蒼き風の突騎兵

北条丈太郎

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戦争と少年少女たち

ラシア皇国軍の出動

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 イデア草原の北方に位置するラシア皇国は豊かとは言えない国であった。
 鉱物資源などは豊かであったが、それを加工する技術などはインダ連合に頼り切っていた。
 農業は常に寒波襲来との戦いであり、安定した農作物の確保は難しい状態であった。
 それゆえ、ラシア皇国は自国に比して豊かな自由南方共和国の領土を常に狙っていた。
 過去、ラシア皇国軍はタルタス王家との小競り合いに負け続けた苦い歴史を持っていた。
 やがて彼らはタルタスとの小競り合いを避け、まずは草原東北部の豊かな自治領ワンスを併呑せんと軍備を増強した。そしてその軍事力を持ってワンス近辺へたびたび軍事行動を起こした。
 だがワンス自治領防衛軍も小規模ながら頑強を誇り、ラシア皇国軍も攻めあぐねていた。
 ……そういった軍事情勢に一つの転機が訪れた。
 インダ連合国の各兵器メーカーが航空兵器ジャイロの開発生産に成功したからであった。
 ラシア皇国軍はジャイロが決戦兵器となりうるかのテストとして出動を繰り返すようになった。
「ピーター! 第一軍をもって出動せよ! 余は地上戦艦ヴォルグで観戦する」
「御意! 第一軍司令ピーター・ミーシャ出動します! 殿下はとくとご観戦あれ!」
 ラシア皇国皇子ウィルバルト・ヒョードルの命令が轟いたとき、ラシア皇国の最前線基地から赤く塗装された地上艦艦隊が整然と発進した。艦隊にやや遅れる形で飛び立ったのは航空兵器ジャイロの一団であった。地上艦のタイヤが草を踏みしめる音に続き、上空ではジャイロのプロペラ音が轟然と鳴り響いた。それまではRBが主役であった草原の戦いはこれから変貌しようとしていた。
「殿下! 攻撃ジャイロを先行させますか? それとも輸送ジャイロからRBを……」
「そう興奮するなピーター。戦術面はお前に一任する。試してみよ」
「はっ! 御意であります! 敵を圧倒してみせましょう!」
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