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4 もう遅い
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ローゼはすらりと剣を抜く。
「構えなさい、竜の契約者」
「……邪魔するなら死んでもらうわよ」
令嬢の手に、どこからともなく剣が現れた。抜き身の刃が陽光を反射し、ぎらりと輝く。
「私は、秘石を手に入れるの。フレッド様を殺して、秘石を手に入れて、竜に渡して自由になるの!」
言葉と共に振るわれた剣から、力が迸った。契約で得た力。自然を支配する竜の力。
それは地を奔る雷となって、ローゼに届かんとする。
だが。
ズドォッ
突如、大地が隆起して、雷を霧散させた。
「魔法⁉ それならっ」
令嬢は更に力を振るう。巻き起こる暴風、叩きつける豪雨。それらでローゼを翻弄しつつ、手に持つ剣で斬りかかる。
ローゼは、優雅に微笑んだ。
「その程度ですか?」
「……⁉」
何故そんなに余裕ある顔をしているのか、令嬢には分からなかった。分からなかったが、剣を振り続けた。
契約のおかげで常人離れした身体能力を得ている。力任せに斬りつけるだけでも充分なはずだ。
だというのに。
ローゼには傷一つついていない。風雨などものともせず、ふわりと刃を翻し、振り下ろされた剣を受け流している。
「——貴女の契約、砕かせていただきます」
告げられた言葉に、令嬢は凍り付いた。
聞いたことがある。竜の契約者を狩る一族。秘石の力を引き出し、秘石の力で契約を砕くことが出来るという、特殊な一族。
「まさか、あなたが……!」
気付いた時にはもう遅い。音も立てずに剣が砕け、令嬢は膝をついた。
「……体に力が入らないわ……どうしてくれるのよ……」
「少し休めば立てるようになりますよ。今まで契約を砕いた人もそうでしたから」
「ふーん……」
令嬢は何とも言えない表情で、視線をあらぬ方へ向けた。
フレッドは後悔していた。ローゼの強さに怯えていたことを。ローゼとの婚約を破棄したことを。
「ローゼ、もう一度婚約しよう。これからも僕を守ってくれ」
自然と口をついて出た言葉はしかし、ローゼの顔を不快そうに歪ませるだけだった。
「お断りいたします。竜の契約者を退けた後、わたくしは故郷に帰ることになっておりますので」
「何故だ⁉ 僕はこれからも竜に狙われ」
「そうですね。だから、貴方はもう二度と王都から出られません」
「なっ、そんな馬鹿な話が」
「陛下は呆れておられました。貴方にはもう誰とも婚約させないそうです」
「⁉ 僕に、一生独り身で、狭い王都の中だけで暮らせと言うのか⁉」
「ええ、そうです。それが、わたくしとの婚約を一方的に身勝手に破棄した貴方への罰です」
「馬鹿な……馬鹿な……!」
二の句の告げないフレッドに、ローゼは微笑んで言い放った。
「後悔してももう遅い!」
「……!」
絶句するフレッドに背を向け、ローゼは歩き出す。王都の隣にある、故郷の村へと。
「構えなさい、竜の契約者」
「……邪魔するなら死んでもらうわよ」
令嬢の手に、どこからともなく剣が現れた。抜き身の刃が陽光を反射し、ぎらりと輝く。
「私は、秘石を手に入れるの。フレッド様を殺して、秘石を手に入れて、竜に渡して自由になるの!」
言葉と共に振るわれた剣から、力が迸った。契約で得た力。自然を支配する竜の力。
それは地を奔る雷となって、ローゼに届かんとする。
だが。
ズドォッ
突如、大地が隆起して、雷を霧散させた。
「魔法⁉ それならっ」
令嬢は更に力を振るう。巻き起こる暴風、叩きつける豪雨。それらでローゼを翻弄しつつ、手に持つ剣で斬りかかる。
ローゼは、優雅に微笑んだ。
「その程度ですか?」
「……⁉」
何故そんなに余裕ある顔をしているのか、令嬢には分からなかった。分からなかったが、剣を振り続けた。
契約のおかげで常人離れした身体能力を得ている。力任せに斬りつけるだけでも充分なはずだ。
だというのに。
ローゼには傷一つついていない。風雨などものともせず、ふわりと刃を翻し、振り下ろされた剣を受け流している。
「——貴女の契約、砕かせていただきます」
告げられた言葉に、令嬢は凍り付いた。
聞いたことがある。竜の契約者を狩る一族。秘石の力を引き出し、秘石の力で契約を砕くことが出来るという、特殊な一族。
「まさか、あなたが……!」
気付いた時にはもう遅い。音も立てずに剣が砕け、令嬢は膝をついた。
「……体に力が入らないわ……どうしてくれるのよ……」
「少し休めば立てるようになりますよ。今まで契約を砕いた人もそうでしたから」
「ふーん……」
令嬢は何とも言えない表情で、視線をあらぬ方へ向けた。
フレッドは後悔していた。ローゼの強さに怯えていたことを。ローゼとの婚約を破棄したことを。
「ローゼ、もう一度婚約しよう。これからも僕を守ってくれ」
自然と口をついて出た言葉はしかし、ローゼの顔を不快そうに歪ませるだけだった。
「お断りいたします。竜の契約者を退けた後、わたくしは故郷に帰ることになっておりますので」
「何故だ⁉ 僕はこれからも竜に狙われ」
「そうですね。だから、貴方はもう二度と王都から出られません」
「なっ、そんな馬鹿な話が」
「陛下は呆れておられました。貴方にはもう誰とも婚約させないそうです」
「⁉ 僕に、一生独り身で、狭い王都の中だけで暮らせと言うのか⁉」
「ええ、そうです。それが、わたくしとの婚約を一方的に身勝手に破棄した貴方への罰です」
「馬鹿な……馬鹿な……!」
二の句の告げないフレッドに、ローゼは微笑んで言い放った。
「後悔してももう遅い!」
「……!」
絶句するフレッドに背を向け、ローゼは歩き出す。王都の隣にある、故郷の村へと。
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