パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

第20話 追放者ギルド、防衛を固める

　王都から放たれた刺客との戦いの翌朝。谷は重い空気に包まれていた。村人たちは怯え、子どもは泣き、老人たちは「また襲われるのではないか」と震えていた。

　ギルドハウスに集まった仲間たちも、顔を曇らせていた。

「カイルさん……あれ、本当に王都からの刺客なんですか？」リナが不安そうに問う。
「ああ。王都の連中は、俺たちを物語の邪魔者だと決めつけている。いずれ本格的に潰しに来る」
「だったら、俺たちで迎え撃つしかねぇな！」グレンが拳を握る。
「……ですが、正面から戦えば数で圧倒されるでしょう」セリウスが冷静に分析する。
「じゃ、じゃあ……どうすれば……」フィオが震える声で呟いた。

　俺は拳を握りしめ、仲間たちに宣言した。

「段取りを間違えなければ、負けない。ここで村全体を守る防衛体制を作る！」

◇

　まずは村人たちを集め、広場で会議を開いた。

「追放者ギルドだけでなく、この村に住む皆の力が必要だ。力仕事が得意な者は柵を強化してくれ。手先の器用な者は罠を作れ。女性や子どもは食事と水の確保を頼む」

　村人たちの表情は不安から、次第に決意に変わっていった。

「俺たちの村を守るんだ！」
「追放者ギルドと一緒に戦おう！」

　その声を聞き、仲間たちも笑みを取り戻す。

◇

　鍛冶師ガンツは丸太を削り、村の周囲に頑丈な柵を作り始めた。
「地味で堅実？　上等だ！　派手さより壊れにくさだ！」

　薬師ミーナは保存薬を応用し、焚き火の煙を長持ちさせる工夫を編み出した。
「これなら合図の煙が何日も消えません！」

　吟遊詩人ロディは歌で村人たちを落ち着かせ、不安を和らげた。

　リナは炊き出しをし、エレナは裁縫で皆の防具を繕う。フィオは魔法の練習を繰り返し、セリウスは防御用の薬品を量産。グレンは柵の外で声を張り上げながら丸太を担ぎ、村人たちを鼓舞していた。

「俺たちは追放者！　だがここじゃ勇者だ！」

◇

　数日で村はまるで砦のように変わった。柵が巡らされ、見張り台が立ち、夜には合図の火が焚かれた。罠の設置も進み、谷全体が守りの要塞と化していく。

　その光景を見て、俺は胸の奥が熱くなった。

「……追放された者たちが、こうして一つにまとまるとはな」

「カイルさんのおかげです」エレナが微笑んだ。「皆、居場所を得たから頑張れるんです」

　俺は旗を見上げた。追放者ギルドの紋章が、今は谷全体の象徴のように揺れていた。

◇

　夜。焚き火のそばで、仲間たちが輪になっていた。

「来るなら来い、王都の刺客ども！」グレンが拳を突き上げる。
「……次は絶対に暴発しない。みんなを守る」フィオが小さく呟く。
「薬の備蓄は十分。どれほど攻められても耐えられます」セリウスが冷静に言う。
「料理も服も準備万端です！」リナとエレナが声を合わせた。

　俺はゆっくりと言った。

「俺たちは追放者だ。だが、ここでは誰も見捨てない。必ず守る」

　焚き火の炎が揺れ、皆の瞳に決意が映った。

　――こうして追放者ギルドは、村全体を巻き込んだ防衛体制を築き上げた。

　そして近い未来、必ず訪れるであろう戦いに備えるのだった。