蒼き風の突騎兵

北条丈太郎

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序章

草原を包む五つの国

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 ……大陸歴五〇一年。
 広大なイデア大陸を戦火に包んだイデア南北戦争終結からおよそ三〇〇年が経過していた。
 大陸の北方には新たに興ったラシア皇国が存在し、大陸南方に存在する自由南方共和国と絶えず軍事的衝突を繰り返していた。それが本格的な戦争に発展しなかったのは両国の中間に存在するタルタス王国の影響が大きかった。
 タルタス王国は古来よりイデア草原に住む騎馬民族が統一された国家であった。英雄と呼ばれる大王マンガルを中心とするタルタスは草原最強を誇り、そのタルタスがイデア草原の中央に位置する限り、ラシア皇国と自由南方共和国は小競り合い以上の衝突はできなかった。そして、その衝突を西方から注視していたのがインダ連合国であった。
 インダ連合国は主に工業、商業で栄える連合国家であった。皇国と共和国の衝突に直接参加することはなかったが、兵器の開発技術を握り、生産した兵器を両国に売りつけることで莫大な利益を手にしていた。特にGドライブと呼ばれる再生可能エネルギーに関する技術を独占していたため、大陸では最も豊かな国であった。
 そして大陸の東方にはヤマン国と呼ばれる島国が存在した。ヤマン国は神秘の国と言われ、その全貌を知る者は少なかったが、大陸にはヤマン国からの移民も存在した。またヤマン国は独自の工業技術を持ち、その技術で開発された兵器も大陸に持ち込まれていた。
 イデア南北戦争で活躍したのはライドバスターと呼ばれる二輪機動兵器であったが、特にヤマン国で開発、生産されたRBライドバスターは最上級とされ、ラシア皇国、自由南方共和国でも貴重とされた。
 そのRBを自由自在に操った兵士は突騎兵とっきへいと呼ばれた。南北戦争においては主役とされた彼らが、再び草原を駆け抜ける日が刻一刻と近づいていた。
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