無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら

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第4話 元仲間との再会、そして村人たちの眼差し

 村の広場に立つ大樹の影の下、俺は元仲間のひとり――槍使いのドランと向き合っていた。夕暮れの光に照らされた彼の顔は、かつての精悍さを失い、目の下には深い隈が刻まれている。防具は泥で汚れ、槍の穂先は刃こぼれしていた。俺が知る「自信満々の槍の男」は、もうそこにはいなかった。

「ジル、本当に……お前なのか」
「ああ、俺だ。だが、今の俺は村のただのおっさんだ」
「違う! お前がいないとダメなんだ。あのリーダーも、魔法使いも……皆、焦ってる。大きな依頼を請けて失敗続きで、もう立ち行かない」

 ドランは声を震わせながら、泥にまみれた手を差し伸べてきた。かつて共に死線を越えた仲間。だが、その手は俺を「無能」と罵った同じ口から伸ばされたものだ。

 広場に集まった村人たちは、固唾を飲んでそのやり取りを見守っていた。ミナは俺の傍らで小さな拳を握りしめ、村長のハルドは杖を支えながら黙って見ている。

「ジル殿……」
「おじさん、行っちゃうの……?」

 子どもたちの不安げな声が、背中を押すように響いた。



 俺は深く息を吐き、ドランに言った。
「十年以上、一緒に戦ってきた。だから、俺は今でもお前を嫌いになれない。だがな……俺を追い出したのはお前たちだ。俺を無能と決めつけたのも、お前たちだ」

 言葉を重ねるたびに、ドランの顔は歪んでいく。悔しさと情けなさが入り混じったような、どうにも見ていられない表情だった。

「俺はもう、戻らない。ここで生きると決めたんだ。畑を耕し、パンを焼き、村人たちと笑い合う……それが、俺の戦いだ」

 広場の片隅から「そうだ!」という声が上がった。昨日、俺の作った鍬で畑を耕した若者だ。続いて、湯船に肩まで浸かって感動していた老人が杖を突いて声を張り上げる。

「ジル殿は、この村を救ってくれた! もう、あんたらの道具じゃない!」

 その声に呼応するように、村人たちの間から次々と声があがる。
「ジルさんは無能なんかじゃない!」
「戻ってくれなんて、虫が良すぎる!」
「この村にとっては、かけがえのない人なんだ!」

 ドランは震える手を引っ込め、呻くように言った。
「……わかってる。だが、あいつらはまだ……」

「もう遅い」

 俺ははっきりと告げた。村人たちの声が静まり返り、その言葉だけが夜風に溶けた。



 ドランは肩を落とし、よろよろと広場を去っていった。背中は小さく、寂しげだった。かつて一緒に戦った仲間の成れの果てを見るのは、正直胸が痛む。だが、それでも選ぶべきは今の居場所だ。

 俺の横に立つミナが、小さな声で言った。
「ジルさん……よかった。わたしたちを置いていっちゃうかと思った」
「置いていかないさ。俺はもう、ここに根を下ろした。お前たちの笑顔が、俺の冒険なんだ」

 ミナはぱっと笑顔を見せ、村人たちも一斉に安堵の息を吐いた。



 夜。空き家に戻り、机に肘をついてろうそくを灯す。窓の外では、村人たちの笑い声がまだ続いていた。

 俺は《真なる創造》を発動し、粗末な日誌を一冊作った。表紙は革、紙は羊皮紙を模したもの。そこに、今日の出来事を書き留める。

――「元仲間と再会。だが戻らず。村人たちが俺を必要としてくれた」

 字を刻みながら、胸の奥にじんわりとした温かさが広がっていく。

「ここで生きていく。絶対に」

 俺は静かに誓った。

 その夜、窓の外を冷たい風が吹き抜けた。だが、俺の心は不思議と揺るがなかった。
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