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END①
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「わた、しは…」
先程見た光景が真実なのだとしたら、この人はどれほど辛かっただろう。
親友に裏切られ、人が少ない集落ゆえに仲の良かった村人たちには殴られて。
しかもその親友と言うのが私の祖父だったとは。
「私はどちらにつくのはすぐには決められません。だって…おじいちゃんは昔から優しかったから。」
「ふーん、まあ確かに重治は君には優しかったのかもね。けど僕に残忍なことをした、それは紛れもない事実だよ。」
「そばにいます。」
「…え?」
「私が唐傘様のそばにいます。唐傘様の意見に味方するというのはすぐにできません。ただ…辛いときに一人でいる苦しさを知ってるから。」
そう言った私に唐傘様は明らかに動揺していた。
端正な顔は歪められ、絞り出すような声で言葉を続ける。
「なに、それ。僕のそばにいるってことはもう人間として暮らせないということと同義だ。それでも僕とーー雨神と一緒にいるって言うの??」
「はい、唐笠様がそう望むのならば」
いつまで一緒にいれるか分からない。
私が側にいることで村人への憎しみが
無くなるかどうかも分からない。
でも、私は知ってしまった。
彼がどうして唐笠様になったのか、その全てを。
だからこそ私は唐笠様の…
いや、東雲さんの力になりたい。
「そうか、なら連れていっても良いんだね?」
「連れていく…というのが何処にかは分かりませんが、もう後戻りできないのは覚悟の上です。」
「……。」
「え?あの…?」
突然黙りこくった東雲さんに、
私は何か失礼なことでも言ってしまっただろうかと心配になる。
「はぁあああ。なんでそんなに意志が固いの?死ぬかもしれないんだよ?怖くないの?」
「痛いのは嫌です。殺すなら痛みを感じない殺し方にしてください。」
「いや、そう言うことじゃなくてね??ああ~もう!毒気を抜かれた!完敗だ!…もういいよ、村人達には手を出さない。」
そう言った東雲さんはどこかスッキリとした様子だった。
「その事なんですが、1個質問いいですか?」
雨杜村の資料を見てずっと思っていた。
「なんで唐傘様になってまで村に加護を与え続けていたんですか?だって村人達は憎む対象じゃないですか。」
「それは……。」
「やっぱり、東雲さんは優しいんですよ。」
「僕が?」
「私だったら自分を切り捨てた村なんて神様になったからって護ってやりませんよ!東雲さんは優しすぎます!……だからもう、いいんですよ。」
「え?」
「無理してあの村を護らないでください。村にはおじいちゃんもおばあちゃんもいるけど…それでも、そんな辛い思いをしてまで加護を与えないでいいんです。誰かの犠牲で成り立ってる幸せなんて本当の幸せじゃない。」
「琴音…。」
「私はこんな汚い人間ですよ。……それでも連れて行ってくれる?」
今までの恩を返さず、ましてや祖父母を見捨てるような発言をする最低な人間だ。
東雲さんみたいに心が綺麗じゃない。
「勿論。今まで言わなかったけど一人って寂しいんだよ?琴音が来てくれるなら寂しくないね。」
東雲さんは今まで見たなかで1番の笑顔を浮かべた。
むかあしむかし、たいそう美しい青年がいたんだ
しかしその青年は雨神の贄にされてしまった
その後青年は元いた雨神の変わりに神様になった
憎いだろう村を護り続けた心優しい神様にね
数十年後疲弊しきった神様に1人の女の人が言う
もう、いいんだと
それから神様と女の人は忽然と姿を消した
……その村はどうなったのかって?
