5 / 21
いちご夢野先生と睦月拓馬
先生に会うまでは帰らない
しおりを挟む
若菜が拓馬に見せたスマホのメール画面には、ただ一言だけが書かれていた。
「会いたくないから帰ってもらってよ」
その一文を見たとき拓馬は歯を食いしばったが、こらえきれずに大声を出した。
「嫌だね。帰らない。冗談じゃねえ! こっちも湘南市から来たんだ。会うだけは会うぞ!」
興奮で顔を赤くした拓馬は広い山川家に入り込み、驚く若菜と母親を無視して歩き回った。
「まったく! でかい家だな、いちご先生! どの部屋にいるんだ? 返事してくださいよ!」
「……ちょっとおめえなあ。世帯主のオラに挨拶もなしに家探しとはいい根性だあ。オラは山川真潮っつうてなあ、奈緒美と若菜の母親だあよ」
老いた女性に腕をつかまれた拓馬はやや冷静になり、頭を下げてその場に座った。
「……失礼しましたお母さん。僕は睦月拓馬と言いまして、数年前に奈緒美さん、いちご先生と漫画の仕事をさせてもらった者です。詳しいことはお姉さん、若菜さんにだいたい伝えました」
拓馬が改めて挨拶すると真潮も若菜もきょとんとして拓馬を見つめた。
「ま、まあそのなんや。こちらの睦月さんはこれから事業を始めるっちゅうことで奈緒美と仕事の話をしたいらしいねんお母さん。そういうことでちょっとええかな?」
若菜はやや慌てて真潮に話しかけ、拓馬をちらりと見た。そして真潮を連れてその場を去った。
広い山川家の中で放置される形になった拓馬は尿意を催し、トイレを探し当てて入った。
「……あんなあ、お母さん。睦月は無職やし、貯金もそんなにはなさそうや。でもな、奈緒美に会いたいっちゅう情熱は本物っぽいわ。ちょっと試してもええかな?」
拓馬がトイレから出たとき、ひそひそ声が聞こえたが、流した水の音とともに消えた。
そのあと、拓馬は居間に招かれて山川母娘と真面目な話をすることになった。
「会いたくないから帰ってもらってよ」
その一文を見たとき拓馬は歯を食いしばったが、こらえきれずに大声を出した。
「嫌だね。帰らない。冗談じゃねえ! こっちも湘南市から来たんだ。会うだけは会うぞ!」
興奮で顔を赤くした拓馬は広い山川家に入り込み、驚く若菜と母親を無視して歩き回った。
「まったく! でかい家だな、いちご先生! どの部屋にいるんだ? 返事してくださいよ!」
「……ちょっとおめえなあ。世帯主のオラに挨拶もなしに家探しとはいい根性だあ。オラは山川真潮っつうてなあ、奈緒美と若菜の母親だあよ」
老いた女性に腕をつかまれた拓馬はやや冷静になり、頭を下げてその場に座った。
「……失礼しましたお母さん。僕は睦月拓馬と言いまして、数年前に奈緒美さん、いちご先生と漫画の仕事をさせてもらった者です。詳しいことはお姉さん、若菜さんにだいたい伝えました」
拓馬が改めて挨拶すると真潮も若菜もきょとんとして拓馬を見つめた。
「ま、まあそのなんや。こちらの睦月さんはこれから事業を始めるっちゅうことで奈緒美と仕事の話をしたいらしいねんお母さん。そういうことでちょっとええかな?」
若菜はやや慌てて真潮に話しかけ、拓馬をちらりと見た。そして真潮を連れてその場を去った。
広い山川家の中で放置される形になった拓馬は尿意を催し、トイレを探し当てて入った。
「……あんなあ、お母さん。睦月は無職やし、貯金もそんなにはなさそうや。でもな、奈緒美に会いたいっちゅう情熱は本物っぽいわ。ちょっと試してもええかな?」
拓馬がトイレから出たとき、ひそひそ声が聞こえたが、流した水の音とともに消えた。
そのあと、拓馬は居間に招かれて山川母娘と真面目な話をすることになった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる