パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第19話 王都からの刺客

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 新しい仲間が増え、追放者ギルドの拠点は日に日に賑やかになっていた。朝はリナの朝食で始まり、昼は畑や鍛冶作業、薬草採取に汗を流し、夜はロディの歌を聴きながら焚き火を囲む。――まるで小さな村のような暮らしだ。

 だが、その穏やかな日々に、黒い影が忍び寄っていた。



 ある晩。行商人が谷に駆け込んできた。

「カイルさん! 大変だ、王都から兵士が動いたらしい!」
「兵士?」
「いや……正規軍じゃない。どうやら“冒険者崩れの連中”を雇った刺客だと……。標的は“追放者ギルド”だって噂だ!」

 仲間たちの顔がこわばる。リナが青ざめて言った。
「どうして……私たち、村を助けてるだけなのに」
「……目障りだからだろう」俺は低く答えた。「王都は“英雄譚”を独占したい。俺たちが人々の支持を得れば、その物語が揺らぐ」

 セリウスが眼鏡を押し上げる。
「合理的ではありますね。権力者にとって、私たちのような存在は異物……」
「なら、叩き潰す気だ」グレンが大剣を握りしめた。



 その夜。谷を囲む森で、不審な気配を感じた。俺は皆を止め、声を潜める。

「来たな……」

 闇の中から現れたのは、黒い鎧を着込んだ数人の男たち。顔を覆面で隠し、剣と短弓を構えていた。

「ここが追放者ギルドか。命が惜しければ解散しろ」

 先頭の男が吐き捨てるように言った。

「ふざけるな! ここは俺たちの居場所だ!」俺は即答した。

 すると男は冷笑を浮かべた。
「追放された者に居場所など不要だ。お前たちは“物語の邪魔”だ。だから消えてもらう」



 戦いは突然始まった。

「グレン!」
「任せろ!」

 大剣が火花を散らし、刺客の剣を弾き飛ばす。リナは慌てて薬草を焚き、煙で視界を覆う。

「フィオ!」
「え、えいっ!」

 炎の矢が飛び、刺客の足元で爆ぜた。驚いた敵が後退するが、すぐに矢が雨のように降ってきた。

「セリウス!」
「煙幕だ!」

 瓶が割れ、白い霧が辺りを覆う。敵の視界が塞がれ、仲間たちが態勢を立て直す。

「退け!」俺は叫んだ。

 刺客たちは撤退していったが、最後に言い残した。

「……次は容赦しない。王都はお前たちを潰す」



 敵が去った後、皆が肩で息をしていた。

「……本当に来たんだね、王都から」リナが震える声で言う。
「私たち……どうなるの?」フィオが怯えた目を向けてきた。

 俺は皆を見回し、はっきり言った。

「大丈夫だ。段取りを間違えなければ、俺たちは負けない」

 グレンが笑う。
「おう! 今度来たら、まとめて叩き潰してやる!」

 セリウスは静かに頷き、エレナは「帳簿を守らなきゃ……!」と必死に羊皮紙を抱えていた。



 焚き火の炎を見つめながら、俺は心の奥で決意を固めた。

「追放者ギルドは、誰にも潰させない。俺たちの居場所は、俺たちで守る」

 ――谷に平穏は戻ったように見えたが、外の世界は確実に動き始めていた。
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