夕日と白球

北条丈太郎

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白球を追う少年たち

サッカー部から来たチータ

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「野球部って廃部になるんじゃねえの? 部員が足りねえって聞いたけどよ、なんで練習?」
 キャプテン坂本に声をかけられた少年はランニングを始めた太陽と夜空を見て言った。
「廃部にはならない。俺がさせない、俺はキャプテンとして野球部を守る。そのための練習だ」
 キャプテン坂本は少年に答えつつ、ランニングをしている太陽と夜空をじっと見つめた。
 そのとき、少年の左右にサッカー部の部員が数人集まってきた。
「おいチータ! お前本当にサッカー部やめるのかよ? もったいないから残れって!」
「キャプテン殴ったくらいで退部なんかしなくていいって! 俺らもキャプテン嫌いだしよ」
 サッカー部の部員たちはチータと呼んだ少年の肩を叩いた。
「うるせえ! 俺は俺の好きにやるんだよ! もうサッカーはやめだ! お前らに任せる!」
 チータと呼ばれた少年が大声で怒鳴るとサッカー部員たちはあきらめたように去った。
「おう先輩! 野球よく知らねえけど野球部に入ってやるよ! 困ってんだろ?」
 少年はキャプテン坂本をにらむように見て言い放った。
「……困ってるよ。君が入部してくれるというなら大歓迎しよう。ちょっと練習してみよう」
「何の練習だか知らねえけどよ、俺は走ったらめちゃくちゃ速いぜ! まあ見てなって!」
 言った途端に少年は走り出し、ランニング中の太陽と夜空を抜き去って振り返った。
「おう! 俺は千田洋一だ! サッカーやめたから野球やってやんよ!」
 言われた太陽と夜空は走るのをやめ、キャプテン坂本の顔を見た。
「……えっとまあ、そういうことだ二人とも。千田君と仲良くやってみようぜ!」
 キャプテンの言葉を聞いた千田洋一はふんと鼻息を鳴らし、夜空の頭をはたいた。
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