魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第22話 揺れる宮廷と揺るがぬ誓い

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 回廊での一件は隠しようもなく、翌日には城中に広まっていた。侍女たちは口々に心配を囁き、兵士たちは怒りを滲ませていた。
「殿下の客人を襲うとは……」
「陰で糸を引いている者が必ずいる」

 空気は重く、宮廷全体に波紋が走っていた。

     ◇

 午前、小会議が開かれた。列席する貴族たちの視線は一様に硬く、広間には張り詰めた緊張が漂う。アレクは堂々と立ち、真っ直ぐに言い放った。

「昨夜、セリーナを害そうとした者がいた。許されざる行為だ。彼女はこの国で人々を癒やし、信頼を得ている。それを妬み、傷つけることは、この国の未来を貶めることに等しい」

 強い声が響く。私の心臓は激しく鳴り、息が詰まりそうだった。広間の端で交わされる冷たい囁きが耳に入る。
「殿下はますます彼女に入れ込んでいる」
「国のためか、それとも女のためか」

 胸が痛む。けれど、今は彼の言葉を遮りたくなかった。

「俺は彼女を守る。それが俺の王子としての責務であり、男としての誓いだ」

 その一言に広間がざわめいた。公然と、私を守ると宣言してくれた。

     ◇

 会議の後、廊下でアレクと並んで歩いた。彼は険しい表情を崩さず、黙っていた。沈黙に耐えきれず、私は口を開く。

「……あれほど強く言い切ってくださって、本当に良かったのでしょうか」

 彼は立ち止まり、私を見つめた。
「迷いはない。君を守ることで俺の立場が揺らぐのなら、その程度のものだったということだ」

 真剣な瞳に胸が熱くなる。だが同時に、不安もこみ上げた。
「でも、私は……殿下を守れるわけではない。負担になるばかりで」

 言い終える前に、彼は私の肩を掴んだ。
「違う。君はすでに俺を支えている。俺が力を振るえるのは、君が隣にいてくれるからだ」

 その言葉に涙が滲む。守られるばかりではない――彼の力になることができている。その事実が心を震わせた。

     ◇

 夕暮れ、マリアンヌが部屋を訪ねてきた。彼女はそっと椅子に腰を下ろし、真剣な瞳で言った。
「お兄様があれほど強く人前で宣言するのは初めてよ。それほどあなたを想っているの」

「……でも、そのせいで彼の立場を危うくしてしまうかもしれません」

「危うくしたのではなく、強くしたのよ。お兄様は誰よりも真実を大切にする人。だからこそ、あなたの存在は彼の力になるの」

 その言葉に胸が熱くなった。私が支えになれる――それが現実であることを、王女の口からも聞けたのだ。

     ◇

 夜、窓辺に立つ。月が雲間から顔を出し、静かな光を床に落としている。アレクの声が胸に響き続ける。――「君はすでに俺を支えている」。
 私は両手を胸に当て、深く息を吸った。

 ――どんな陰が迫ろうとも、私は彼と共にある。

 その誓いは揺るぎなく、夜空の星のように静かに輝き続けていた。
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