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21 岬の砦の隊長との問答

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「(わからない)と言うのはどういう意味なのだろうか?君達は自分達でも知らない内にいつの間にかこの場所に来てしまっていたと言う事なのか?」

本来なら僕らにはわかる筈の無い言葉でジェム隊長が言った。

「そうです」

僕が答えると、隣で龍雄も大きく頷いた。
僕の答えを聞くとジェム隊長は眉を寄せしばらくの間考え込んだ。

「それでは君達は此処にやって来る前は一体何処にいたのか?
見たところ、君達は随分変わった格好をしているし、このサリ・ラーナ・チム(小月島)や向かいのトンムラーナ・チム(大月島)に住んでいる我々とは雰囲気が少し違っている様に見える。
ひょっとして君達は(大きな陸地)からやって来た者達のか?」

Tシャツとジーパン姿の僕と龍雄を珍しそう目付でまじまじと見ながらジェム隊長は言った。

僕は彼の言葉を聞いて、僕らが今いるこの小さな島が小月島と呼ばれ、向かいに見えている大きな島が大月島と呼ばれている事を知った。
だけど(大きな陸地)と言うのは一体何処を?どんな所を指して言っているのだろう?
此処が何処なのかすらわからない以上、サッパリ見当がつかない。
僕は龍雄を見たけど、龍雄はただ何が何だかサッパリわからないという顔をしているだけだ。
どうやらこの場は僕が受け答えするしか無さそうだ。

「そうです。僕らは此処に来る迄はずっと(大きな陸地)にいました」

半ば開き直って僕は答えた。
僕には彼の言う(大きな陸地)の事はよくわからなかったけれど、まあ実際僕らがいた日本の本州は、この小月島や向かいに見える大月島よりは遥かに(大きな陸地)ではある。
僕の答えを聞いた、ジェム隊長は少し驚いた様子だった。
彼の背後にいる3人の中からも小さな声が挙がった。

「私は今まで一度も(大きな陸地の人)というのを実際にこの目で見た事は無い。
かつて、とてつもなく大きな陸地から、とても大きな船に乗ってトンム・ラーナ・チム(大月島)にやって来た人々がいたという話は聞いた事があるが、それは我々が生まれるよりもずっと昔の事だという」

ジェム隊長は言った。
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