24 / 37
第24話 肝が据わっている
「……本当に商品の説明を本当に始めるとは思いませんでした」
先ほどまでと違い、丁寧な言葉で孫卓が琳明に声をかけてきた。
「客に質問されて従業員がダンマリだとそれだけで不安になるものですから。でも、わかる範囲でそれらしく言うだけでごまかせる相手で助かりました」
ふぅっと、琳明もようやく一息をついた。
「次は宦官に商品を検閲してもらってから妃たちのところへと品物を運びます。それは、すでに後宮内に入ってからの検査となるので、うまくここから離れていただければと……」
そんな話をしながら進んでいると下女たちが騒がしい。
「饅頭姫が後宮から逃げたかもしれない」
耳に入ってきたその言葉を聞いて、孫卓は琳明にだけ聞こえるような声で言った。
「おっしゃられていることは本当だったようですね。恩にきます」
他の従業員とお揃いだった衣を脱ぐと下から出てきたのは饅頭売りをしていた時の仕事服だった。
「お互いうまくやりましょう」
「えぇ」
くくっていた銀の髪をとくとサラリと流れる。そして、ごく当たり前のように琳明は宮へ向かう道すがら薬草を採る。といっても使いものになるようなものは、もう今の季節にはない。
でもいいのだ、薬にするためにとっているのではないのだから。
琳明の宮には何人もの下女と宦官、そしてその中に当然玲真が立っていた。
あの狸め、やっぱり目的を遂行するために私ごと切るつもりだったんじゃないの! 玲真をみて琳明は胸倉をつかみ上げたい気持ちをグッとこらえ、代わりにギリギリと奥歯をかみしめた。
小蘭と香鈴は人だかりの中心におそらくいるのだと思う。
琳明は息を吸い込んだ、腹からよく通る声を出すためだ。
玲真さま――――残念ながら私はあなたの思うようにいかないわよ。
「まぁまぁまぁ。私の宮の前で皆さんどうかいたしまして?」
これだけ人がいるのだ、少しくらい大げさな方がいいだろう。
「「琳明様」」
そういって駆け寄ってきたのは私付きの女官二人だった。この二人も妃を逃がしたことで何かお咎めを受けるところだったのかもしれない。目じりに少し涙をためていた。
「いやだわ。こんなに人が来るとわかっていれば動きやすい服ではなくちゃんとした衣を着ておりましたのに。あぁ、本当に……お恥ずかしい」
そういって琳明はニッコリと笑ってみせる。何人かの宦官が琳明をみてから視線を主である玲真に移した。
微笑みを浮かべた琳明とは反対に、玲真はここに私がいることが信じられないと眉をぴくりと動かした。
「玲真様までいったいこれはどうしましたの?」
集まっている理由はわかってる、でもあえて玲真に向かって挑発的に笑って見せる。
残念でしたと……こころの中で舌を出して。
「…………これは琳明妃」
玲真からは冷たい声がかけられる。
「はい、何でしょうか? 後宮は広くて女官をつけずに散歩していたら、ちょっと迷子になってしまったの。以前大事な絹地の衣が汚れてしまったでしょう。だからこんなかっこをしていたのだけれど、皆さんを心配させたのならごめんなさいね。でも、この通り私はきちんと後宮におります」
「……後宮にいたのならばいいのです」
琳明の姿をみて、集まっていた下女は口々に、あんな格好をしていたらそりゃ見つからないわよと小さな声で話しながら去っていく。
もう一日夜を超すようなことになっていれば駄目だった。
本当に危機一髪だったわ。
お辞儀をして琳明の前から去ろうとする玲真の背に声をかける。
「玲真様――――心配させてしまってごめんなさいね」
この場で玲真にかけても不思議ではない言葉であるが、完全に精いっぱいの嫌みである。
すっかり人の去った自分の宮の中に入って琳明はへたり込んだ。上手くやったのだ。
「琳明様いったいどちらに行かれていたんですか」
小声で小蘭が琳明にそう告げた。そりゃそうだ。琳明の不在は昨日の昼からである。戻ってきたのが次の日の午後だ。
実質丸一日琳明は後宮からでて市井におりていたこととなる。
女官二人には当然玲真から琳明が市井に下りるように自分が頼んだことなどは話されていなかったのだ。
「昨晩はなんとか小蘭と二人で必死に不在を知られまいと……」
そういって香鈴は涙ぐんだ。
