夕日と白球

北条丈太郎

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新たなる野球部

敵は名将・能村監督

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 試合当日の朝、キャプテンのタンピンは球場のロッカールームでナインに言い聞かせた。
「いいか、相手の古田中が強いのはチームが能村監督の指示通りに動くからだ。守備シフトもそうだしランナーを走らせるときも監督の指示だ。監督の指示がばっちりだから古田中は強い。でも俺たちは勝つ。前にも言ったけど選手一人ひとりの力なら俺たちが上だからだ!」
 タンピンが力強く言うと、ナインは表情を引き締めて大声で返事をした。
「……おい夜空、お前ちょっとトイレ付き合え。早く来いよ!」
 タンピンに言われた夜空はレガースの装着をいったんやめてトイレへ急いだ。
「……いいか、太陽に変化球のサインは出すなよ。直球で打たせて取れ。古田中のバッターなら太陽の直球で打ち取れるんだ。お前のリードがすべてなんだぞ!」
「でもキャプテン。いざって時には変化球で……。負けたら終わりなんですよキャプテン」
「バカヤロウ。お前らが変化球の練習してたのは知ってる。次にとっとけってんだ。太陽のカーブもチェンジアップもすごいんだろ。今日は直球で勝て。変化球は次の試合だ!」
 タンピンが怒り始めていると感じた夜空は言い返すのをやめ、ロッカールームへ戻った。
 ……そして試合が始まった。
 古田中のピッチャーは丁寧なピッチングでまず小船打線を抑えた。
 対して太陽のピッチングはやや荒れ気味であったが直球の威力で古田中打線を抑えた。
 中盤までに小船打線は古田中ピッチャーの球に慣れ、チームバッティングで1点を先制した。
「よし! いい調子だ。もっと球数を投げさせて追加点だ。頼むぞお前ら!」
 監督としてベンチに控えるタンピンはナインを励まし、グラウンドへ行くナインを見送った。
 だが、試合は中盤に入って展開が変わった。
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