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第一章 再び、世界へ
遺跡探索、魔王の手先あり
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(結局……一睡もできなかった!リィリス様がまさかあれ程までに勉強できないとは思いもしなかった……そして実習二日目となる今日の内容はよりにもよって二組四名による遺跡探索……私はもう誰かに匙投げしたいです)
ファナスは誰がどう見ても寝不足という顔をしていた。というのも、前日の夜まさかの四時間半にも渡る徹夜勉強で自身に跳ね返ってきた反動から一睡も出来なかったのだ。
激しい頭痛は簡易的に組んだ治癒魔法で抑え込み、目の痛みはブラインと呼ばれる視界不良を起こさせる魔法を反転させることで相殺した。
それが今できる限り最高の応急処置なのだ。
「わぁーい、今日の実習まさかのファナスくん達と一緒だよ!……って、どうしたの彼?」
「えっと……実は……」
「わ、私の事はどうぞお構いなく……」
リィリスがカトレアからの質問に答えようと口を開いた瞬間にそれを遮る形でファナスが自身の健康状態を話した。
「本当に大丈夫なの、ファナス君。もし具合が悪くなったらすぐに言うのよ」
「お気遣いどうも……リコリス様」
「よぉし、皆……頑張ろぉ!」
カトレアに続き、リコリスとリィリスが
「おー」と言ったのを合図に実習の幕が上がった。
―南の洞窟
今回ファナス達が探索を任された場所である南の洞窟は学院の上級生達の間では〈古代の魔王の眠り場〉として語り継がれている事で有名で、下級生の間でもここを任されたファナス達の無事を祈る者がいる程だった。
どういう訳なのかこの洞窟は一面が赤茶色をしており、足元の砂もサラサラとしていた。
更に言うと地下水らしき液体も流れている様子は無かった。
(気のせいだろうか……俺と似たような存在の気配をさっきから異様に感じる。先輩方の話は強ち間違いでは無さそうだ……念の為、何時でも抜剣出来るようにしておくか)
ファナスは少しふらつきながらも三人の後をしっかりと付いて来ているが、三人が喋っているうちに影からこっそり剣を取り出して腰に装備した。
「あれ、何でファナス君腰に剣ぶら下げてるの?この洞窟は魔物が相撲にも住みにくいって先生からの事前情報にもあったでしょ?」
カトレアからの意外すぎる一言にファナスは思わず心臓が跳ね上がるような感覚に襲われた。
「えぇっと……魔物が出ないからと言ってもここは洞窟ですし、何が起こるか分からないじゃないですか」
その後も四人はやけに整備されている道を通りながら目的地である最奥空洞を目指した。
「ねぇ……ファナスくんさっきより顔色悪くない!?」
カトレアは自分の手鏡にファナスの顔を映して彼に見せた。ファナスの顔は青白く、健康には見えない感じだった。
「どうやら無理をし過ぎたみたいですね……!?熱源がこちらに向かってきてます、お嬢様方……伏せてください!」
ファナスの必死な叫びの後、慌ててリィリス達はそれぞれ回避行動を取ったがその直後に最奥空洞の方面から火球が飛んできた。
(やはり……ここはアイツの封印されている場所か!)