それはそうだ、付いている宮の妃がいなくなったとなれば、当然ついていた女官は何をしていると処罰されることになっただろう。
二人は琳明がいないことを必死に取り繕うはめになったに違いない。
夜は宦官でも寝所に王でない男性を妃の宮に迎え入れるわけにはいかないと突っぱねることができただろうが。
次の日は違う。
昨晩姿が見えなかったようだがと言われたところで、いつまでもごまかせるはずもない。
「私はちょっと嵌められてしまったみたいね。心配をかけてしまってごめんなさいね。二人とももう大丈夫ですからね」
女官二人を安心させるために琳明は笑って見せた。
琳明がそういってほほ笑むと女官二人は本当にほっとしたようだ。
琳明の熱は一度は下がったが、その晩再び琳明は高い熱が出た。薬を飲んで快方に向かってたとはいえ、自分だけでなく周りの命までかかった危ない橋を渡りきった緊張は並大抵のものではなかった。
後宮の宮へと帰ってきたことでほっとした安心感が熱を出させてしまったのだと思う。
すぐに琳明の下に医者がやってきて薬を処方してくれた。
当然格好の訪問理由ができてしまった琳明の下に玲真はやってきた。心底心配した顔で。
玲真の顔をみて、琳明は口には出さないが心の中で毒をつく。
表情を取り繕うのが御上手なことで、この狸が!!!と。
「わざわざお見舞いをありがとうございます。玲真様」
「妃が熱を出せば、王がこられないなら、私が代わりに見舞うくらいはしますよ。貴方も大切な後宮にいる妃の一人なのだから」
(なーーにが、貴方もよ。ことがうまく運ぶように、この私ごとあっさりと切り捨てたくせに)
「ここ数日は特に寒かったですから、身体がとても冷えたのでしょうね……。心配をかけてしまってごめんなさいね」
他の人の目もあるからと琳明は嫌みを言葉尻に混ぜることを続けた。
「体調のすぐれない琳明妃にはすまないが少し話を伺いたい。一応私はこう見えて後宮でのお目付け役でね。実際にあの日何があったかを確認したいんだ。すまないが女官は部屋から退出願えるかい?」
玲真は以前のように女官の退出を促した。
さて、一体なにを私から聞き出すつもりなのやら……
先ほどまでと違い、丁寧な言葉で孫卓が琳明に声をかけてきた。
「客に質問されて従業員がダンマリだとそれだけで不安になるものですから。でも、わかる範囲でそれらしく言うだけでごまかせる相手で助かりました」
ふぅっと、琳明もようやく一息をついた。
「次は宦官に商品を検閲してもらってから妃たちのところへと品物を運びます。それは、すでに後宮内に入ってからの検査となるので、うまくここから離れていただければと……」
そんな話をしながら進んでいると下女たちが騒がしい。
「饅頭姫が後宮から逃げたかもしれない」
耳に入ってきたその言葉を聞いて、孫卓は琳明にだけ聞こえるような声で言った。
「おっしゃられていることは本当だったようですね。恩にきます」
他の従業員とお揃いだった衣を脱ぐと下から出てきたのは饅頭売りをしていた時の仕事服だった。
「お互いうまくやりましょう」
「えぇ」
くくっていた銀の髪をとくとサラリと流れる。そして、ごく当たり前のように琳明は宮へ向かう道すがら薬草を採る。といっても使いものになるようなものは、もう今の季節にはない。
でもいいのだ、薬にするためにとっているのではないのだから。
琳明の宮には何人もの下女と宦官、そしてその中に当然玲真が立っていた。
あの狸め、やっぱり目的を遂行するために私ごと切るつもりだったんじゃないの! 玲真をみて琳明は胸倉をつかみ上げたい気持ちをグッとこらえ、代わりにギリギリと奥歯をかみしめた。
小蘭と香鈴は人だかりの中心におそらくいるのだと思う。
琳明は息を吸い込んだ、腹からよく通る声を出すためだ。
玲真さま――――残念ながら私はあなたの思うようにいかないわよ。
「まぁまぁまぁ。私の宮の前で皆さんどうかいたしまして?」
これだけ人がいるのだ、少しくらい大げさな方がいいだろう。
「「琳明様」」
そういって駆け寄ってきたのは私付きの女官二人だった。この二人も妃を逃がしたことで何かお咎めを受けるところだったのかもしれない。目じりに少し涙をためていた。
「いやだわ。こんなに人が来るとわかっていれば動きやすい服ではなくちゃんとした衣を着ておりましたのに。あぁ、本当に……お恥ずかしい」
