魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第31話 浮かび上がる名と夜の誓い

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 広場での騒動が収まったのち、城は慌ただしさを増していた。煽動者を追った兵士たちが戻り、報告を重ねている。私は医務室で兵士の怪我を癒やしていたが、心は落ち着かなかった。背後にいる首謀者が必ずいる――そう感じていたからだ。

     ◇

 夕刻。執務室に呼ばれると、アレクと数人の家臣が地図を広げていた。緊張に包まれた空気。アレクが私に視線を向け、低く言った。

「調査の結果、煽動者たちはある伯爵家の支援を受けていたと判明した」

 家臣が一枚の書状を差し出す。そこには伯爵家の紋章と密会の記録が記されていた。名前を見た瞬間、私は息を呑む。
「……この名は……」

 それは、かつて私を追放に追い込んだ祖国の教会と繋がりを持つ家系だった。背筋が冷える。祖国での烙印が、まだ私を追い続けているのか。

 アレクの瞳に怒りが宿る。
「やはり繋がっていたか。セリーナ、君を狙う理由はそこにある。彼らは君の存在が真実を暴くのを恐れている」

 私は唇を噛む。逃げたい気持ちがよぎったが、すぐに消した。
「……なら、私は立ち向かいます。過去から逃げ続けるのではなく」

 アレクは深く頷き、私の肩に手を置いた。
「その決意、俺が守り抜く」

     ◇

 夜。部屋に戻り、窓から星を見上げていると扉がノックされた。入ってきたのはアレクだった。執務を終えたはずなのに、瞳にはまだ緊張の影が残っている。

「眠れないか?」
「……少し、不安で」

 彼は黙って窓辺に立ち、夜空を見上げた。
「俺も同じだ。だが、不安を共に分け合えるのなら、少しは軽くなるだろう」

 その言葉に胸が震える。私は思わず口にした。
「殿下……私がここにいることで、本当に国のためになっているのでしょうか」

 彼は私を見つめ、ゆっくりと答えた。
「国のためかどうかを決めるのは民だ。だが俺にとっては、君がいることがすべてだ。……セリーナ、君は俺の未来だ」

 その一言に涙が溢れ、頬を伝った。アレクは手を伸ばし、そっと拭った。
「恐れるな。俺たちは共に未来を作る。必ず」

 私は頷き、彼の胸に顔を埋めた。温かな鼓動が耳に響き、不安が少しずつ溶けていった。

     ◇

 だが、静かな夜の裏で。城外の館では、黒衣の男がひざまずき、報告をしていた。
「人々の心は揺らぎ始めました。しかし、まだ完全には傾いておりません」

 その前に座るのは伯爵家の主。冷たい瞳で男を見下ろし、低く言い放つ。
「ならば次は直接的に仕掛けよ。聖女を葬り去れ」

 蝋燭の炎が揺らぎ、影が壁に広がった。迫る危機の予兆が、確実に形を取っていた。

     ◇

 部屋に戻った私はまだ眠れなかった。けれど、胸に残るアレクの言葉が心を支えていた。
 ――君は俺の未来だ。
 その響きが、どんな闇よりも強い光となって、私の中で燃えていた。
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