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6 駅の待合室で顔を合わせる

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家から外に出てみると今日はいつもより一層凄く暑い日だと感じた。
集落周辺の田圃や点在する家の瓦は直上から降り注ぐ強い陽射しに照らされ灼かれていた。
僕の住んでいる上滝村は瀬戸内地方にある県の北部にある人口1000人にも満たない小さな村落だ。
村の周囲には標高4、500メートルから1000メートル弱の山々が遠近に連なっている。
僕は自転車に乗って家を出ると村を東西に流れる上滝川に沿って延びている県道まで出て来ると、村からは東に5キロ程離れている隣町の駅に向かって自転車を走らせた。
県道のすぐそばを上滝川が流れ人家が点在している他は、周囲には水田が広がりその向こうには低い山々が続いているだけで走る車や人の姿は殆ど無く蝉の声だけが一帯を覆っている。
何も遮る物の無いアスファルトの上で強い陽射しを直接全身に受けながらペダルを踏んでいると直ぐに汗が吹き出して来た。
炎天下の中を汗だくになりながらペダルを漕いでいる内に、やがて村よりは家々が密集している隣の町の中心部が前方に見えて来る。
やがて町の中に入り町役場やスーパーを通り過ぎ駅まで辿り着いた。
小さな駅舎の横にある駐輪場に自転車を停めた所でやっとの事で一息つく事が出来て、僕は大きく息を吐く。
今は無人駅となっている古い木造駅舎の中に入ってみると待合室のベンチの端に同級生の三好龍雄が一人で座っていた。
思わぬ時に思わぬ場所で思わぬ人物に出食わしたのは意外だった。

「おお圭介」

身長178センチでガッシリとした体格、中学生としては大柄な龍雄がそう言って僕に向かって手を挙げた。

「おお」

身長164センチで痩せた僕が手を挙げて応え、龍雄が座っている反対側のベンチの端に腰を降ろした。
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