STAY GOLD(黄金旅程)/その他の短編

河内ひつじ

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STAY GOLD(黄金旅程)

STAY GOLD(黄金旅程) 3

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向かい側のホームの方にある駅舎の方を見ると脇の花壇に植えられたツツジの薄紅色の花びらが強い陽射しに照らされているのが見えた。

「仁クンはこのレース、どの馬が来ると思う?」

プラットホームのベンチで僕の隣に座っている杏子センパイがスポーツ新聞の競馬欄を怖い形相で睨みながら聞いて来た。

今日、これから生まれて初めて競馬に行くと言う僕らだったがセンパイの耳には既に赤ペンが挟まれている。

新聞の出馬表の辺りには玄人のオッサンかと思える程にびっしりと〇X印や数字やらが書き込まれていた。

(そんなに気負い込んだ格好で電車に乗るつもりなのか?」

僕は内心そう思ったが口には出さなかった。

「はっきり言ってあまりよくわからなかったですが一応買う馬は決めてあります」

僕は答えた 

「へえ、それじゃあ仁センセイの春の天皇賞予想と言うのを聞かせて貰えるかしら?」

少し興味深そうな表情を浮かべてセンパイが言った。

「7番、8番、12番、14番の馬番連勝ボックス買い各300円」

僕は答えた。

4枠7番  フェノーメノ    (4番人気 単勝1.5倍)

同枠8番  ゴールドシップ   (2番人気 単勝4.3倍)

6枠12番 ウィンバリアシオン (3番人気 単勝6.5倍)

7枠14番 キズナ       (1番人気 単勝1.7倍)

昨日の晩、一応出馬表に出ているデータを見たりしながら初めての競馬予想をしてみたけれど、新聞やネットでも(4強対決)というのを多く目にしたし、結局の所1着2着の組み合わせはこの4頭の内の2頭だろうと言う結論しか出て来なかった。

やや圧倒的な人気を集めている去年の日本ダービー優勝馬キズナは目下国内重賞レース4連勝中だったけど、2400m以上の距離を走るのは今回の春天皇賞が初めてというのが気になった。

2番人気のゴールドシップは前走の阪神大賞典(G2・芝3000m)で2着の馬に3馬身半の差を付けて完勝していたけれども近走の成績を見てみるとどうも調子にムラがある様だった。

(シルバーコレクター)の異名を持つウィンバリアシオンは過去にG1レースでの3回を含めて重賞レースで2着に入った事が5度もあって侮れないし、フェノーメノは昨年のこの春天皇賞の優勝馬で今年は連覇を狙っている。

「ふうん、まあ初めてにしては無難な予想だわね」

杏子センパイはそう言って薄笑いを浮かべた。

「杏子センパイは何を買うんですか?」

僕がそう聞くと杏子センパイの目が輝いた。

「ワタシは今回は(黄金の船)に乗ってみようかななんて思ってるんだけどね」

杏子センパイはそう言って僕にメモを手渡した。

「馬番単式8ー12、14各300円
8ー2、3、7、18各100円

3連単、1着8ー2着12、14ー3着2、3、7、12、14、18
全10通り各100円」

僕とセンパイは昨日電話で馬券の購入額を2000円以内にすると決めていた。

「人生でも競馬でも常に勝ちに行くのがワタシ流なんだよ!」

メモを眺めている僕に向かってセンパイはきっぱりとそう言い放った。

杏子センパイが買おうとしている馬券はどちらも単式馬券なので的中するには8番ゴールドシップが1着になる事が条件になる。

「ゴールドシップ本命で勝負するつもりなんですね」

僕はそう言ってセンパイにメモを返した。

「だって今はゴールデンウィーク中だもん」

センパイは言った。

そんな事を言っている内に、真っ直ぐに伸びている線路のずっと先の方から特急列車が近付いて来るのが見えた。

東京ー銚子間を走る特急しおさいは昼間のしおさい5号(下り)としおさい10号(上り)に限って成東ー銚子間では各駅に停車する。

特急しおさい10号がホームに到着して列車のドアが開くと僕とセンパイは列車に乗り込んだ。
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