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ANAペラ全機墜落物語
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"ANAペラ"。 それはANA(全日本空輸)が採用するプロペラ機 "De Havilland Canada Dash 8-Q400" に与えられた蔑称。 ANAペラが垂れ流す不快騒音に対する憎しみと蔑みが込められる蔑称だ。
「クソANAペラめ。 3匹も連続で来やがった! 絶対に許せん。 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねクソANA。 死ねいっ! 伊丹空港もとっとと廃港しろ。 嫌悪施設め」
空野太郎がANAへの呪詛を吐き散らすのは、この日だけでもう3度目。 ANAペラが大量に来るから無理もない。 彼が住む尼崎市とかいうクソな市の西部は、伊丹空港(大阪国際空港)から離陸する飛行機の航路に設定されている。 在宅で仕事する太郎には、クソANAペラの騒音が最大の悩みのタネだった。
◇
伊丹空港からはジェット機も離陸する。 でも太郎が憎んで止まないのはプロペラ機。 プロペラ機の騒音はジェット機と音量は変わらぬが桁違いに不快。 プロペラ機の騒音は、神経を逆撫でし憎しみを掻き立てる。 騒音被害の程度を音量だけで語ってはならぬ好例だ。
プロペラ機の中でもクソANAペラは騒音が最悪。 JALのプロペラ機に比べて音が大きい。 そんな最低最悪のクソANAペラが、伊丹空港から毎日40匹近くも離陸する。 毎日毎日離陸する、年末年始も離陸する。
太郎はANAペラ騒音が特にひどい(1時間に6匹も飛来する)午前中に耳栓をして眠るようにしているが、ANAペラ騒音は実は午後も相当にひどい。 だから、生活リズムをどう変更しようと、太郎はクソANA騒音に苦しめられる。
◇
太郎は嘆く。
「クソANAペラの騒音はこんなにムカつくのに、どうして世間は問題視しないのだろう?」
"クソANAペラ騒音 ムカつく" というキーワードで検索してもANAを恨む声は見つからず、Twitter でクソANAペラ騒音を批判するアカウントを作ってもフォロヤーが集まらない。 クソANAペラ騒音を憎む人口が足りないのだ。
理由は2つ考えられる:
1. クソANAペラは東京の空港を利用しない ・・・ クソANAペラが訪れるのは伊丹空港のほか九州・四国・東北の空港のみ。 だから1千万の人口を擁する東京で、ANAペラを憎む潜在的な同志が発掘されず埋没している。
2. 多くの人の騒音に対する感受性が未発達 ・・・ 未熟で野蛮な耳では、ANAペラ騒音の不快さを十分に認識できない。 ANAペラ騒音を理解し憎めるのは、騒音感受性に優れる一部のエリートに限られる。
「ちくしょう、エリートになんか生まれなきゃ良かった!」
◇❖◇❖◇
その日の夜、20時台に2匹めのANAペラが来た。
「もう許せん。 クソANAめ、クソ伊丹空港め!」
20時台のANAペラは、いつもなら1匹だけ。 その1匹が来て "ANAペラ騒音の時間帯がようやく終わった" と安堵したタイミングでクソANAペラがもう1匹来たので、太郎はひとたまりもなくムカつかされた。
「もう我慢ならん。 クソANAとクソ伊丹空港の破滅を引き寄せてやる」
太郎が言う "引き寄せ" とは「引き寄せの法則」のこと。 "思考は現実化する" を合言葉とするオカルト思想だ。 その効果は何でもアリ。 何でもかなう。 例えば、宝クジに当たる、髪の毛がフサフサになる、憧れの異性と結ばれるなど。 "引き寄せ" の原理を "潜在意識の働き" などと説明する者もいるが、それでは説明できない現象も起こるという。 太郎は最近、この "引き寄せ" を Youtube動画で知り、ちょくちょく実践していた。
◇❖◇❖◇
"引き寄せ" のコツは、"願う" のではなく "実現したとイメージする" こと。 また、"引き寄せ" には瞑想が有効とされる。 "引き寄せ" の原理が潜在意識であれパラレルワールドであれ超能力であれ、瞑想で変性意識状態に突入するのが有効だと考えられる。
◇
そこで太郎は、まず瞑想を行う。 座禅を組み、自我を頭の中から追い払う。 自我を追い払うには、"自分の思考を観察" しても良いが、太郎は "脳を休める" 技法を用いる。 絶え間なく活動する脳をいたわり休めるのをイメージする。
◇
