魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第23話 見え始めた影

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 数日が経ち、城の中は表面上の静けさを取り戻していた。けれどその裏で、何かがじわじわと動いているのを肌で感じる。兵士たちの警備は強化され、侍女たちは私の周囲で落ち着かぬ様子を見せていた。
 夜、廊下を歩くと、不意に背筋を撫でるような視線を覚える。振り返っても誰もいない。けれど確かに――見えない影が迫っていた。

     ◇

 ある日の午後。私は庭園で薬草を干していた。陽光に透ける葉の緑は美しく、香りも穏やかだった。侍女と共に作業をしていると、背後から聞き慣れぬ声がした。

「ご立派なことですね。人を救う聖女殿」

 振り返ると、細身の男が立っていた。深い緑の衣を纏い、笑みを浮かべているが、瞳は冷たい。名を知らぬが、衣の質から高位の貴族であることは明らかだった。

「……どなたでしょうか」

「名を告げるまでもない。あなたがここにいることが、どれほど殿下の立場を危うくしているか――その自覚はあるのですか?」

 侍女が息を呑む。男の声は柔らかいが、棘が潜んでいた。
「あなたは人を救うかもしれない。しかし同時に、殿下の未来を奪う。どちらを選びますか?」

 心臓が強く鳴る。答えられずにいると、男は薄く笑い、背を向けた。
「いずれ答えを出していただきましょう。殿下のためにも」

 その背中を見送り、私は膝が震えそうになるのを必死に堪えた。

     ◇

 夕刻、アレクにその出来事を話した。彼は黙って聞き、やがて低く唸った。
「やはり動き出したか……」

「やはり……というと?」

「君を狙う者たちは一枚岩ではないが、背後で糸を引いているのは数人の有力貴族だ。名を明かさず挑発してきたのなら、その一人だろう」

 彼の声は怒りに震えていた。
「セリーナ。俺の隣にいることを恐れるな。だが、これから先は危険が増す。君を守るために、俺は全ての力を使う」

 その瞳は真剣で、胸が熱くなる。守られるだけではなく、支えたい。私は小さく頷いた。
「私も逃げません。どんな影が迫っても……あなたの隣にいます」

 アレクは深く息を吐き、私の手をしっかりと握った。
「その言葉を聞けてよかった。君の強さが、俺をさらに強くする」

     ◇

 夜。部屋の窓から城下の灯を眺める。人々の生活の明かりは温かく、静かに瞬いていた。だがその下で、陰謀が確実に形を取りつつある。
 ――立ち向かわなくては。

 アレクの隣で、ただ守られるのではなく、共にこの国を照らすために。
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