ファナスは即座に剣を引き抜き、我先にと駆け出した。
「ちょっとファナス君、無理しちゃだめだよ!」
『へぇ……アタシの事を知ってる人がこんな時代にもいたんだね……しかも懐かしいオーラ全開の奴がお出迎えなんてさ!』
なんと最奥空洞付近で壁をぶち壊して現れたのは女の子の姿をした魔族だった。
しかもファナスが少々弱り気味だったこともあってか、彼の初撃を炎に包んだ腕であっさりと受け止めてしまったのだ。
「ぐっ……まさか、ドグマンティスの手先がこんな所にいたなんてな」
『アタシはあん時ドグマの旦那に頼まれて寝てたのさ……だから色々溜まってるのよ!』
少女の拳からの炎でファナスは大きく吹き飛ばされ、壁に激突してしまった。
「ファナスくん!?……ここはアタシ達に任せて!この間のお返しって意味でもね!」
カトレアは炎でチャクラムの様な輪を作ってクルクル回しながら少女を威嚇した。
『アナタの炎とアタシの炎……どっちがより熱いか、競いましょ!』
「アタシの友達気絶させといてそんな口を叩くなんて……意外と野蛮なのね」
カトレアは炎のチャクラムを少女に向かって何度も飛ばしたが、先程同様炎で包まれた腕で叩き壊されたり握りつぶされ、全て無効化されてしまった。
「そんな……きゃあっ!」
「カトレア……なら、次は私が相手をしましょう!私の剣は彼より早い……かもしれないわよ?」
リコリスはファナスが壁に激突した際に落としてしまった剣のうち、青い方の剣を拾いつつ斬りかかった。
「あっははは……アナタみたいな女がファナスを超えるですって?無理に決まってるわよ!」
リコリスの技を全て見切るように躱した少女は炎を纏った足で彼女を蹴り飛ばして気絶させてしまった。
『後は……アナタだけね。これでアタシのストレスは全発散よ!』
立て続けに仲間を倒され、愕然としていたリィリス目掛けて拳を振り下ろそうとした時、その一撃を何かが相殺した。
「私の……俺の主人に手を出すな!」
なんと気絶していたはずのファナスが偶然目の前に刺さっていた剣を〈不可視の腕〉を介して投げていたのだ。
『さっすがドグマの旦那が認めた男じゃんか……次はどう来るの?』
「この際情け容赦は一切しないっ!全力でお前を倒す!来い、相棒達!」
ファナスの声に応えるように二本の剣が彼の手元に来た。そしてそれを握ると彼は足の力だけで起き上がって再び少女に攻撃を開始した。
しかもその速度は全盛期だった頃の彼とほぼ同等で流れるような一撃を繰り出していた。
『具合悪そうな顔してたくせに……どういうつもりかしら?』
「お嬢様方に手を上げたその罪……死とまでは行かずともそれなりに償ってもらうぞ、カチュアス!」
今のファナスはファナスと言うよりはファフナスに近く、それまでの体調不良は嘘のように消え失せ、完全にカチュアスを圧倒していた。
「魔王の俺がそうも簡単にやられてなるものか……姿が変わろうと、俺は決してそれだけは曲げない!覚えておけ……今の俺の名はファナス、影に生きる剣となる者だ!」
ファナスはかなり激しく肉薄した結果、カチュアスの喉元に剣先を突き出す程に追い込んだ。
『わっ、悪かったわね……今回はこれくらいにしてあげるけど、次は負けないんだからね!』
「何度でも来い……その度に倒してやるから」
ファナスは少し満足げな様子でそう言い残しながら倒れた。
ファナスは誰がどう見ても寝不足という顔をしていた。というのも、前日の夜まさかの四時間半にも渡る徹夜勉強で自身に跳ね返ってきた反動から一睡も出来なかったのだ。
激しい頭痛は簡易的に組んだ治癒魔法で抑え込み、目の痛みはブラインと呼ばれる視界不良を起こさせる魔法を反転させることで相殺した。
それが今できる限り最高の応急処置なのだ。
「わぁーい、今日の実習まさかのファナスくん達と一緒だよ!……って、どうしたの彼?」
「えっと……実は……」
「わ、私の事はどうぞお構いなく……」
リィリスがカトレアからの質問に答えようと口を開いた瞬間にそれを遮る形でファナスが自身の健康状態を話した。
「本当に大丈夫なの、ファナス君。もし具合が悪くなったらすぐに言うのよ」
「お気遣いどうも……リコリス様」
「よぉし、皆……頑張ろぉ!」
カトレアに続き、リコリスとリィリスが
「おー」と言ったのを合図に実習の幕が上がった。
―南の洞窟
今回ファナス達が探索を任された場所である南の洞窟は学院の上級生達の間では〈古代の魔王の眠り場〉として語り継がれている事で有名で、下級生の間でもここを任されたファナス達の無事を祈る者がいる程だった。
どういう訳なのかこの洞窟は一面が赤茶色をしており、足元の砂もサラサラとしていた。
更に言うと地下水らしき液体も流れている様子は無かった。
(気のせいだろうか……俺と似たような存在の気配をさっきから異様に感じる。先輩方の話は強ち間違いでは無さそうだ……念の為、何時でも抜剣出来るようにしておくか)
ファナスは少しふらつきながらも三人の後をしっかりと付いて来ているが、三人が喋っているうちに影からこっそり剣を取り出して腰に装備した。
「あれ、何でファナス君腰に剣ぶら下げてるの?この洞窟は魔物が相撲にも住みにくいって先生からの事前情報にもあったでしょ?」
カトレアからの意外すぎる一言にファナスは思わず心臓が跳ね上がるような感覚に襲われた。
「えぇっと……魔物が出ないからと言ってもここは洞窟ですし、何が起こるか分からないじゃないですか」
その後も四人はやけに整備されている道を通りながら目的地である最奥空洞を目指した。
「ねぇ……ファナスくんさっきより顔色悪くない!?」
カトレアは自分の手鏡にファナスの顔を映して彼に見せた。ファナスの顔は青白く、健康には見えない感じだった。
「どうやら無理をし過ぎたみたいですね……!?熱源がこちらに向かってきてます、お嬢様方……伏せてください!」
ファナスの必死な叫びの後、慌ててリィリス達はそれぞれ回避行動を取ったがその直後に最奥空洞の方面から火球が飛んできた。
(やはり……ここはアイツの封印されている場所か!)