瞑想でいい感じになったところで、いよいよ太郎はANAと伊丹空港の滅亡をイメージする。
"引き寄せ" でイメージするときのコツは、なるべく具体的に、周辺の事柄までイメージすること。 太郎はイメージした。 日本中を ブオーンブオーン とうるさく飛び回るクソ迷惑なクソANAペラ数十匹のことごとくがクソ墜落する場面を、墜落事故によりクソANAのクソ株価がクソ急落しクソANAがド倒産するニュースが流れる場面を、そしてクソ伊丹空港が廃港になり跡地が森になっている場面を。
"引き寄せ" を行う時のもう1つのコツは、"今"。 漠然と "いつか起こるだろう" とか "引き寄せには時間がかかるものだ" などと考えていては、願望はいつまで経っても実現しない。 "いつか起こる" ことを望んでしまっているから。 だから望むのは "今" だ。
変性意識状態のなか、太郎は念じる。
「すぐ死ねクソANA、クソ伊丹空港! たった今だ! いつかじゃなく今! 今、今、今、今、今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今! いい加減に死ね!!」
◇❖◇❖◇
翌日、昼過ぎに起きてコーヒーを飲みながらネットでニュースを見ていた太郎の目に、ショッキングなニュースが飛び込んで来た。 日本中のANAペラが一斉に全機墜落したというのだ。 小学校の上に、中学校の上に、病院の上に、国道の上に、民家の上に!
多数の小学生と中学生が亡くなり、交通網は寸断。 クソANAはマスコミに糾弾されまくり、ANAは国民から総スカンを食らった。 当然、ANAの株価は急落しANAは倒産。 それに伴い伊丹空港の廃港が決定された。 伊丹空港を利用する迷惑飛行機の8割がANAなので、ANAが倒産した今、伊丹空港も用済みなのだ!
太郎は快哉を叫んだ。
「やったぞ! ザマアみやがれクソANA! 天罰だ!」
実際、天罰としか思えない。 ANAペラ一斉墜落の原因は不明なのだ。 不快極まりないムカつくANAペラ騒音に神がムカついてクソANAに天罰を下したとしか思えない。
「これで仕事に集中できるぜ!」
クソANAペラ騒音がなくなり伊丹空港も廃港され、太郎の生産性は格段にアップした。 それに伴い日本の景気も右肩上がり。 日本は世界一の経済大国に返り咲き、少子化問題も解決されました。 めでたしめでたし。
「クソANAペラめ。 3匹も連続で来やがった! 絶対に許せん。 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねクソANA。 死ねいっ! 伊丹空港もとっとと廃港しろ。 嫌悪施設め」
空野太郎がANAへの呪詛を吐き散らすのは、この日だけでもう3度目。 ANAペラが大量に来るから無理もない。 彼が住む尼崎市とかいうクソな市の西部は、伊丹空港(大阪国際空港)から離陸する飛行機の航路に設定されている。 在宅で仕事する太郎には、クソANAペラの騒音が最大の悩みのタネだった。
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伊丹空港からはジェット機も離陸する。 でも太郎が憎んで止まないのはプロペラ機。 プロペラ機の騒音はジェット機と音量は変わらぬが桁違いに不快。 プロペラ機の騒音は、神経を逆撫でし憎しみを掻き立てる。 騒音被害の程度を音量だけで語ってはならぬ好例だ。
プロペラ機の中でもクソANAペラは騒音が最悪。 JALのプロペラ機に比べて音が大きい。 そんな最低最悪のクソANAペラが、伊丹空港から毎日40匹近くも離陸する。 毎日毎日離陸する、年末年始も離陸する。
太郎はANAペラ騒音が特にひどい(1時間に6匹も飛来する)午前中に耳栓をして眠るようにしているが、ANAペラ騒音は実は午後も相当にひどい。 だから、生活リズムをどう変更しようと、太郎はクソANA騒音に苦しめられる。
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太郎は嘆く。
「クソANAペラの騒音はこんなにムカつくのに、どうして世間は問題視しないのだろう?」
"クソANAペラ騒音 ムカつく" というキーワードで検索してもANAを恨む声は見つからず、Twitter でクソANAペラ騒音を批判するアカウントを作ってもフォロヤーが集まらない。 クソANAペラ騒音を憎む人口が足りないのだ。
理由は2つ考えられる:
