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真実
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ポロン…ポロン…
琴の音色が聞こえる。
優しくて、どこか懐かしくて。
ふわふわとした気分のまま目を開けると、
知らない屋敷の縁側に寝そべっていた。
屋敷は豪奢な木造家屋という感じで
なんだか歴史の教科書に載ってそうな屋敷だ。
庭には白い小さな花が咲いた木々が
植えてあった。(木にしては高さはないが)
ーーここは、一体どこなの?
「おや、この屋敷に客人なんて珍しいね」
「唐笠…様?」
目の前に現れたのは、
唐笠様そっくりの青年であった。
いや、そっくりと言うよりも、本人そのもののように見える。
「唐笠様?誰と間違えてるのかな?
僕の名前は唐笠じゃなくて東雲だよ。」
そう言って青年は、
心底不思議そうな顔をして首を傾げた。
「あ、ごめんなさい…えっと、東雲さん。
私の知っている人とよく似ていたもので。」
慌てて訂正したものだから、少しばかり声が上擦った。こんなにも造形がそっくりなことなんてあるのだろうか?
琴音の言葉を聞いた青年ーー東雲は安堵の溜息を零して優しい声で答える。
「そうか、なら良いんだけど」
「ところで、この屋敷に客人が
来るのが珍しいって、どういうことですか?」
「ああ、ここの村人は皆、僕のことを忌み子、または鬼の子として扱っていてね。ここに来るのは重治くらいだよ。」
重治という名は私のおじいちゃんと同じだ。
もしも東雲が唐傘様なら、
おじいちゃんは昔、東雲に会っていた?
「おーい、東雲!」
その直後、どこかから男の声が聞こえた。
この声の主は、もしかして…
「あ、噂をすれば重治の声だ。僕に何か用でもあるのかな?……………どうしたの?」
何故か一瞬、
東雲が血塗れになっているように見えた。
「う、ううん、何でもない。」
「東雲ー!まだ寝てるのか?」
私の不安をよそに、
声の主はどんどんこちらへと近ずいてくる。
「今行くよ!」
そう答える東雲に嫌な予感がした私は、
咄嗟に東雲さんの腕を掴もうと…
「何で、触れないの?」
東雲さんの体は、私の手をすり抜けて、
声の主の元へと向かっていった。
「重治、僕に何か用でも!」
「………許してくれ、東雲」
「…………え?何のこ…」
「ガハッ…どう………して…………」
重治に気を取られて気づいていなかったが、
物影に村人達がいたようだ。
村人達は複数で僕に殴りかかった。
僕が弱って動けなくなるまで、
村人達は僕の顔以外を何度も何度も殴ってきた。
「重…………治…………た………すけ…」
重治は僕が殴られてる様子を黙って見ていた。
止めに入る様子も無ければ、
自分も参加する様子も無かった。
いや、僕にとっては、突然殴られたことよりも…
「すまない東雲、この村の皆が助かるには、
東雲の犠牲が必要不可欠なんだ…」
何より辛かったのは、殴られたことよりも
信じていた親友に、裏切られたことだった。
神殿に放り投げられてから、
あれから何時間経ったのだろうか。
涙もとっくに枯れてしまって、何の感情も沸いてこなかった。
「せめて、もっと生きたかったな…」
死にたくない、生きていたい。
けれども運命がそれを許してくれない。
ああ、これから僕は、
この村の神である蛇神に食べられて、
誰からの記憶からも消えるのだろう。
いつの間にかそばに来ていたこの村の蛇神は、
そんな僕の思いも知らずに僕をそのまま呑み込んだ。
蛇神の胃の中で死を待ちながら、僕の心は怒りの感情で溢れていた。
そもそも、村人が僕を生け贄になんて選ばなければ、僕はまだ生きていられたんだ。
そうだ、全部、全部、僕を生け贄にしたあいつらが……村の連中が全部悪いんだ。
気がつくと僕はさっきの神殿の床に倒れていた。
今さっきまで蛇神の胃の中だったのに、
蛇らしきものはどこにもいない。
何故だか分からないが、僕の体からは膨大な力を感じる。
もしかして、意図せず蛇神の力を取り込んだのだろうか。
「…………ははっ、やった、これで僕は自由なんだ!!呪ってやる、呪い殺してやる!
僕を殴った村人達も……裏切り者の重治も!
皆、皆、死んでしまえ!」
どうやら本当に僕は蛇神の力を取り込んだようで、雨を止めてしまえば、村人達は次々と餓死していった。
「これは、東雲の祟りだ」
「すぐに怒りを鎮めなければ、この村は滅んでしまう」
やがて人間達は、僕の神社を作り、
雨乞いの神として、崇め奉るようになった。
「だが忘れるな人間。
僕は一度たりとも、お前達人間を許したことはないぞ。」
あの時味わった絶望は絶対に返してやる
「分かったかい?琴音。これが君が知りたがってた真実だよ。」
「これが、この村の真実…」
目の前に現れた唐傘様は、小さい子供に言い聞かせるようかのように私に言葉を投げかけた。
あまりに惨い真実に私の頭は真っ白になった。
少し間を置いて唐傘様は私に尋ねる。
「僕が神となった経緯を見た君に問いたい。
これから君はどちら側につきたいの?」
その問に私はーーー
琴の音色が聞こえる。
優しくて、どこか懐かしくて。
ふわふわとした気分のまま目を開けると、
知らない屋敷の縁側に寝そべっていた。
屋敷は豪奢な木造家屋という感じで
なんだか歴史の教科書に載ってそうな屋敷だ。
庭には白い小さな花が咲いた木々が
植えてあった。(木にしては高さはないが)
ーーここは、一体どこなの?
