STAY GOLD(黄金旅程)/その他の短編

河内ひつじ

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STAY GOLD(黄金旅程)

STAY GOLD(黄金旅程) 6

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時刻はまだ15時になって無くて僕らの買った天皇賞の発送時刻である15時40分迄にはまだかなり時間があった。

時間が来るまで特に何処に行くという宛も無かったけれどもとりあえず僕は杏子センパイと交差点を渡って楽天地ビルの方に歩いて行った。

陽射しは少し強かったけど外出日和な光り輝く天気の連休中の日曜日の午後、雑踏の中を行き交う多くの人々はいつもより幸福そうに見えた。

人混みの中で幸せ一杯といった感じの若いカップルが手を繋いで歩いているのが目に入って、僕は思いがけず倉橋由美子の事を思い浮かべてしまう。

今目にしている光景の中を彼女と2人きりで歩いている場面を想像してみる。

遠からずそんな場面が実現出来たりするのだろうか?

今のところはまだ何とも言えない。

心の中に焦る気持ちはあるけれども何事にも時期というものがある気がする。

だけどその時期の到来を感じた時、僕はそれをちゃんと上手く捉える事が出来るのだろうか?

いろんな事が頭の中を目まぐるしく駆け巡る。

「ちょっと仁クン」

そう呼びかけられて我に返り隣を見るとセンパイは意味ありげな笑みを浮かべて僕を見ていた。

「どうした?急に真剣な顔なんかしちゃってさ」

見透かした様にニヤニヤしている。

「別に。特に何も考えてないですよ」

そう言って僕はわざとらしいけど作り笑いを浮かべた。

ここに来るまでの特急電車の中で(何時までもぐずぐずしてない方がいい)とセンパイは言った。

僕もその通りだとは思っている。

楽天地ビルの辺りをブラブラしている内に15時を過ぎたので僕とセンパイはレース中継を見る為に再びWINSの方に歩いて行った。

僕らはWINS入口の前まで来たけれど発送時刻ギリギリの時刻になるまでは何と無く中に入り辛かった。

それで時間を少し潰す為に周辺をうろついていると途中に(レース放映中)の看板が出ている喫茶店を見つけたので結局僕ら2人はその店でレースを観る事にした。

店の中に入り運良く丁度空いていたテーブルに向かい合って座ると既にテレビでは騎手を背にした出走馬達が係員に手綱を曳かれパドックから地下道を通って本馬場に向かっている場面が映しだされていた。

本馬場に入った出走馬が次々に京都競馬場のコースで返し馬に入ると実況アナウンサーが出走馬と騎手を馬番順に紹介していった。

出走馬の中で只一頭、白に近い葦毛の馬体の8番ゴールドシップがテレビ画面にアップになると杏子センパイの目の色が変わった。

「お願い!ゴールドシップちゃん頑張って!」

センパイはそう言ってテレビに向かって手を合わせた。

僕も生まれて初めて買った馬券を手にしながらレース開始が近付いて来るにつれ少しずつ緊張感が高まって来るのを感じた。
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