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ぬらりひょんと学校
第6話 学校の怪談
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学校の七不思議を調べるにしても一日で全部は回れない。
だから一日一つずつ七不思議を解明することになった。
七不思議を調べるとか、私一人だったら怖くて絶対無理だったけれど。
人に近い妖怪シュカが隣にいるせいか、彼がそういう妖怪のせいか私はすんなりと怪談の解明にとりかかった。
「それで、何からするの? というか、俺学校の生徒じゃないから学校の七不思議一つも知らないんだけど」
「えっとね、今日確認しようと思っているのは。13階段っていうの。第二校舎の三階から屋上に続く音楽室横の階段なんだけどね。夕方に階段を上り下りすると、上る時は12段なんだけど、降りるときは13段になるんだって。それで数がおかしいって階段の数をちゃんと数えようと後ろを振り返ると……ってやつよ」
友達から聞いた話だけど、思いだすだけでも怖い。
「それで、後ろを振り返るとどうなるの?」
「いや、だから、後ろを振り返ったらホラねっ。怖いじゃない」
「ふーん。その話さ。多分……いや、とりあえず確かめてみようか」
何かを言おうとして、シュカが口をつぐんで私の手をぐっと引っ張ってきた。
夕方の第二校舎は静かだった。
3階には図工室、図工準備室、音楽室、音楽準備室とトイレしかない。
この静けさからして今3階には私とシュカだけだと思う。
しーんとした校舎が不気味で、私はシュカの手をぎゅっと握った。
「怖いの?」
シュカが不思議そうな顔で私の顔を覗き込んできた。
それに、私は一度だけうなずいた。
「まぁ、俺こう見えても。この辺一帯のボスみたいなもんだから大丈夫」
そういって、ニッと笑う姿がちょっとカッコいいなと不覚にも妖怪相手に思ってしまった。
「よし、それじゃあ数えよう」
シュカはそういって、私の手を引いて階段の前にやってきた。
私はそれにうなずいて二人で手を繋ぎながら1歩踏み出す。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうに!」」
「12段だね」
確認するかのようにシュカが声に出してそう言った。
階段でも上りは大丈夫なのだ。問題は下りだ。
「次はいよいよ下りね……本当に13段あったらどうしよう」
「そんときは、そんときで考えればいいの~」
シュカと手を繋いで、上りと同じように数を二人で声に出しながら階段を下りる。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうに!」」
十二段だったことにホッと心の中で一息をつくけれど、私は後ろを見れない。
そんな私と対照的に、シュカはすぐに後ろを振り返った。
「はい、これガセね」
「本当に、後ろ何もない?」
「ないよ」
「絶対?」
シュカはすでに後ろを見てそう言っているのに、怖くて何度も大丈夫なのか確認してしまう。
「しずくってさ、案外怖がりなんだね。でも、なんで俺のことは怖がらないの? 普通家に知らない人がいるのに気がついたら悲鳴の一つでもあげると思うんだけどね。ほら、後ろ見てみたらなんもないから」
私の怖さをかき消すかのようにシュカが話してくれる。
私は意を決して後ろをみた。
そこにはただの階段があって、念のため階段を数えたけれど、やっぱり12段だった。
「まぁ、これは話しを聞いた段階でガセってわかってたんだけどね」
「なんで!?」
「だって、「おかしい」って感じて後ろを振り返って階段の数を再度数えようとしたら……でしょ? 階段の数を数えようとした人物に何かあったら。誰がこれ噂話にするのさ?」
「え?」
「いや、だから。もし後ろを振り返って怖い思いをした人物がいなくなったとしたら……この話を誰が他の人に伝えるの? ってことになるじゃん」
シュカは意外と推理力が高かった。
「もう、そういうことは階段を上る前に言ってよ!? めちゃくちゃ怖かったんだから」
ということは、シュカは上る前からこれはガセってわかっていたってこと。そう言えば何か言いかけていたけれど、これか……
「ごめんごめん、しずくがあんまりにもビビってるから。面白くってさ~」
「シュカは、いるかいないかわからないタイプの妖怪でしょ。そういうの試す妖怪じゃないでしょ!」
「そうだね、これは俺の個性ってやつだろうね。あと学校ではシュカ君ね」
「なんなのよその『君』への強いこだわりは」
「いや、なかなかないじゃん。そんな風に呼ばれるのって。俺って人の輪に入れるけれど、認識されない妖怪だし。だからそんな風に呼ばれるのってなんか――新鮮」
キラっとした瞳でそう言われた。
一つ目の怪談はガセだった。
「ん?」
シュカがそういって突然あたりを見渡した。
「何々何!?」
私はシュカの手をぎゅっと握る。
