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『雨杜村』
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今日は雲は多少あるものの天気は良く、
日差しも心地よい具合だった。
私は昨日の写真に写っていた資料館に行くことにした。
「あっここだ。名前は?ええと、《雨杜村資料館》……そのまんまじゃん。」
中に入ると少しかび臭い匂いがしたが、そこまで気になる程ではなかった。
「んん?唐傘様の資料ってどこ??」
いろいろ見て回っていたがめぼしい資料は見つからなかった。
小さな資料館だか村の神様について記載した資料がないのはおかしい。
「あとは奥の方だけか」
資料館の奥は入口付近に比べると薄暗く、
少しばかり不気味であった(人がいないというのもあるだろうが)
すると端に他のものより小さい
古びた本棚を見つけた。
その本棚の中に1冊、気になるものがあった。
「《雨杜村形成録》?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▼雨杜村の起こり
雨杜村は当時この地域にあった村・雨音村が起源であるとされる。
雨音とは、雨の降る音のことであり、
ことばの響きが変化して“あまと”となったと言われる。
▼雨音村
村の名前から分かるようにここは雨を大切にしていた。彼らが崇める神も雨神であった。
その雨神については別途記載
▼雨神について
ここで言う雨神というのは雨乞いの神様である。
雨音村の神は蛇神であった。
蛇神への信仰は雨杜村になっても続いた。
***
**
*
1○○○年○月○日
浮世離れした容姿を持った青年が、
日照りの際に雨乞いのために人身御供にされた。
(神の贄として容姿が良い者が好まれたからだと考えられる)
結果その村はその年雨に恵まれたが、雨の恵みは長くは続かなかった。
村人は青年の怨念だとし、
青年を雨乞いの神として祀った。
(この頃には蛇神の力は感じられなくなっていた)
以来、村人たちは青年の祟りを恐れ雨の日に会ってはならないとした。
青年もとい雨乞いの神は
この村では《唐傘様》と呼ばれる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「唐笠様は、元は人間だった?」
驚きを隠しきれない私に対し、
私の手は自然とあの写真へと手を伸ばした。
怖い、知りたくない。
また変わっているのは確実だろう。
これ以上知ったら…もう後戻りは出来なくなる。
…… 親友だと思っていたのに
おいで、村人達が僕に何をしたか見せてあげる
「行か、なきゃ。会わなきゃ…唐笠様に会ったら私は…」
全てを知らないといけない。
後戻りは決して許されない。
彼がどこにいるか知らないはずなのに、不思議と行くべき場所は分かった。
行き先は、唐笠様が祀られている神社だ。
神社に着く頃には雨がポツポツと降り出していた。先程まではあんなに晴れていたのに…。
境内に入る頃にはすっかり本降りになってしまっていた。
「唐傘様…いらっしゃるんですよね」
出てきた声はかすれ、震えていた。
ーー真実を知らなければ。
その一心でここまでやってきたが、正直すぐにでも立ち去りたかった。
「久しぶりだね、琴音。…いや、この姿で会うのは初めてだから初めましてかな?」
穏やかでどこまでも優しさを含んだ声は
今は逆に恐ろしく感じた。
そういえばこの声、どこかで…?
「もしかして、あのときの唐傘?」
私がこの村についての真実を探す
原因となったあの唐傘。
もしあれが唐傘様だったなら?
そうすれば全て辻褄が合う。
何故私に真実を知らせようとしたのか…。
憶測だが、
隠された事実を明かすには村人では駄目だったからだろう。
なぜなら村の恩恵はあの犠牲あってこそだと思っているから。
そこに丁度よく現れた私という異分子。
だから私に探させたのか?
