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第15話 向俊
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後ろによろめき、持っていた扇子が落ちそうになるくらいの衝撃だった。
でも、それをなんとか耐え、目の前にいる向俊の言葉をずいぶんと長いことぶりに待った。
「……おっしゃる通り、私は馬鹿でございました」
向俊はそういって困った顔で眉を下げ笑った。
『饅頭を買わないと琳明に会えない』
他の男は、饅頭を買わずとも世間話をしに琳明に会いに来て食事に誘った。
向俊は変なところでまじめで不器用でだけど、そこがよかったのだと懐かしい困った顔をみて思い出す。
最後に琳明が向俊と会ったのは、すでに三月も前のこととなる。
後宮へと入り日がたつにつれ、向俊のために市井へと戻りたいと思う一方で、彼の顔を少しずつ忘れて行ってしまう自分がいた。
それほどに、琳明と向俊が共に過ごした時間は少なすぎた。
にもかかわらず、向俊が「こんな馬鹿なことを」としか言えない話に乗ってしまうことが、まっすぐで不器用な彼らしかった。
王の妃として後宮にいる間は会うことはないと思っていたのに……人生は本当に何があるかわからない。
『髪を下ろしたほうが可愛いと思う』
向俊が琳明に言った言葉をふっと琳明は思い出してしまった。
家の跡を継ぐのは私と野心をもって日々を過ごしていた琳明は、髪を下ろす余裕もなかった。
そして、長く垂れた髪は仕事の邪魔にもなるし、なにより自身を綺麗に見せることの必要性を感じてなかった。
髪など洒落こむ余裕はなく、常に仕事の邪魔にならないことが最優先だった。
琳明の髪のことを惜しむのなんて、向俊をのぞけば祖父くらいだった。
そもそも珍しい色の髪だといっても、それを優雅に伸ばして手入れができる暇がなかった。
家柄的に手入れを必ずしろという圧力もなかったものだから、跡を継ぐというやりたいことをがあったからこそ、容姿の手入れなど最低限で特に髪はおざなりだった。
高い香油で手入れされた銀の髪はあの頃よりずっときらめきサラサラと流れ、今きている衣だって本来なら花嫁衣装としても、琳明では袖を通すことが叶わないような代物だ。
向俊の目には今の私はどう映るのだろうと柄にもなく琳明は気になった。
そわそわとした琳明の思いは、「知り合いか?」という玲真の一言で現実に引き戻された。
どう返答をすればいいのか。
嘘をつけば不利になるかも知れない。
それに知り合いということがわかれば、玲真の正体を知っている琳明はともかく向俊はこの危ない任を解かれるかもしれない。
短い間に琳明はそう考えた。
「はい」
短く、そして知り合いだということを琳明は簡単に認めた。
玲真はずいぶんと慎重に動いていた、まだ全容はわかっていないが琳明もこの目で麗華の白粉が鉛入りの物になっているのを見ている。
「なるほど……実に面白い」
玲真は短くそう言うと、ほほ笑んだ。
玲真がどう出るのかをうかがっていた琳明の手は、玲真によって引き寄せられた。
「キャッ」
突然引き寄せられたことで琳明の口から小さな悲鳴が漏れた。
「何するのよ!」
驚いて思わず、敬語を使うことを忘れ玲真に引き寄せた目的を問い詰めてしまった。
玲真の整った顔はにこやかな笑みを浮かべたまま、ゆっくりと手を琳明の腰に回した。
向俊は反射的に立ち上がろうとしたのか身体をピクッと動かしたが、抗議出来る相手ではないこともあり、感情を押し殺したようで拳をきつく握り締め玲真と琳明を見つめた。
「なるほど……なるほど」
