夕日と白球

北条丈太郎

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新たなる野球部

秋季大会開始!

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 秋季大会予選一回戦。小船中の相手は樋口中であった。タンピンが事前に調べた結果、野球では実績のない学校であることはわかっていた。タンピンは試合前に円陣を組ませ、ナインに大声を出すよう指示した。それが一番リラックスする方法であった。そして夜空は太陽を招き、サインの確認をした。変化球を使わず、直球のみで勝負することも確認した。
「お前の直球なら七分の力でいける。ペース配分も考えて完投勝ちといこうぜ!」
 ……そして試合が始まった。
 太陽はコントロール重視で直球を投げ、次々と打者を打ち取った。無理に三振を狙わず、打たせて取る形で球数をセーブした。バックも太陽の信頼に応え、一つ一つ確実にアウトを取った。多少のエラーはあったがランナーが三塁に進むことはなかった。小船打線はみなが大振りせず、着々とランナーをためて確実に得点していった。そうして試合前半が終わった。
 試合後半に入ると、自分たちのペースをつかめない樋口中は目に見えて疲労していった。
「……キャプテン。あいつらバテバテですけど、どうします?」
「どうするってどういうことだ? 淡々と点取ってコールド勝ちすればいいだろ」
「……違うんですよキャプテン。もっと試してみたいプレーとか、やってないプレーがあるんですよ。やっぱ練習より実戦で身に着けたいんですよ。いいですか?」
 言い出したのは夜空であったが、太陽らも同じような意見を口にした。
「なんだあ? これは公式戦だぞ。真面目に勝ちに行け。生意気言いやがって」
 そう言いながらもタンピンはナインの頼もしさに思わず笑った。
「好きにしろ! お前らに任せる! 勝ってこい!」
 小船中は大差コールド勝ちという結果で試合を終えた。
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