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山賊

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「俺は姫を追う。姫がさらわれたのは俺のせいだ。守ると誓ったのに」
老婆イトは荒れ狂う十郎をなだめ、自分の推測を語った。
「すぐそこの八甲山に住み着いた山賊どもが怪しいわい。調べるべきじゃ」
十郎たちは詳しい地図を受け取り、急いで現地へと向かった。
山の中腹に大きな山砦があり、武器を持った賊が頻繁に出入りしていた。
「確かに怪しい。山賊にしては大規模だ。よほどの悪事を続けているな」
じっくりと観察した遼次が感想を述べた。十郎と亘は頷いた。
「まずは俺が偵察しよう。二人はここで待っていろ。すぐに戻る」
遼次は山林に消え、十郎と亘は山砦の監視を続けた。
「十郎! 亘! 大変だ! すぐにここを離れよう!」
麓まで降りた三人は川辺の小屋に隠れた。
「間違いない。あの砦にはキノがいる。俺には雰囲気でわかった」
いつもは冷静な遼次が震えるような声で言った。
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