこそ、全力で戦うことができるということを……

 レティアは少し驚いた表情を見せた後、静かに微笑む。そして……

レティア(まさか、ここまでとはね)

 そう心の中で呟きながら彼女はゆっくりと構えを取る。それはまるで、自分の力を試すかのように。

レティア(でも、まだ足りない)

 そう心の中で呟いた瞬間だった。彼女の姿が一瞬にして消えたのだ。そして、次の瞬間……

 レティアの拳が鋼鉄に迫っていた。だが、彼は冷静にその動きを見切っていたのだ。

 なぜなら彼は世界最強の男なのだから。そう、今までどんな敵にも負けたことがないのだから……

 しかし、それでも完全に避けることはできなかったようで……彼の体に鈍い痛みが走る。それはまるで骨が折れたかのようだった。

鋼鉄「速い!」
 鋼鉄は驚きを隠せなかった。目の前にいる少女は、自分が思っていた以上の実力を持っていたことに……

 そんなことを考えていると、今度は彼女の蹴りが鋼鉄を襲った。その蹴りはまるで鉄槌のように重く、彼の体に衝撃が走る。

 鋼鉄は反撃をしようと拳を握るも、それは叶わなかった。なぜなら……

 レティアの放った拳が鋼鉄の胴体に突き刺さり、そのまま彼を吹き飛ばすからだ。

鋼鉄(これが彼女の実力! だが、私は負けるわけにはいかない!!)

 鋼鉄は立ち上がりながら心の中で叫ぶ。そう、彼には目的があるのだから……そして彼は再び構えを取る。今度は本気で戦うために……


レティア「その黒衣の鎧、あなた地球人ね」


 鋼鉄はレティアの言葉を聞いて驚いた表情を浮かべる。だが、すぐに冷静さを取り戻すと静かに言葉を紡いだ。

鋼鉄(なぜ私が地球人だとわかった?)

 そんな疑問が彼の中に生まれたのだろう。なぜなら彼女は地球のことなど知らないはずだからだ。しかし……

 レティアの答えは予想外のものだった。それは……

レティア「だって、その鎧から地球の匂いがするもの。それに、それと似た鎧を着た者と以前戦った事が、ある…その人も…地球人だった…とても強かった…」


 鋼鉄はその答えにさらに驚いた表情を見せる。そして同時に納得もした。なぜなら彼は今まで多くの星を旅をしていたからだ。その中には、地球も含まれていたのだから……


鋼鉄(まさか、他の世界にも地球があるとは……)


 そんなことを思いながらも彼は改めて目の前の少女に集中する。そう、目の前にいるのは最強の男でも苦戦する相手なのだから。

 だが、それでも負けるわけにはいかないのだ。なぜなら彼には目的があるから……

 そんなことを考えていると彼女は再び攻撃を仕掛けてきた。今度は拳ではなく蹴りだった。それもただの蹴りではない。まるで嵐のような連続攻撃だ。

 鋼鉄はそれを紙一重でかわしていくが、全てを避けきることは出来ずに少しずつダメージを受けていく。そしてついに……

 鋼鉄の腹部に彼女の足がめり込んだのだ。それと同時に口から血を吐く鋼鉄。それでも彼は倒れなかった。

 なぜなら彼が最強の男だからだ。たとえ勝てないとわかっていても戦う、それが彼なのだから。そして彼は再び構えを取るのだった。そう、まだ勝負はついていないのだから……


レティア(この人、本当に強い)

 レティアもまた驚いていた。まさかここまで粘るとは思わなかったからだ。だからこそ彼女はある提案をすることにした。それは……

レティア「なら、私の本気を見せてあげる…その着ている鎧に、恥じない力を私に見せてっ!!」

 レティアはそう言うと、静かに目を閉じ始めた。そして次の瞬間……


 突如として彼女の周りに湧き上がる力の奔流!蒼と翠のパワーが、全身を包み込む!

レティア「竜紋(ドラゴニック・セイグラム)!!」

 額と両手の甲に紫色の竜の紋章が浮かび上がる!!

 彼女の体から凄まじい量の魔力が溢れ出した。それはまるで嵐のような勢いで吹き荒れる。その勢いに吹き飛ばされそうになる鋼鉄だがなんとか踏ん張ると再び構えを取るのだった。


レティア(この技を使うのは何年ぶりだろう?)

 そんなことを考えているうちにも彼女はどんどん魔力を放出していく。そしてついに……

レティアの体が蒼と翠のオーラに包まれたのだ。その姿はまるで神のようだった。いや、実際に神なのだろうと彼は思った。なぜなら、彼女は圧倒的な存在だからだ。そう、まさしく神のような存在だと……


鋼鉄「とうとう出したか! 竜紋(ドラゴニック・セイグラム)! ハイブーストとロウブーストでは明らかに対抗できない…レイン、共に戦ってくれ…!」


 レティアは心の中で呟く。自分の力を全て出し切ろうと……そして……

 次の瞬間にはもう彼女の姿は消えていたのだ。いや、違う! 高速で移動しているのだ!!

 鋼鉄(速いっ!!)

 鋼鉄は必死にその動きを目で追おうとするが追いつかなかった。まるで残像のようにしか見えないのだ。それでも彼は諦めずに追いかけ続けた。だが、結局追いつくことはできずに攻撃を受けてしまうのだった。

 鋼鉄の体に鈍い痛みが走る。だが、彼は倒れなかった。なぜなら彼は最強の男だからだ。たとえ勝てないとわかっていても戦う、それが彼なのだから……
しかし、それでも反撃することは出来ずに一方的に攻撃を受け続けるだけだった。まるでサンドバッグのように……


 そんな状況が続く中でついに彼の体が限界を迎えようとしていたのだ。そう、このままでは負けると悟ったからだ。だからこそ彼は最後の賭けに出ることにしたのだ!

 それは自らの命と引き換えにしてでも目の前の敵を倒すという覚悟だった!! 

 鋼鉄の体から蒸気のようなものが噴き出し、熱を帯びて赤熱していく! 金色のオーラが辺りを覆う!


鋼鉄「神器一体(じんぎいったい) 感情オーバードライヴ!」


 その叫びと同時に、鋼鉄の姿が変わっていく!その姿はまるで機械仕掛けの人形のようだった!!

 全身の装甲が開き、内部のパーツが露出している!!プシュウウと蒸気が全身から吹き出し、更に頭部の形状も変わり、まるで鬼神のような顔をしているではないか!!さらに背中からは大きなエネルギークリアウィングが生えてきたのだ!!

 まさに異形の姿と化した鋼鉄は拳を握りしめながら目の前の敵に向かっていった。そして渾身の一撃をレティアに喰らわせるとそのまま地面へと落下していったのだった。だが……それでもなお立ち上がる鋼鉄を見てレティアは驚きの表情を浮かべる。

 なぜなら彼はすでに満身創痍だったからだ。だがそれでも彼は立ち上がることをやめなかった。いや、やめることが出来なかったのだ。なぜなら彼には目的があるから……


鋼鉄(私は最強の男であり続けると決めたのだから!)


 そう心の中で叫んだ瞬間だった!鋼鉄の体が眩い輝きを放ち始める!!その輝きはまるで太陽のようであり、辺りを照らし出したのである!それはまさに希望の光のようだった……!

レティアはその光を見て一瞬見惚れてしまうもののすぐに我に返ると構えを取る。そして……


レティアは心の中で呟く(その姿っ…?! そう……それであなたはガーディアンに…少しは……楽しめそう)


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

土魔法で無双するVRMMO 〜おっさんの遅れてきた青春物語〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:429

処理中です...