そういって琳明はニッコリと笑ってみせる。何人かの宦官が琳明をみてから視線を主である玲真に移した。
微笑みを浮かべた琳明とは反対に、玲真はここに私がいることが信じられないと眉をぴくりと動かした。
「玲真様までいったいこれはどうしましたの?」
集まっている理由はわかってる、でもあえて玲真に向かって挑発的に笑って見せる。
残念でしたと……こころの中で舌を出して。
「…………これは琳明妃」
玲真からは冷たい声がかけられる。
「はい、何でしょうか? 後宮は広くて女官をつけずに散歩していたら、ちょっと迷子になってしまったの。以前大事な絹地の衣が汚れてしまったでしょう。だからこんなかっこをしていたのだけれど、皆さんを心配させたのならごめんなさいね。でも、この通り私はきちんと後宮におります」
「……後宮にいたのならばいいのです」
琳明の姿をみて、集まっていた下女は口々に、あんな格好をしていたらそりゃ見つからないわよと小さな声で話しながら去っていく。
もう一日夜を超すようなことになっていれば駄目だった。
本当に危機一髪だったわ。
お辞儀をして琳明の前から去ろうとする玲真の背に声をかける。
「玲真様――――心配させてしまってごめんなさいね」
この場で玲真にかけても不思議ではない言葉であるが、完全に精いっぱいの嫌みである。
すっかり人の去った自分の宮の中に入って琳明はへたり込んだ。上手くやったのだ。
「琳明様いったいどちらに行かれていたんですか」
小声で小蘭が琳明にそう告げた。そりゃそうだ。琳明の不在は昨日の昼からである。戻ってきたのが次の日の午後だ。
実質丸一日琳明は後宮からでて市井におりていたこととなる。
女官二人には当然玲真から琳明が市井に下りるように自分が頼んだことなどは話されていなかったのだ。
「昨晩はなんとか小蘭と二人で必死に不在を知られまいと……」
そういって香鈴は涙ぐんだ。
それはそうだ、付いている宮の妃がいなくなったとなれば、当然ついていた女官は何をしていると処罰されることになっただろう。
二人は琳明がいないことを必死に取り繕うはめになったに違いない。
夜は宦官でも寝所に王でない男性を妃の宮に迎え入れるわけにはいかないと突っぱねることができただろうが。
次の日は違う。
昨晩姿が見えなかったようだがと言われたところで、いつまでもごまかせるはずもない。
「私はちょっと嵌められてしまったみたいね。心配をかけてしまってごめんなさいね。二人とももう大丈夫ですからね」
女官二人を安心させるために琳明は笑って見せた。
琳明がそういってほほ笑むと女官二人は本当にほっとしたようだ。
琳明の熱は一度は下がったが、その晩再び琳明は高い熱が出た。薬を飲んで快方に向かってたとはいえ、自分だけでなく周りの命までかかった危ない橋を渡りきった緊張は並大抵のものではなかった。
後宮の宮へと帰ってきたことでほっとした安心感が熱を出させてしまったのだと思う。
すぐに琳明の下に医者がやってきて薬を処方してくれた。
当然格好の訪問理由ができてしまった琳明の下に玲真はやってきた。心底心配した顔で。
玲真の顔をみて、琳明は口には出さないが心の中で毒をつく。
表情を取り繕うのが御上手なことで、この狸が!!!と。
「わざわざお見舞いをありがとうございます。玲真様」
「妃が熱を出せば、王がこられないなら、私が代わりに見舞うくらいはしますよ。貴方も大切な後宮にいる妃の一人なのだから」
(なーーにが、貴方もよ。ことがうまく運ぶように、この私ごとあっさりと切り捨てたくせに)
「ここ数日は特に寒かったですから、身体がとても冷えたのでしょうね……。心配をかけてしまってごめんなさいね」
他の人の目もあるからと琳明は嫌みを言葉尻に混ぜることを続けた。
「体調のすぐれない琳明妃にはすまないが少し話を伺いたい。一応私はこう見えて後宮でのお目付け役でね。実際にあの日何があったかを確認したいんだ。すまないが女官は部屋から退出願えるかい?」
玲真は以前のように女官の退出を促した。
さて、一体なにを私から聞き出すつもりなのやら……
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。