ファナスは即座に剣を引き抜き、我先にと駆け出した。
「ちょっとファナス君、無理しちゃだめだよ!」
『へぇ……アタシの事を知ってる人がこんな時代にもいたんだね……しかも懐かしいオーラ全開の奴がお出迎えなんてさ!』
なんと最奥空洞付近で壁をぶち壊して現れたのは女の子の姿をした魔族だった。
しかもファナスが少々弱り気味だったこともあってか、彼の初撃を炎に包んだ腕であっさりと受け止めてしまったのだ。
「ぐっ……まさか、ドグマンティスの手先がこんな所にいたなんてな」
『アタシはあん時ドグマの旦那に頼まれて寝てたのさ……だから色々溜まってるのよ!』
少女の拳からの炎でファナスは大きく吹き飛ばされ、壁に激突してしまった。
「ファナスくん!?……ここはアタシ達に任せて!この間のお返しって意味でもね!」
カトレアは炎でチャクラムの様な輪を作ってクルクル回しながら少女を威嚇した。
『アナタの炎とアタシの炎……どっちがより熱いか、競いましょ!』
「アタシの友達気絶させといてそんな口を叩くなんて……意外と野蛮なのね」
カトレアは炎のチャクラムを少女に向かって何度も飛ばしたが、先程同様炎で包まれた腕で叩き壊されたり握りつぶされ、全て無効化されてしまった。
「そんな……きゃあっ!」
「カトレア……なら、次は私が相手をしましょう!私の剣は彼より早い……かもしれないわよ?」
リコリスはファナスが壁に激突した際に落としてしまった剣のうち、青い方の剣を拾いつつ斬りかかった。
「あっははは……アナタみたいな女がファナスを超えるですって?無理に決まってるわよ!」
リコリスの技を全て見切るように躱した少女は炎を纏った足で彼女を蹴り飛ばして気絶させてしまった。
『後は……アナタだけね。これでアタシのストレスは全発散よ!』
立て続けに仲間を倒され、愕然としていたリィリス目掛けて拳を振り下ろそうとした時、その一撃を何かが相殺した。
「私の……俺の主人に手を出すな!」
なんと気絶していたはずのファナスが偶然目の前に刺さっていた剣を〈不可視の腕〉を介して投げていたのだ。
『さっすがドグマの旦那が認めた男じゃんか……次はどう来るの?』
「この際情け容赦は一切しないっ!全力でお前を倒す!来い、相棒達!」
ファナスの声に応えるように二本の剣が彼の手元に来た。そしてそれを握ると彼は足の力だけで起き上がって再び少女に攻撃を開始した。
しかもその速度は全盛期だった頃の彼とほぼ同等で流れるような一撃を繰り出していた。
『具合悪そうな顔してたくせに……どういうつもりかしら?』
「お嬢様方に手を上げたその罪……死とまでは行かずともそれなりに償ってもらうぞ、カチュアス!」
今のファナスはファナスと言うよりはファフナスに近く、それまでの体調不良は嘘のように消え失せ、完全にカチュアスを圧倒していた。
「魔王の俺がそうも簡単にやられてなるものか……姿が変わろうと、俺は決してそれだけは曲げない!覚えておけ……今の俺の名はファナス、影に生きる剣となる者だ!」
ファナスはかなり激しく肉薄した結果、カチュアスの喉元に剣先を突き出す程に追い込んだ。
『わっ、悪かったわね……今回はこれくらいにしてあげるけど、次は負けないんだからね!』
「何度でも来い……その度に倒してやるから」
ファナスは少し満足げな様子でそう言い残しながら倒れた。
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