(仮)世界の名を持つ姫

碧猫 

文字の大きさ
7 / 32

愛姫の役割

しおりを挟む

 なんだか、とっても怖い事を聞いちゃったの。

 世界を簡単に滅ぼせちゃうの。

 仲良くなって、良い人達って知って、忘れかけていた。王達はみんな、簡単に世界を滅ぼせるって。

「……怖い?簡単に、そんな事ができる僕らが。最も恐れられている生命魔法……世界から全てを消し去る魔法を持つ僕が」

「……」

 怖い。そんなの聞いて、知っちゃって、怖くないなんて言えるわけない。

 自分だけは大丈夫なんて、そんなにもないんだから。

 再認識……ううん。初めて認識した。エレは……私は今、世界一危ない場所にいるんだって。

 安全とも言えて危ないとも言える場所。そんな場所にいる。

「……久々にこんな魔法を使って疲れたな。ごめん、今日は帰るよ。また、暇になったら会いにくるから」

 フォルがそう言って立ち上がる。このまま帰したら、今度いつ会えるかなんて分かんない。もしかしたら、ずっと会えないなんて事にもなるかもしれない。

 愛姫が怖がっているなら、離れた方が良いって思うかもしれない。

 フォルだけじゃない。他のみんなだって。

 今までは、何も知らなかったから、楽しくお話ししていられた。でも、こんなを知って、今まで通りできるか分かんない。

 それで、離れていくのなんてや。

「待って!」

 怖いのを隠す?

 ううん。それはだめ。もう、フォルは気づいているから。

 寂しいって言う?

 それだと、王達以外と交流を持つようにってやるかも。

 なら、嘘なんてつかない。寂しいからなんて言わない。

 エレは、愛姫だから。愛姫らしく、自分の役割を果たすの。

「怖いよ。怖い。でも、それでも、離れないの!エレは……私だけは、みんなの怖さを知って、それに向き合う!怖くたって、側にいるの!」

「むりしなくて」

「むりなんかじゃない。それに、私は愛姫なの。王達に愛されているんだから、愛を理解できないから、愛するなんて言えないけど、一緒にいるの!それが、愛姫、エレシェフィールの役目なんだから!」

 自分のやるべき事。それは、ちゃんと分かっているわけじゃないんだと思う。エレも、フォル達も。

 一緒にい続けるのが、役目じゃないかもしれないけど、それでも、一緒が良いって思うの。これは、エレが思っている事。愛姫としてなんかじゃない。

 それと、それと、もう一つ絶対言わないとな事あるの。

「あと、エレ、フォルの魔法は怖いものもあるかもだけど、とってもきれいって思うの。フォルだけじゃない。ゼロやゼムも、アディやイヴィも……きっと、他のみんなも。魔法を使う所作は、とってもきれいで、エレはそれを見入っていたの……見惚れていたの?」

「……ほんとに変わんないね。そうやって何がなんでも、僕らと一緒にいようとするとこ」

 ふぇ。な、なんだか、楽しそうなの。にこにこが、ぞわぞわなの。

「ねぇ、僕の可愛いエレシェフィール」

 あれ?気のせいなのかな。なんだか、様子が変というか、雰囲気が別人なの。おかしいの。

「ふぇ⁉︎そ、そういえば、魔法を教えてくれるって言っていたの。それの再開なの」

 なんだか、この先に進みたくなくて、つい。フォルが何を言おうとしたのかは気になるけど。

「……良いよ。僕が、その身体に覚えさせてあげる」

 な、なんだろう。どっかの氷の王より氷なの。寒いの。逃げないって言ってたけど、逃げたいの。

「まずは、基礎をどれだけ覚えてるかのテストだ。エレシェフィール、魔法の構築式は何のために存在する?」

「ふぇ⁉︎えっと、その……魔法を構築するため」

「……」

 笑顔で無言怖いの!

 もしかして間違ってたのかな。でも、ゼロにはそう教わったの。

「構築式は、命令のようなものだ。魔力に、こういう魔法を使いたいって頼む。まぁ、魔力は拒否権なんてもらえないんだから、頼むというより命令。例えば、さっきの氷の花なら、氷と花の組み合わせを創れと命令する。実際の式となると、もう少し複雑だけど」

「……主の使いである魔力達が、人の願いを叶えるのに分かりやすくしたのが、魔法式。魔力は、魔法式を見て、人の望みを叶えてきた。魔力も生物と同じ。進化した事により、人と同化する術を覚え、人と魔力が意思疎通を図る魔法式は、必要なくなっていった」