そんな琳明と向俊の様子を面白いと言わんばかりに見比べる玲真に、なんて意地が悪いのと琳明は内心プリプリとしていた。
玲真の手が琳明の頬へと伸び、指が琳明の頬をなぞる。
「向俊、お前が下賜したい妃というのは――こいつか?」
玲真は琳明の頬を指でなぞりながら向俊にそう質問した。
こんな指、あんたが本当にただの宦官だったらかみちぎってやるのにと思うけれど、逆らうことなど出来ず睨むのが琳明には精いっぱいだった。
「さ……さようでございます」
向俊は簡潔に返事をした後、ゆっくりと下を向いた。
「こんな気の強いのがお好みか?」
頬をなでた指が以前のようにまた私の顎をきつく掴む。
それでも、できる精いっぱいの抵抗として琳明は玲真を睨みつけるが、玲真は睨まれることになど一つも動じることはなく圧倒的強者として振舞う。
玲真の手がなれたように琳明の衣の中に伸びようとして、流石の琳明も惚れた男の前でたまらないと玲真の手に自分の手を添えた。
興がそれたと言わんばかりに、玲真は琳明を離した。
「吟遊詩人が好む物語になりそうだな」
玲真は楽しそうな声でそう言う。
玲真に逆らえないのを解っていて、こんな扱いを目の前でするだなんてなんて意地が悪いの……
「さようでございますか」
そう答える向俊の声は震えていた。
「向俊、こいつは下賜姫だ」
「かしひめ? でございますか?」
このやり取りですぐに琳明は解った。
琳明の時同様、この男は下賜姫の説明をわざわざ向俊にするつもりなのだ。
「お前が危険を冒してまで手に入れたい女は、此処では下賜姫様と呼ばれている。王の妃にするためでなく、元から家臣に下賜されるために後宮に入れた妃のことを裏でそう呼ぶのだ」
「そんなことは彼にわざわざ言う必要はないでしょ」
思わず口を挟んでしまった。
「いや、関係があるだろう。こいつが下賜したいのが下賜姫として召し上げられているお前ならばな。下賜姫は官への褒美として下賜されるからな。褒美として妃を下賜してほしいと望まれれば、17になるまで下賜姫様はここにいるとは限らない」
何を言うかと思えば、後宮での事件に対して内部で動ける人材など限られているはず。
他にもっと適任者がいれば下級妃賓の中でも、さらに下級の琳明にそのお鉢など回ってこないはずだ。
だから下賜されるにしても、この事件が解決までいかずとも解決のめどが立つまでは、玲真としては琳明を後宮に留めておきたいはず。
なのに、わざわざどうしてそれを……
玲真は向俊に向かってさらに言葉を続ける。
「向俊お前の願いは、一人妃を下賜したいでよかったか?」
あっ、駄目だ。これは止めなければ。
琳明の願いは他の男に下賜されず過ごすことだ。下賜さえされなければ1年後には元の予定通り市井に戻れるはずだった。だから向俊はさらに約束をこれ以上する必要はない。
向俊は証文に残していなくとも、琳明は間違いなく証文に残してあるというのに。
するにしたとしても、もっと別のことを願うべきなのだ。
「玲真さ「下賜姫の発言は許していない」
止めようとしたが、それより先に玲真が口をはさむなと釘を刺した。
「どうか……彼女を他の男に下賜されませぬよう」
「――約束しよう」
何が約束だ。約束をするまでもなく、他の男には下賜されないとすでに私と約束を取り付けているというのに……
下賜したい姫が用意できないのは、玲真の落ち度になりこちらが交渉を有利に進められたものを……これで、パーだ。
下賜される場合、妃だけポンとくれてやるわけではない。
後宮からもう一度嫁に出すことになる為、金子や衣や身の回りの婚礼に持っていくものを後宮が準備してくれるのが通例だ。
どうせなら、しっかりと色を付けると約束してくれればいいものの。
皇帝のくせになんてケチなの!?
