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第16章
羊とチンチラ(2)
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翌日。
様子を見に行くと、菜緒さんの呼吸は昨日より楽そうだった。表情も、少し穏やかに見える。
少し安心して、部屋を出ようとした時、床に置かれていた彼女のバッグに足を引っかけてしまい、中身が散らばった。
「わっ、悪い……」
手に取ったのはタブレット。スリープが解除され、画面が点いた——目に入った画面には、あのチンチラのぬいぐるみが壁紙として映っていた。
リボンがつけられ、可愛くデコレーションされたチンチラ。思わず笑みがこぼれる。
そこへ浮かぶ、通知のポップアップ。
【羊|新着動画を投稿しました】
(——……え?)
そのとき、ベッドの上の菜緒さんが目を覚ました。
「ん……、あれ……、日辻……さん?え?日辻さん?……ここ、どこ……?なんで……?」
混乱して起き上がる菜緒さん。
昨日、倒れてからここに来るまでのことを説明すると、「あれは本当に日辻さんだったんだ…」と呟いた。
と、次の瞬間、俺が彼女のタブレットを手にしてるのを見て、ハッとした。
「あ…、それ……」
「あ、ごめん。カバン、引っかかってぶちまけちゃって」
「…あの…もしかして、通知…見ちゃいました……よね?」
「……見ました」
「見ちゃいましたかぁ……」
二つ折りになって布団に顔をうずめた彼女は首まで真っ赤になっている。
そのとき、ふっと思い出した。
——動物園のとき、チンチラを見て、彼女はなんて言った?
「『話には聞いてたけど』、ほんと、可愛い」
そう、確かにそう言った。
……“誰”の話だ?
チンチラの話を、誰から聞いてたって?
そのときは深く考えなかった。けど、今ならわかる。
羊、だ。
配信で話した記憶がある。
「チンチラって、めっちゃくちゃ可愛いんすよ!」
そう言った俺の言葉を、彼女は聞いていた。
リスナーとして、あの時すでに。
あの頃から、彼女は俺の声を、受け取ってくれていたんだ。
ずっと前から届いてたんだ。
言葉も、声も、感情も。
俺が誰かに届けようとしていたものが。
誰よりも彼女に届いていた。
胸の奥がじわっと熱くなった。何かがそっとほどけるような、そんな感覚だった。
様子を見に行くと、菜緒さんの呼吸は昨日より楽そうだった。表情も、少し穏やかに見える。
少し安心して、部屋を出ようとした時、床に置かれていた彼女のバッグに足を引っかけてしまい、中身が散らばった。
「わっ、悪い……」
手に取ったのはタブレット。スリープが解除され、画面が点いた——目に入った画面には、あのチンチラのぬいぐるみが壁紙として映っていた。
リボンがつけられ、可愛くデコレーションされたチンチラ。思わず笑みがこぼれる。
そこへ浮かぶ、通知のポップアップ。
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(——……え?)
そのとき、ベッドの上の菜緒さんが目を覚ました。
「ん……、あれ……、日辻……さん?え?日辻さん?……ここ、どこ……?なんで……?」
混乱して起き上がる菜緒さん。
昨日、倒れてからここに来るまでのことを説明すると、「あれは本当に日辻さんだったんだ…」と呟いた。
と、次の瞬間、俺が彼女のタブレットを手にしてるのを見て、ハッとした。
「あ…、それ……」
「あ、ごめん。カバン、引っかかってぶちまけちゃって」
「…あの…もしかして、通知…見ちゃいました……よね?」
「……見ました」
「見ちゃいましたかぁ……」
二つ折りになって布団に顔をうずめた彼女は首まで真っ赤になっている。
そのとき、ふっと思い出した。
——動物園のとき、チンチラを見て、彼女はなんて言った?
「『話には聞いてたけど』、ほんと、可愛い」
そう、確かにそう言った。
……“誰”の話だ?
チンチラの話を、誰から聞いてたって?
そのときは深く考えなかった。けど、今ならわかる。
羊、だ。
配信で話した記憶がある。
「チンチラって、めっちゃくちゃ可愛いんすよ!」
そう言った俺の言葉を、彼女は聞いていた。
リスナーとして、あの時すでに。
あの頃から、彼女は俺の声を、受け取ってくれていたんだ。
ずっと前から届いてたんだ。
言葉も、声も、感情も。
俺が誰かに届けようとしていたものが。
誰よりも彼女に届いていた。
胸の奥がじわっと熱くなった。何かがそっとほどけるような、そんな感覚だった。
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