「良くそんな事知ってるね」

「ふぇ?なんだか、勝手にお口が動いたの」

 感心してるところ悪いんだけど、なんなら、言った事も分かんないの。半分以上。

 なんだか、大事な事の気がするけど。

「……世界の名を持つ愛姫は、世界が争いを止めるために選んだ子。僕とフィルだけは、それを聞かされ続けていたんだ」

 王達と仲良くで平和を願ってたら、おっきすぎる役目を言われた。でも、意外とびっくりしてない。王の意思一つで、世界は簡単に滅んじゃう。そんな中にいるからなのかな。

「そんな子だから、こういう事も知ってるんだろうね」

「ふみゅ。分かんないの。でも、その世界様に助けられているのかもって思う事はあるの。生きてる事とか、生きてる事」

 エレの今の状態だと、それがもう奇跡みたいなの。今は、ゼロとフォルの側で加護を受けているから良いけど、加護を受け取る前は、違うの。

 エレは、昔から、好かれちゃいけないような子達に好かれちゃうから。それで、何度も危ない目に遭ったの。でも、誰かに守られていたのか、生きていられたの。

 それが、きっと世界様に守られていたからなんだと思うんだ。

「そんな特別なお姫様が選んでくれるなら、幾千幾億と転生しようと、ずっとお姫様を大事にしてあげる。ずっと、お姫様を好きでてあげる。この記憶がなくてもね」

「ふぇ」

「エレシェフィール。絶対に逃さないから。どれだけ時が経とうとずっと」

 どきどきなの。緊張しているのかもしれない。でも、どうして?

 分かんないの。フォルのこの、どこか勝気な笑顔を見ていると、どきどきなの。

 回復魔法覚えておけば良かった。そうしたら、この症状も止められるのに。

 ……待って。フォルが使えるの。回復魔法なら。

「フォル、なんだか、おかしいから、回復魔法使って?」

「それで治ればいくらでも使ってあげる。でも、それで治るなんてないと思うよ?その症状は」

「ふぇ⁉︎じゃ、じゃあ、どうすれば治るの?にっがい、エレが苦手なお薬を飲むの?治るなら、我慢するの」

 飲みたくはないけど、治らないよりは良いと思うの。

「ふふっ、無自覚なのも可愛いなぁ」

「ふぇ」

「今日こそは逃さないから。僕の……」

 急に止まったの。顔真っ赤になったの。

 良く分かんないけど、いつもフォルって感じがするの。

「ごめん!僕、

「むにゅ。びっくりするから、ああいう事はやなの……ふみゅ?エレも普通に戻ってるの」

 どきどき止まった。びっくりするとどきどきする事あるって聞くから、それだったのかな。

「エレシェフィール、美味しい果物のお裾分け。フォルと一緒に……って、何かあったのか?」

 ゼロが、水々しくて美味しそうな果実を持ってきたの。畑で育ててたのが実って、それのお裾分けなのかな。嬉しそう。

「ふみゅ。フォルが突然、いつもと違う感じになったの。それでびっくりしたの」

「ああ。またか。本当にフォルって、俺の時と違って、なる時分かんねぇんだな」

「ふぇ?エレに分かるように説明なの」

「俺とフォルは、普段から暴走を抑えるためにって封印魔法の類を使ってるんだ。その魔法でも抑えられず、漏れ出た時に、別のもんも抑えられなくなるんだ」

 良く分かんないの。でも、どうしてだろう。さっきフォルにびっくりしたけど、落ち着いたら、懐かしいって思うのは。

 昔、あんな感じのフォルと一緒にいたってなんとなくだけど思うの。

「……あれはちっちゃい頃のフォル?」

「違うよ。どうせ、思い出せば分かる事だからいっか。僕は、あの魔法と似た魔法を使って、自分の役目を果たせるようにしてたんだ。でも、すぐに、自分からどうする事ができるようになったんだけど、あの魔法で、時々、その状態になるんだ。しかもなぜか、あの魔法の影響でエレシェフィール大好きが追加された」

「ふぇ?理解不能なの」

「そう言われても、僕らも、この魔法の副作用に関しては、あまり知らないから」

 エレ的には、本質というか、その種の本能的なあれが、顕著に出ているだけな気がするんだけど。でも、それもちょっと違う気もする。

 多分、なんだけど、フォルの過ごしてきた環境が大きく関係しているんだと思うの。

 フォルの思う理想?が、何かのきっかけに、溢れ出るって感じがするの。

 って、良く分かんなくなってきた。とりあえず、今のフォルも、さっきのフォルも、両方併せ持っているものだと思うの。だから、王達仲良し作戦のためにも、あっちのフォルとも仲良くなる必要があると思うの。

 なんて、色々考えたけど

「……案外、理由なんて単純な気がするの」

「それも、なんとなく?」

「みゅ。なんとなく思ったの」

「そうかもしれないね。僕が、見ようとしていない僕とか」

「エレ的には、感情抑え癖が変な方向にいったのと、フォルの一部分って可能性もある気がするの」

 お話してて何も考えてなかったら出てきたの。意外とこういうのが真実でしたとかあり得そう。

「なぁ、ところで、いちゃついてたのは分かったから、勉強したのか?」

「魔法学教える前に、この子に、僕らが世界を簡単に滅ぼせるって事実を、再認識してもらってたんだ」

「それも重要か。けど、それだと、一つも覚えられてねぇから、一つくらい覚えろよ」

 果実置いて部屋出てったの。もしかして、ゼロは一日一つ魔法を覚えさせようとしているのかな。厳しいの。

「……とりあえず、これ食べて休憩しようか」

「みゅ。休憩大事なの」

 後の事は後で考えれば良い。今はそんな事より、美味しそうな果実で休憩を楽しむ事にするの。

 そうすれば、きっと、覚えが良くなる。なんて事になってくれれば良いのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

従者に恋するお嬢様

よしゆき
恋愛
 従者を好きなお嬢様が家出をしようとして従者に捕まり閉じ込められる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...