何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照

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5 自業自得

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 どうなっても自業自得だ。
 話に耳を貸さずにあの屋敷で〈異端〉と共に暮らすことを選んだ妹に対してそう思いながら、ロメリアは実家に帰った。

「いったいどうなってるんだ!」

 ストロの声が、晴れ渡った空の下に響く。
 帰るや否や聞こえたそれに、ロメリアは驚きながら
「ただいま帰りました」
 と言ってみた。
 玄関前で困ったように顔を見合わせていた両親が、ハッとしたようにこちらを向く。
「ロメリア! ああ良かった、どこにいったのかと」
「アリアがどこかへ行ってしまったらしくて、途方に暮れていたのよ」
 父と母どちらの声音にも、心配していた様子は感じられない。アリアさえいてくれれば良かったのに、いなくなったから、ロメリアが必要になった——ただそれだけのようだ。
(まあ、そうよね)
 諦めたように溜息を吐いていると、ストロが声を荒らげた。
「俺を無視するな!」
 ロメリアは仕方なく彼に向き合う。
「どうかしましたか、ストロ様」
「アリアのやつ、一方的に婚約破棄を告げて行方をくらませやがった!」
「そうですか」
「それだけならまだ、……いや、それも許せないが、それよりも! あいつ、俺の魔力を奪いやがった!」
 怒りで手を震わせながら、ストロはそう主張した。ロメリアは鼻で笑ってみせる。
「何を馬鹿なことを」
「なっ、」
「と、貴方は言いましたよね、私がアリアに魔力を奪われたと言った時に」
「……っ!」
 ようやく自分の行いを思い出したのか、ストロは息を呑み、頭を下げた。
「すまなかった! そうだった、お前はそう言っていた。俺は話を聞こうともせず……!」
「分かってもらえたようで何よりです」
「そうだ、もう一度婚約しよう。婚約破棄された者同士、きっとうまくやっていける」
 その申し出に対し「嫌です」とロメリアは言おうとした。しかし、その前に父が口を挟んだ。
「駄目だ。魔力の無いストロ殿を跡取りとしてもらう訳にはいかない」
「そんな……! 俺は、二度も婚約が駄目になったんだぞ! 信用問題が……!」

 涙目になりながら、男爵ではなくロメリアに縋りつくストロ。
「しかも、魔法が使えなくなったんだぞ。俺はこれから、お前のように貴族社会で馬鹿にされ続ける羽目になるんだぞ。可哀そうだとは思わないのか⁉」
 などとグダグダ言い続けている。
 ロメリアはにっこり笑って
「自業自得です」
 とだけ告げた。



 その頃、瞬く間に〈異端〉との親交を深めたアリアは、彼の裸上半身を見て目を丸くしていた。
 彼の肌には鱗があった。肘から肩にかけてと背中が、鱗に覆われていた。
「気持ち悪っ」
 アリアが思わず呟いた時、空気が変わった。優しげだった〈異端〉から、莫大な殺気が放たれたのだ。
 殺気と共に、この世のものとは思えないような謎の力が炸裂する。部屋を埋め尽くさんばかりのそれを、アリアは魔法で防御した。
「あなた本当に殺人鬼だったのね。お姉さまの言った通りだったなんて……癪だわ」
 お返しとばかりに〈異端〉めがけて全力で魔法を放った。光線が彼の腹を貫き、大穴を開ける。彼を殺して逃げるつもりだった。
 しかし、〈異端〉は不死身である。すぐに穴が塞がっていき、再びアリアへの攻撃が始まった。
 アリアは応戦しながら走る。屋敷から出るために、ひたすら走る。迫りくる得体の知れない攻撃を、弾き、防御し、撃ち落とし、相殺しながら、走る。
    普通ならとっくに殺されているところだが、アリアは貴族3人分の魔力を持っている上、魔法に長けているおかげで対抗できていた。

 そうしてアリアは、命からがら屋敷の外に出た。屋敷から大きく距離を取って振り返ると、〈異端〉は扉から何歩か進んだ辺りで立ち止まっている。
    彼は凄まじい形相で、今もなお攻撃を続けていた。しかしその攻撃は、彼の正面で全て消えてしまう。
「良かった、あれ以上は出てこられないのね」
 アリアは呟きながら、そそくさと退散した。



 
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