「そうだね。あのときの唐傘は僕だ。正確には僕の依代だけど。それに…本当は昔あったことがあるんだよ。君はもう忘れてしまっているけど。」
「私は、唐笠様に会ったことがあるの?」
「そうだよ、君は会ったことがあるんだ。
僕は一度、君を連れていったことがあるからね」
「それじゃあ、何で私は今この場にいるの?」
「最初は仲間にするつもりだったけど、こんな小さい、罪のない子供を神にするのに抵抗があっただけだよ。」
「…………」
「でも思ったんだ。信じていた親友に裏切られて神の生け贄にされた僕が、訳も分からず人柱にされた僕が、罪悪感なんか覚える必要は無いんじゃないかって。」
オマエモ、道連れだ
赤い肉塊のようなものが、私の体を包み込むと、次第に私の意識は遠退いていく。
「おやすみ琴音、後数分もすれば、僕と同じになれるよ。」
薄れゆく意識の中で私が最後に見たのは、
酷く哀しそうな顔をした唐傘様だった。
日差しも心地よい具合だった。
私は昨日の写真に写っていた資料館に行くことにした。
「あっここだ。名前は?ええと、《雨杜村資料館》……そのまんまじゃん。」
中に入ると少しかび臭い匂いがしたが、そこまで気になる程ではなかった。
「んん?唐傘様の資料ってどこ??」
いろいろ見て回っていたがめぼしい資料は見つからなかった。
小さな資料館だか村の神様について記載した資料がないのはおかしい。
「あとは奥の方だけか」
資料館の奥は入口付近に比べると薄暗く、
少しばかり不気味であった(人がいないというのもあるだろうが)
すると端に他のものより小さい
古びた本棚を見つけた。
その本棚の中に1冊、気になるものがあった。
「《雨杜村形成録》?」
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▼雨杜村の起こり
雨杜村は当時この地域にあった村・雨音村が起源であるとされる。
雨音とは、雨の降る音のことであり、
ことばの響きが変化して“あまと”となったと言われる。
▼雨音村
村の名前から分かるようにここは雨を大切にしていた。彼らが崇める神も雨神であった。
その雨神については別途記載
▼雨神について
ここで言う雨神というのは雨乞いの神様である。
雨音村の神は蛇神であった。
蛇神への信仰は雨杜村になっても続いた。
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1○○○年○月○日
浮世離れした容姿を持った青年が、
日照りの際に雨乞いのために人身御供にされた。
(神の贄として容姿が良い者が好まれたからだと考えられる)
結果その村はその年雨に恵まれたが、雨の恵みは長くは続かなかった。
村人は青年の怨念だとし、
青年を雨乞いの神として祀った。
(この頃には蛇神の力は感じられなくなっていた)
以来、村人たちは青年の祟りを恐れ雨の日に会ってはならないとした。
青年もとい雨乞いの神は
この村では《唐傘様》と呼ばれる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「唐笠様は、元は人間だった?」
驚きを隠しきれない私に対し、
私の手は自然とあの写真へと手を伸ばした。
怖い、知りたくない。
また変わっているのは確実だろう。
これ以上知ったら…もう後戻りは出来なくなる。
…… 親友だと思っていたのに
おいで、村人達が僕に何をしたか見せてあげる
「行か、なきゃ。会わなきゃ…唐笠様に会ったら私は…」
全てを知らないといけない。
後戻りは決して許されない。
彼がどこにいるか知らないはずなのに、不思議と行くべき場所は分かった。
行き先は、唐笠様が祀られている神社だ。
神社に着く頃には雨がポツポツと降り出していた。先程まではあんなに晴れていたのに…。
境内に入る頃にはすっかり本降りになってしまっていた。
「唐傘様…いらっしゃるんですよね」
出てきた声はかすれ、震えていた。
ーー真実を知らなければ。
その一心でここまでやってきたが、正直すぐにでも立ち去りたかった。
「久しぶりだね、琴音。…いや、この姿で会うのは初めてだから初めましてかな?」
穏やかでどこまでも優しさを含んだ声は
今は逆に恐ろしく感じた。
そういえばこの声、どこかで…?
「もしかして、あのときの唐傘?」
私がこの村についての真実を探す
原因となったあの唐傘。
もしあれが唐傘様だったなら?
そうすれば全て辻褄が合う。
何故私に真実を知らせようとしたのか…。
憶測だが、
隠された事実を明かすには村人では駄目だったからだろう。
なぜなら村の恩恵はあの犠牲あってこそだと思っているから。
そこに丁度よく現れた私という異分子。
だから私に探させたのか?
「そうだね。あのときの唐傘は僕だ。正確には僕の依代だけど。それに…本当は昔あったことがあるんだよ。君はもう忘れてしまっているけど。」
「私は、唐笠様に会ったことがあるの?」
「そうだよ、君は会ったことがあるんだ。
僕は一度、君を連れていったことがあるからね」
「それじゃあ、何で私は今この場にいるの?」
「最初は仲間にするつもりだったけど、こんな小さい、罪のない子供を神にするのに抵抗があっただけだよ。」
「…………」
「でも思ったんだ。信じていた親友に裏切られて神の生け贄にされた僕が、訳も分からず人柱にされた僕が、罪悪感なんか覚える必要は無いんじゃないかって。」
オマエモ、道連れだ
赤い肉塊のようなものが、私の体を包み込むと、次第に私の意識は遠退いていく。
「おやすみ琴音、後数分もすれば、僕と同じになれるよ。」
薄れゆく意識の中で私が最後に見たのは、
酷く哀しそうな顔をした唐傘様だった。
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