ケチな琳明は向俊の気持ちはわかるけれど、玲真に完全にしてやられたことで頭を抱えた。
今の約束でどれくらいの損失が出てしまったのかなど考えたくない。
もともと市井へ帰れれば御の字だったじゃないと気持ちを切り替えようとするが、あのままにしておけばとどうしても思ってしまう。
王様なんだから、こんな面倒事に巻きこんでおいて金までケチるだなんて。
しかし一度言葉にしてしまったことをなかったことにするなど、庶民の側からできるはずもない。
玲真は先を見据えていたのだ。向俊の目の前で琳明に触れることによって、他の男に下賜されるかもしれないという不安をあおったのだ。
でも、それをなんとか耐え、目の前にいる向俊の言葉をずいぶんと長いことぶりに待った。
「……おっしゃる通り、私は馬鹿でございました」
向俊はそういって困った顔で眉を下げ笑った。
『饅頭を買わないと琳明に会えない』
他の男は、饅頭を買わずとも世間話をしに琳明に会いに来て食事に誘った。
向俊は変なところでまじめで不器用でだけど、そこがよかったのだと懐かしい困った顔をみて思い出す。
最後に琳明が向俊と会ったのは、すでに三月も前のこととなる。
後宮へと入り日がたつにつれ、向俊のために市井へと戻りたいと思う一方で、彼の顔を少しずつ忘れて行ってしまう自分がいた。
それほどに、琳明と向俊が共に過ごした時間は少なすぎた。
にもかかわらず、向俊が「こんな馬鹿なことを」としか言えない話に乗ってしまうことが、まっすぐで不器用な彼らしかった。
王の妃として後宮にいる間は会うことはないと思っていたのに……人生は本当に何があるかわからない。
『髪を下ろしたほうが可愛いと思う』
向俊が琳明に言った言葉をふっと琳明は思い出してしまった。
家の跡を継ぐのは私と野心をもって日々を過ごしていた琳明は、髪を下ろす余裕もなかった。
そして、長く垂れた髪は仕事の邪魔にもなるし、なにより自身を綺麗に見せることの必要性を感じてなかった。
髪など洒落こむ余裕はなく、常に仕事の邪魔にならないことが最優先だった。
琳明の髪のことを惜しむのなんて、向俊をのぞけば祖父くらいだった。
そもそも珍しい色の髪だといっても、それを優雅に伸ばして手入れができる暇がなかった。
家柄的に手入れを必ずしろという圧力もなかったものだから、跡を継ぐというやりたいことをがあったからこそ、容姿の手入れなど最低限で特に髪はおざなりだった。
高い香油で手入れされた銀の髪はあの頃よりずっときらめきサラサラと流れ、今きている衣だって本来なら花嫁衣装としても、琳明では袖を通すことが叶わないような代物だ。
向俊の目には今の私はどう映るのだろうと柄にもなく琳明は気になった。
そわそわとした琳明の思いは、「知り合いか?」という玲真の一言で現実に引き戻された。
どう返答をすればいいのか。
嘘をつけば不利になるかも知れない。
それに知り合いということがわかれば、玲真の正体を知っている琳明はともかく向俊はこの危ない任を解かれるかもしれない。
短い間に琳明はそう考えた。
「はい」
短く、そして知り合いだということを琳明は簡単に認めた。
玲真はずいぶんと慎重に動いていた、まだ全容はわかっていないが琳明もこの目で麗華の白粉が鉛入りの物になっているのを見ている。
「なるほど……実に面白い」
玲真は短くそう言うと、ほほ笑んだ。
玲真がどう出るのかをうかがっていた琳明の手は、玲真によって引き寄せられた。
「キャッ」
突然引き寄せられたことで琳明の口から小さな悲鳴が漏れた。
「何するのよ!」
驚いて思わず、敬語を使うことを忘れ玲真に引き寄せた目的を問い詰めてしまった。
玲真の整った顔はにこやかな笑みを浮かべたまま、ゆっくりと手を琳明の腰に回した。
向俊は反射的に立ち上がろうとしたのか身体をピクッと動かしたが、抗議出来る相手ではないこともあり、感情を押し殺したようで拳をきつく握り締め玲真と琳明を見つめた。
「なるほど……なるほど」
そんな琳明と向俊の様子を面白いと言わんばかりに見比べる玲真に、なんて意地が悪いのと琳明は内心プリプリとしていた。
玲真の手が琳明の頬へと伸び、指が琳明の頬をなぞる。