「なーんちゃって」
シュカは得意げに笑った。
「もう、ほんとアンタなんなの!?」
私は今日一番に怒った。
だから一日一つずつ七不思議を解明することになった。
七不思議を調べるとか、私一人だったら怖くて絶対無理だったけれど。
人に近い妖怪シュカが隣にいるせいか、彼がそういう妖怪のせいか私はすんなりと怪談の解明にとりかかった。
「それで、何からするの? というか、俺学校の生徒じゃないから学校の七不思議一つも知らないんだけど」
「えっとね、今日確認しようと思っているのは。13階段っていうの。第二校舎の三階から屋上に続く音楽室横の階段なんだけどね。夕方に階段を上り下りすると、上る時は12段なんだけど、降りるときは13段になるんだって。それで数がおかしいって階段の数をちゃんと数えようと後ろを振り返ると……ってやつよ」
友達から聞いた話だけど、思いだすだけでも怖い。
「それで、後ろを振り返るとどうなるの?」
「いや、だから、後ろを振り返ったらホラねっ。怖いじゃない」
「ふーん。その話さ。多分……いや、とりあえず確かめてみようか」
何かを言おうとして、シュカが口をつぐんで私の手をぐっと引っ張ってきた。
夕方の第二校舎は静かだった。
3階には図工室、図工準備室、音楽室、音楽準備室とトイレしかない。
この静けさからして今3階には私とシュカだけだと思う。
しーんとした校舎が不気味で、私はシュカの手をぎゅっと握った。
「怖いの?」
シュカが不思議そうな顔で私の顔を覗き込んできた。
それに、私は一度だけうなずいた。
「まぁ、俺こう見えても。この辺一帯のボスみたいなもんだから大丈夫」
そういって、ニッと笑う姿がちょっとカッコいいなと不覚にも妖怪相手に思ってしまった。
「よし、それじゃあ数えよう」
シュカはそういって、私の手を引いて階段の前にやってきた。
私はそれにうなずいて二人で手を繋ぎながら1歩踏み出す。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうに!」」
「12段だね」
確認するかのようにシュカが声に出してそう言った。
階段でも上りは大丈夫なのだ。問題は下りだ。
「次はいよいよ下りね……本当に13段あったらどうしよう」
「そんときは、そんときで考えればいいの~」
シュカと手を繋いで、上りと同じように数を二人で声に出しながら階段を下りる。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうに!」」
十二段だったことにホッと心の中で一息をつくけれど、私は後ろを見れない。
そんな私と対照的に、シュカはすぐに後ろを振り返った。
「はい、これガセね」
「本当に、後ろ何もない?」
「ないよ」
「絶対?」
シュカはすでに後ろを見てそう言っているのに、怖くて何度も大丈夫なのか確認してしまう。
「しずくってさ、案外怖がりなんだね。でも、なんで俺のことは怖がらないの? 普通家に知らない人がいるのに気がついたら悲鳴の一つでもあげると思うんだけどね。ほら、後ろ見てみたらなんもないから」
私の怖さをかき消すかのようにシュカが話してくれる。
私は意を決して後ろをみた。
そこにはただの階段があって、念のため階段を数えたけれど、やっぱり12段だった。
「まぁ、これは話しを聞いた段階でガセってわかってたんだけどね」
「なんで!?」
「だって、「おかしい」って感じて後ろを振り返って階段の数を再度数えようとしたら……でしょ? 階段の数を数えようとした人物に何かあったら。誰がこれ噂話にするのさ?」
「え?」
「いや、だから。もし後ろを振り返って怖い思いをした人物がいなくなったとしたら……この話を誰が他の人に伝えるの? ってことになるじゃん」
シュカは意外と推理力が高かった。
「もう、そういうことは階段を上る前に言ってよ!? めちゃくちゃ怖かったんだから」
ということは、シュカは上る前からこれはガセってわかっていたってこと。そう言えば何か言いかけていたけれど、これか……
「ごめんごめん、しずくがあんまりにもビビってるから。面白くってさ~」
「シュカは、いるかいないかわからないタイプの妖怪でしょ。そういうの試す妖怪じゃないでしょ!」
「そうだね、これは俺の個性ってやつだろうね。あと学校ではシュカ君ね」
「なんなのよその『君』への強いこだわりは」
「いや、なかなかないじゃん。そんな風に呼ばれるのって。俺って人の輪に入れるけれど、認識されない妖怪だし。だからそんな風に呼ばれるのってなんか――新鮮」
キラっとした瞳でそう言われた。
一つ目の怪談はガセだった。
「ん?」
シュカがそういって突然あたりを見渡した。
「何々何!?」
私はシュカの手をぎゅっと握る。
「なーんちゃって」
シュカは得意げに笑った。
「もう、ほんとアンタなんなの!?」
私は今日一番に怒った。
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