夕日と白球

北条丈太郎

文字の大きさ
上 下
18 / 45
新たなる野球部

妹は天才ピッチャー

しおりを挟む
 夜空と太陽が女の子のピッチングに見とれているとタンピンがにやりと笑った。
「あの子は小船小のエースらしい。間違いなく大地より天才ピッチャーだなワハハ!」
 背の高い女の子のピッチングはコントロールが抜群で、直球も速かった。
「……キャプテン! あいつは僕の妹です。美緒は球拾いやってるって言ってたのに」
 そのとき、女の子は山なりのカーブを投げた。するとチームメイトがざわついた。
「おい美緒! 変化球は禁止だろ! 試合でばれたら一発退場だぞ! 覚えとけよ!」
 言われた女の子はぺろりと舌を出し、直球を投げた後にチェンジアップを投げた。
「お、おい太陽! お前の妹が変化球投げてるぞ! しかもストライクだ。すげえな!」
 ややすると子供たちは夜空たちが練習を見ていることに気付いた。そして騒ぎ出し、大声でタンピンを呼び寄せた。タンピンは笑顔で子供たちに近づき、夜空と太陽を紹介した。
「こいつらがウチのへっぽこバッテリーだ。こいつらに野球の厳しさを教えてやってくれ!」
「あ! 兄ちゃん! アタシにピッチング習うの? それに夜空くん? 夜空くんでしょ?」
 大地美緒は夜空に近づくと白く細い手を差し出し、握手を求めて微笑んだ。
「じゃあ小船小のみんな! 大地と星野で小船小打線と勝負だ。遠慮なく打ってくれよ!」
 強引なタンピンの指示により、夜空と太陽のバッテリーは子供たちと勝負することになった。
 最初は緩い球を打たれて笑っていた太陽は徐々に本気になり、ついに速球を投げ始めた。
 それでも子供たちは太陽の速球を見極め、甘い球を待ってライト前に打ち返した。
「アハハ兄ちゃん! 小船小は強いんだよ。あきらめてアタシにピッチング習いなよ」
 ついにスタミナ切れで投げられなくなった太陽はタンピンに頭を下げて座り込んだ。
「大地! 星野! 帰っていいから美緒ちゃんに投球術を教わっとけよ!」
しおりを挟む

処理中です...