「向俊、お前が下賜したい妃というのは――こいつか?」
玲真は琳明の頬を指でなぞりながら向俊にそう質問した。
こんな指、あんたが本当にただの宦官だったらかみちぎってやるのにと思うけれど、逆らうことなど出来ず睨むのが琳明には精いっぱいだった。
「さ……さようでございます」
向俊は簡潔に返事をした後、ゆっくりと下を向いた。
「こんな気の強いのがお好みか?」
頬をなでた指が以前のようにまた私の顎をきつく掴む。
それでも、できる精いっぱいの抵抗として琳明は玲真を睨みつけるが、玲真は睨まれることになど一つも動じることはなく圧倒的強者として振舞う。
玲真の手がなれたように琳明の衣の中に伸びようとして、流石の琳明も惚れた男の前でたまらないと玲真の手に自分の手を添えた。
興がそれたと言わんばかりに、玲真は琳明を離した。
「吟遊詩人が好む物語になりそうだな」
玲真は楽しそうな声でそう言う。
玲真に逆らえないのを解っていて、こんな扱いを目の前でするだなんてなんて意地が悪いの……
「さようでございますか」
そう答える向俊の声は震えていた。
「向俊、こいつは下賜姫だ」
「かしひめ? でございますか?」
このやり取りですぐに琳明は解った。
琳明の時同様、この男は下賜姫の説明をわざわざ向俊にするつもりなのだ。
「お前が危険を冒してまで手に入れたい女は、此処では下賜姫様と呼ばれている。王の妃にするためでなく、元から家臣に下賜されるために後宮に入れた妃のことを裏でそう呼ぶのだ」
「そんなことは彼にわざわざ言う必要はないでしょ」
思わず口を挟んでしまった。
「いや、関係があるだろう。こいつが下賜したいのが下賜姫として召し上げられているお前ならばな。下賜姫は官への褒美として下賜されるからな。褒美として妃を下賜してほしいと望まれれば、17になるまで下賜姫様はここにいるとは限らない」
何を言うかと思えば、後宮での事件に対して内部で動ける人材など限られているはず。
他にもっと適任者がいれば下級妃賓の中でも、さらに下級の琳明にそのお鉢など回ってこないはずだ。
だから下賜されるにしても、この事件が解決までいかずとも解決のめどが立つまでは、玲真としては琳明を後宮に留めておきたいはず。
なのに、わざわざどうしてそれを……
玲真は向俊に向かってさらに言葉を続ける。
「向俊お前の願いは、一人妃を下賜したいでよかったか?」
あっ、駄目だ。これは止めなければ。
琳明の願いは他の男に下賜されず過ごすことだ。下賜さえされなければ1年後には元の予定通り市井に戻れるはずだった。だから向俊はさらに約束をこれ以上する必要はない。
向俊は証文に残していなくとも、琳明は間違いなく証文に残してあるというのに。
するにしたとしても、もっと別のことを願うべきなのだ。
「玲真さ「下賜姫の発言は許していない」
止めようとしたが、それより先に玲真が口をはさむなと釘を刺した。
「どうか……彼女を他の男に下賜されませぬよう」
「――約束しよう」
何が約束だ。約束をするまでもなく、他の男には下賜されないとすでに私と約束を取り付けているというのに……
下賜したい姫が用意できないのは、玲真の落ち度になりこちらが交渉を有利に進められたものを……これで、パーだ。
下賜される場合、妃だけポンとくれてやるわけではない。
後宮からもう一度嫁に出すことになる為、金子や衣や身の回りの婚礼に持っていくものを後宮が準備してくれるのが通例だ。
どうせなら、しっかりと色を付けると約束してくれればいいものの。
皇帝のくせになんてケチなの!?
ケチな琳明は向俊の気持ちはわかるけれど、玲真に完全にしてやられたことで頭を抱えた。
今の約束でどれくらいの損失が出てしまったのかなど考えたくない。
もともと市井へ帰れれば御の字だったじゃないと気持ちを切り替えようとするが、あのままにしておけばとどうしても思ってしまう。
王様なんだから、こんな面倒事に巻きこんでおいて金までケチるだなんて。
しかし一度言葉にしてしまったことをなかったことにするなど、庶民の側からできるはずもない。
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