夜風の中を共に

兎猫

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6話

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「もしかして、私達の掟を知ってる?」
「知っているぞ」
「えっ、それゃあ」
「新婚旅行の際には俺達の国にも来ると良い。新婚にぴったりな景色が見れると話題の場所があるようだからな」

 選んだ相手に関してはバレていないみたい。でも、良かったって思えないよ。

「うん」
「……リオ、リオは朝を見た事があるか?ないなら見に行ってみないか?」
「行きたい」

 まあ、元々長期戦覚悟なんだから気にしなくて良いよね。今はそれよりも、外を楽しみながら彼の事を知りたい。

「全部顔に出るな」
「えっ?」
「本当に嬉しそうだ」
「そう、かな。リグの種族の掟ってなんなの?リグは私達種族の起きて知ってるのに私は知らないのはずるいよ」
「ククッ、ずるいと来たか。俺達種族は強さを見つける事だ。国の中で見つけられないと思って外に出てきたが正解だったな」
「見つけられそうなの?」
「まだ分からん。だが、俺の直感はもう見つけたと言っているな」

 リグの種族も直感とかそういうのを頼りにするんだ。似てるところも発見しちゃったかも。

 それにしても、リグの見つけた強さ。それが何か気になる。

「さっきは先先代はと言っていたが、やはりリオの方が何百倍も良いぞ。その勉強不足で鈍感なところもな」
「勉強だったらちゃんとしてるわ。まだ知らない事あるけど。でも、鈍感じゃないわよ」
「鈍感だろ。リオは」

 さっきから楽しそうに人の事鈍感って言うなんて、意地悪なところもあるのね。私は鈍感じゃないわよ。

 ティエイアから「とても鋭いです。姫様は」って褒められてるんだから。

「俺が見つけた強さのヒントをやろうか」
「なによ」
「一人じゃない事だ」

 一人じゃないって事は国のみんなとか守るものがいるって事なのかな。リグも王子様なんだし、そういうのがあるのかも。

「やはり鈍感だな」
「だから鈍感じゃないわよ」
「貴様の意中の相手を当ててやろうか」
「えっ⁉︎そ、そんなの当てなくて良いわよ」

 外れてたら外れてたで悲しくなる。でも、それは問題じゃない。

 問題なのは、当てられた時。どうすれば良いか分からなくなりそう。

 焦っていたのあからさま過ぎたかな。でも、焦っちゃうよ。

「成程。そういう顔をするのか。なら、一つアドバイスをやろう。好きになった相手がいるなら全力で行け。貴様の全てをこの恋時にかける覚悟でな」
「全てを?」
「そうだ。方法は自分で考えてみるんだな」

 わざわざアドバイスまでくれているけど、バレてはないんだよね?

 相手が自分だなんて気がついていないよね?

 そんな素振り見せた覚えはないから。

 顔赤いのは種族柄って事になっているし。

「朝のある場所は少し離れてるが、大丈夫か?」
「ええ」
「なら、転移魔法で行くぞ」

 転移魔法なんて高等魔法使えるなんて。

 転移魔法自体は簡単でも、位置調整の難しさから使える人が少ないの。

「わぁ。本当に朝だ」

 初めて見る自然の光。とっても気持ち良くて、暖かな光。

 ここに住める人達が少しだけ羨ましく感じる。

「気持ち良いだろ」
「ええ。ありがとう。リグと一緒じゃなかったら知る事ができなかったわ」

 こんなに綺麗な景色を見られただけでもリグを選んで良かったって思える。

 今まではそんな事考えた事もなかったけど、私って単純かも。

「きゃぁぁぁぁ!」
「騒ぐな!大人しくしてろ!」

 何が起きているんだろう。すごく騒がしい。

 ここは、見た感じかなり栄えた街。建物がいっぱいあって、地面は煉瓦の道。

 何かイベントがあるってわけないよね。そんな雰囲気じゃない。

「リオ、そこで待ってろ」
「気をつけて」
「おう」

 リグが走って騒がしい場所に向かった。リオの姿が見えなくなる。

 ここは騒ぎの場所から離れているし、何も心配せず待っていて大丈夫だと思いたい。

「夜の姫さんじゃねぇか。これは上ものだなぁ」

 騒ぎを起こしている人達の仲間なのかな。今は私だけだから、一人でどうにかしないと。

「きゃん!」

 相手は戦闘慣れしている体格の良い男の人。一人でどうにかするなんて出来ずに押し倒された。

 太腿の上に跨って腕を掴まれる。

 ティエイアが用意してくれた服は特殊で衝撃を吸収してくれる素材だから、痛みはない。

 でも、痛みがないからってこれじゃあ逃げる事もできない。

 魔法を使う隙を見つけて眠らせて逃げるのが良いかもしれないけど。そんな隙を見せてくれるか。

「大人しくしていれば、痛い目に遭わずに済ませてやる」

 何をされても、逃げる隙を見つけて逃げる。これが良いんだって頭では分かってる。でも、心は違った。

 一か八か。失敗すれば、この男は容赦なんてしない。

 私の持つ最大の武器。効かない可能性もあるけど、でもリグが言ってたから。

 私はお母様より綺麗で美しいって。

 私はリグと一緒にいるためなら、自分が嫌っていた能力だって使う。嫌っていた事も全部使ってでも、彼と一緒にいる。

「重いから降りてくださる?」

 魅了を使った応用。魅了した相手を自分の意のままに操る。

 成功する可能性は低くても、やるしかないから。
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