勿論滅んださ、神様の加護が得られなくなったからね
昔ながらの木造平屋で縁側に座る男女いた
流れる時はとても穏やかで心地よい
庭の白い花々を眺め、女が問う
「あの花、昔の東雲さんの家にも咲いてたよね?なんて言う花なの?」
その問いに笑みを浮かべながら男が答える
「あれは梔子の花だよ。花言葉はーー」
喜びを運ぶ、とても幸せです
孤独なカミサマはもういない
HappyEND(?) 『穏やかな日々』
先程見た光景が真実なのだとしたら、この人はどれほど辛かっただろう。
親友に裏切られ、人が少ない集落ゆえに仲の良かった村人たちには殴られて。
しかもその親友と言うのが私の祖父だったとは。
「私はどちらにつくのはすぐには決められません。だって…おじいちゃんは昔から優しかったから。」
「ふーん、まあ確かに重治は君には優しかったのかもね。けど僕に残忍なことをした、それは紛れもない事実だよ。」
「そばにいます。」
「…え?」
「私が唐傘様のそばにいます。唐傘様の意見に味方するというのはすぐにできません。ただ…辛いときに一人でいる苦しさを知ってるから。」
そう言った私に唐傘様は明らかに動揺していた。
端正な顔は歪められ、絞り出すような声で言葉を続ける。
「なに、それ。僕のそばにいるってことはもう人間として暮らせないということと同義だ。それでも僕とーー雨神と一緒にいるって言うの??」
「はい、唐笠様がそう望むのならば」
いつまで一緒にいれるか分からない。
私が側にいることで村人への憎しみが
無くなるかどうかも分からない。
でも、私は知ってしまった。
彼がどうして唐笠様になったのか、その全てを。
だからこそ私は唐笠様の…
いや、東雲さんの力になりたい。
「そうか、なら連れていっても良いんだね?」
「連れていく…というのが何処にかは分かりませんが、もう後戻りできないのは覚悟の上です。」
「……。」
「え?あの…?」
突然黙りこくった東雲さんに、
私は何か失礼なことでも言ってしまっただろうかと心配になる。
「はぁあああ。なんでそんなに意志が固いの?死ぬかもしれないんだよ?怖くないの?」
「痛いのは嫌です。殺すなら痛みを感じない殺し方にしてください。」
「いや、そう言うことじゃなくてね??ああ~もう!毒気を抜かれた!完敗だ!…もういいよ、村人達には手を出さない。」
そう言った東雲さんはどこかスッキリとした様子だった。
「その事なんですが、1個質問いいですか?」
雨杜村の資料を見てずっと思っていた。
「なんで唐傘様になってまで村に加護を与え続けていたんですか?だって村人達は憎む対象じゃないですか。」
「それは……。」
「やっぱり、東雲さんは優しいんですよ。」
「僕が?」
「私だったら自分を切り捨てた村なんて神様になったからって護ってやりませんよ!東雲さんは優しすぎます!……だからもう、いいんですよ。」
「え?」
「無理してあの村を護らないでください。村にはおじいちゃんもおばあちゃんもいるけど…それでも、そんな辛い思いをしてまで加護を与えないでいいんです。誰かの犠牲で成り立ってる幸せなんて本当の幸せじゃない。」
「琴音…。」
「私はこんな汚い人間ですよ。……それでも連れて行ってくれる?」
今までの恩を返さず、ましてや祖父母を見捨てるような発言をする最低な人間だ。
東雲さんみたいに心が綺麗じゃない。
「勿論。今まで言わなかったけど一人って寂しいんだよ?琴音が来てくれるなら寂しくないね。」
東雲さんは今まで見たなかで1番の笑顔を浮かべた。
むかあしむかし、たいそう美しい青年がいたんだ
しかしその青年は雨神の贄にされてしまった
その後青年は元いた雨神の変わりに神様になった
憎いだろう村を護り続けた心優しい神様にね
数十年後疲弊しきった神様に1人の女の人が言う
もう、いいんだと
それから神様と女の人は忽然と姿を消した
……その村はどうなったのかって?
勿論滅んださ、神様の加護が得られなくなったからね
昔ながらの木造平屋で縁側に座る男女いた
流れる時はとても穏やかで心地よい
庭の白い花々を眺め、女が問う
「あの花、昔の東雲さんの家にも咲いてたよね?なんて言う花なの?」
その問いに笑みを浮かべながら男が答える
「あれは梔子の花だよ。花言葉はーー」
喜びを運ぶ、とても幸せです
孤独なカミサマはもういない
HappyEND(?) 『穏やかな日々』
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