夕日と白球

北条丈太郎

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新たなる野球部

俺について来い!

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「いいか、お前ら! 春の大会でいきなり負けちまったのは守備力のせいだ!」
 新キャプテンのタンピンはバットを振り上げ、グラウンドに集まった部員たちに怒鳴った。
 部員たちは素直にうなずいたが、カズこと鈴木和雄は言葉を返した。
「うちは万年一回戦負けでしょ。それに攻撃力だってひどいもんですよ」
「うるせえぞカズ! まずは守備力向上なんだよ! 攻撃力はその次だ!」
 カズに言われて顔を真っ赤にしたタンピンを見た夜空は笑いかけて口を閉じた。
「おいカズ! お前は内野の練習を見ろ! 外野の練習は銀次が見てくれ! 練習始め!」
 タンピンが大声で指示すると、部員たちはそれぞれの位置についた。
「……お前ら素人バッテリーは河川敷までランニングだ! 俺を追いかけてこい!」
 言うや否やタンピンは走り出し、夜空と太陽はあわててタンピンを追った。
「……はあはあ。夜空くん? 河川敷ってどこだろ? 遠いのかな? はあはあ……」
 太陽は走りながら夜空に話しかけたが、走るのが苦手な夜空は走るので精いっぱいだった。
「タンピン先輩は結構速いね。全然ペースが落ちないよ。はあはあ……」
 太陽が先にバテて歩き始めたとき、河川敷の土手が見えたので夜空も歩き出した。
「この素人ども! あとちょっとだろ! 気合いだ! 根性で走れこの野郎!」
 大声で怒鳴るタンピンの後ろには河川敷に敷設された野球場があった。
「……はあはあ。あ、あれ? 美緒? 美緒が練習やってるのか?」
 そこでは小船小学校の野球チームらしき子供たちが汗を流して練習していた。
「……よ、夜空くん。あ、あれ、ボクの妹だよ」
 ピッチャーをやっているのはポニーテールの女の子のようであった。
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