1. クソANAペラは東京の空港を利用しない ・・・ クソANAペラが訪れるのは伊丹空港のほか九州・四国・東北の空港のみ。 だから1千万の人口を擁する東京で、ANAペラを憎む潜在的な同志が発掘されず埋没している。
2. 多くの人の騒音に対する感受性が未発達 ・・・ 未熟で野蛮な耳では、ANAペラ騒音の不快さを十分に認識できない。 ANAペラ騒音を理解し憎めるのは、騒音感受性に優れる一部のエリートに限られる。
「ちくしょう、エリートになんか生まれなきゃ良かった!」
◇❖◇❖◇
その日の夜、20時台に2匹めのANAペラが来た。
「もう許せん。 クソANAめ、クソ伊丹空港め!」
20時台のANAペラは、いつもなら1匹だけ。 その1匹が来て "ANAペラ騒音の時間帯がようやく終わった" と安堵したタイミングでクソANAペラがもう1匹来たので、太郎はひとたまりもなくムカつかされた。
「もう我慢ならん。 クソANAとクソ伊丹空港の破滅を引き寄せてやる」
太郎が言う "引き寄せ" とは「引き寄せの法則」のこと。 "思考は現実化する" を合言葉とするオカルト思想だ。 その効果は何でもアリ。 何でもかなう。 例えば、宝クジに当たる、髪の毛がフサフサになる、憧れの異性と結ばれるなど。 "引き寄せ" の原理を "潜在意識の働き" などと説明する者もいるが、それでは説明できない現象も起こるという。 太郎は最近、この "引き寄せ" を Youtube動画で知り、ちょくちょく実践していた。
◇❖◇❖◇
"引き寄せ" のコツは、"願う" のではなく "実現したとイメージする" こと。 また、"引き寄せ" には瞑想が有効とされる。 "引き寄せ" の原理が潜在意識であれパラレルワールドであれ超能力であれ、瞑想で変性意識状態に突入するのが有効だと考えられる。
◇
そこで太郎は、まず瞑想を行う。 座禅を組み、自我を頭の中から追い払う。 自我を追い払うには、"自分の思考を観察" しても良いが、太郎は "脳を休める" 技法を用いる。 絶え間なく活動する脳をいたわり休めるのをイメージする。
◇
瞑想でいい感じになったところで、いよいよ太郎はANAと伊丹空港の滅亡をイメージする。
"引き寄せ" でイメージするときのコツは、なるべく具体的に、周辺の事柄までイメージすること。 太郎はイメージした。 日本中を ブオーンブオーン とうるさく飛び回るクソ迷惑なクソANAペラ数十匹のことごとくがクソ墜落する場面を、墜落事故によりクソANAのクソ株価がクソ急落しクソANAがド倒産するニュースが流れる場面を、そしてクソ伊丹空港が廃港になり跡地が森になっている場面を。
"引き寄せ" を行う時のもう1つのコツは、"今"。 漠然と "いつか起こるだろう" とか "引き寄せには時間がかかるものだ" などと考えていては、願望はいつまで経っても実現しない。 "いつか起こる" ことを望んでしまっているから。 だから望むのは "今" だ。
変性意識状態のなか、太郎は念じる。
「すぐ死ねクソANA、クソ伊丹空港! たった今だ! いつかじゃなく今! 今、今、今、今、今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今! いい加減に死ね!!」
◇❖◇❖◇
翌日、昼過ぎに起きてコーヒーを飲みながらネットでニュースを見ていた太郎の目に、ショッキングなニュースが飛び込んで来た。 日本中のANAペラが一斉に全機墜落したというのだ。 小学校の上に、中学校の上に、病院の上に、国道の上に、民家の上に!
多数の小学生と中学生が亡くなり、交通網は寸断。 クソANAはマスコミに糾弾されまくり、ANAは国民から総スカンを食らった。 当然、ANAの株価は急落しANAは倒産。 それに伴い伊丹空港の廃港が決定された。 伊丹空港を利用する迷惑飛行機の8割がANAなので、ANAが倒産した今、伊丹空港も用済みなのだ!
太郎は快哉を叫んだ。
「やったぞ! ザマアみやがれクソANA! 天罰だ!」
実際、天罰としか思えない。 ANAペラ一斉墜落の原因は不明なのだ。 不快極まりないムカつくANAペラ騒音に神がムカついてクソANAに天罰を下したとしか思えない。
「これで仕事に集中できるぜ!」
クソANAペラ騒音がなくなり伊丹空港も廃港され、太郎の生産性は格段にアップした。 それに伴い日本の景気も右肩上がり。 日本は世界一の経済大国に返り咲き、少子化問題も解決されました。 めでたしめでたし。
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