「おや、この屋敷に客人なんて珍しいね」
「唐笠…様?」
目の前に現れたのは、
唐笠様そっくりの青年であった。
いや、そっくりと言うよりも、本人そのもののように見える。
「唐笠様?誰と間違えてるのかな?
僕の名前は唐笠じゃなくて東雲だよ。」
そう言って青年は、
心底不思議そうな顔をして首を傾げた。
「あ、ごめんなさい…えっと、東雲さん。
私の知っている人とよく似ていたもので。」
慌てて訂正したものだから、少しばかり声が上擦った。こんなにも造形がそっくりなことなんてあるのだろうか?
琴音の言葉を聞いた青年ーー東雲は安堵の溜息を零して優しい声で答える。
「そうか、なら良いんだけど」
「ところで、この屋敷に客人が
来るのが珍しいって、どういうことですか?」
「ああ、ここの村人は皆、僕のことを忌み子、または鬼の子として扱っていてね。ここに来るのは重治くらいだよ。」
重治という名は私のおじいちゃんと同じだ。
もしも東雲が唐傘様なら、
おじいちゃんは昔、東雲に会っていた?
「おーい、東雲!」
その直後、どこかから男の声が聞こえた。
この声の主は、もしかして…
「あ、噂をすれば重治の声だ。僕に何か用でもあるのかな?……………どうしたの?」
何故か一瞬、
東雲が血塗れになっているように見えた。
「う、ううん、何でもない。」
「東雲ー!まだ寝てるのか?」
私の不安をよそに、
声の主はどんどんこちらへと近ずいてくる。
「今行くよ!」
そう答える東雲に嫌な予感がした私は、
咄嗟に東雲さんの腕を掴もうと…
「何で、触れないの?」
東雲さんの体は、私の手をすり抜けて、
声の主の元へと向かっていった。
「重治、僕に何か用でも!」
「………許してくれ、東雲」
「…………え?何のこ…」
「ガハッ…どう………して…………」
重治に気を取られて気づいていなかったが、
物影に村人達がいたようだ。
村人達は複数で僕に殴りかかった。
僕が弱って動けなくなるまで、
村人達は僕の顔以外を何度も何度も殴ってきた。
「重…………治…………た………すけ…」
重治は僕が殴られてる様子を黙って見ていた。
止めに入る様子も無ければ、
自分も参加する様子も無かった。
いや、僕にとっては、突然殴られたことよりも…
「すまない東雲、この村の皆が助かるには、
東雲の犠牲が必要不可欠なんだ…」
何より辛かったのは、殴られたことよりも
信じていた親友に、裏切られたことだった。
神殿に放り投げられてから、
あれから何時間経ったのだろうか。
涙もとっくに枯れてしまって、何の感情も沸いてこなかった。
「せめて、もっと生きたかったな…」
死にたくない、生きていたい。
けれども運命がそれを許してくれない。
ああ、これから僕は、
この村の神である蛇神に食べられて、
誰からの記憶からも消えるのだろう。
いつの間にかそばに来ていたこの村の蛇神は、
そんな僕の思いも知らずに僕をそのまま呑み込んだ。
蛇神の胃の中で死を待ちながら、僕の心は怒りの感情で溢れていた。
そもそも、村人が僕を生け贄になんて選ばなければ、僕はまだ生きていられたんだ。
そうだ、全部、全部、僕を生け贄にしたあいつらが……村の連中が全部悪いんだ。
気がつくと僕はさっきの神殿の床に倒れていた。
今さっきまで蛇神の胃の中だったのに、
蛇らしきものはどこにもいない。
何故だか分からないが、僕の体からは膨大な力を感じる。
もしかして、意図せず蛇神の力を取り込んだのだろうか。
「…………ははっ、やった、これで僕は自由なんだ!!呪ってやる、呪い殺してやる!
僕を殴った村人達も……裏切り者の重治も!
皆、皆、死んでしまえ!」
どうやら本当に僕は蛇神の力を取り込んだようで、雨を止めてしまえば、村人達は次々と餓死していった。
「これは、東雲の祟りだ」
「すぐに怒りを鎮めなければ、この村は滅んでしまう」
やがて人間達は、僕の神社を作り、
雨乞いの神として、崇め奉るようになった。
「だが忘れるな人間。
僕は一度たりとも、お前達人間を許したことはないぞ。」
あの時味わった絶望は絶対に返してやる
「分かったかい?琴音。これが君が知りたがってた真実だよ。」
「これが、この村の真実…」
目の前に現れた唐傘様は、小さい子供に言い聞かせるようかのように私に言葉を投げかけた。
あまりに惨い真実に私の頭は真っ白になった。
少し間を置いて唐傘様は私に尋ねる。
「僕が神となった経緯を見た君に問いたい。
これから君はどちら側につきたいの?」
その問に私はーーー
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