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24 岬の砦に入る

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僕ら一行は坂を登りきって、黒地に白抜きの三日月の旗が翻っている砦の門迄辿り着いた。
先頭を行く騎上のジェム隊長が頑丈な木で作られた門の両脇で直立の姿勢を取っている槍を持った兵士に労いの声を掛けて中に入って行くと、彼に従う3人の騎兵と共に僕らも。続いて門内に入った。
周囲を2メートル程の高さの木柵で取り囲んだ砦内は僕と龍雄がかつて通っていた村の小学校の運動場位の広さだった。
砦の中心付近には合わせて10戸程の丸太小屋と幾つかの馬小屋の様な建物が左右に立ち並び、その周辺でジェム隊長達と同じ様な身なりの男達が何人か日陰で涼みながら談笑していたり、彼等の乗る動物の世話をしていたりした。
ジェム隊長を先頭にした僕らの一行がその中を進んで行くと、彼等はジェム隊長に向かって直立の姿勢をとり隊長はその一人一人に労いの声を掛けながら前に進んだ。
ジェム隊長の後ろに続いて歩くTシャツとジーパン姿の僕と龍雄が通り過ぎて行くと僕ら2人は彼等の強い好奇の眼差しに晒された。
砦の奥に進んで行くに連れて、木柵越しの向こう側に見え始めた景色に、僕は(恐らく龍雄も)思わず息を飲んだ。
丸太を組み合わせた柵の向こう側には僕らが始めにいた浜からは見る事が出来なかった小月島の全景が広がっているのが柵の間に見えたからだ。
ジェム隊長は僕と龍雄を木柵越しにではあるが島の全景が見渡せる場所迄連れて行き僕らに島の景色をじっくり眺めさせてくれた。
僕と龍雄は柵の間から覗き込む様にして島の全景を眺めた。
南の沖に大きく視界を圧する様に立ち塞がる大月島よりはかなり小さいかもしれないが小月島は僕らが思っていたよりは、遥かに大きな島だった。
陽光を受けた青く穏やかな海を取り囲む様に島の海岸線は大きく湾曲して続き、ずっと遠くに見える島の端迄はここからだと20キロか30キロ位はある様に思えた。
島の内陸部にはそれほど標高の高くなさそうな山々がずっと島の端の方まで続いていたが、海岸部の所々には集落や町らしきものが小さくではあるけれど見えた。
ジェム隊長は大月島は満月の形をした大きな島で
小月島は三日月の形をした小さな島だと言っていたし、砦の所々には白い三日月を象った黒い旗が翻っている。
だから今僕らがいる小月島は弓なりの細長い形をしているのだろう。
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