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10 夢の中で出会った彼女に再会する

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気が付くと、僕は再び簡素で小さな部屋の中で自らの事を(様々な呼び方で呼ばれている存在)と言う年上の美しい女性と向かい合って座っていた。

僕は自分が彼女と再びこの部屋にいる事に気付いた時、何だか少し懐かしさを感じた。

「ワタシの持っている力というのはアナタが思っている程、そんなに強いモノではないのよ」

突然何の前置きもなく、彼女は僕に向かって口を開いた。

「ワタシはアナタ達の世界の将来を少しでもより良く変えていきたいとは思っている。
だけどワタシの持っている力というのは、アナタが思っているよりも、とても小さくとても限られたモノなの」

彼女はそう言った後、その澄みきった湖面の様な瞳で僕の表情を覗き込んだ。

彼女の瞳に見つめられると一瞬息が止まりそうになる。

気のせいかもしれないけれど、今僕の目の前に向かい合っている年上の美しい女性からは今朝の明け方の夢の中で初めて会った時みたいな僕に対しての刺々しさや他所々しさが感じられなかった。

そのお陰で僕は朝の夢の時よりは幾らかはリラックス出来て、それから少しだけ幸福な気分になれた。

「ワタシの力ではどうにも出来ない事もある。
例えばアナタがよく知っている三好龍雄という少年」

僕は彼女の口から、いきなり龍夫の名前が出て来た事に少し驚いた。
だけど次に彼女が言ったセリフは更に衝撃的だった。

「彼は将来、アナタが暮らしている、この国の闇の世界、つまり(裏社会)の頂点に立つ人物になるわ」

目の前に座った美し過ぎる女の人はそう言って、小さく溜め息を吐いた。

彼女と向かい合って座っている僕は彼女の想定外過ぎるセリフに言葉を失った。
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