魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第38話 祈りが届く瞬間

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 戦は熾烈を極めていた。王都の外れは炎に包まれ、夜空が赤く染まっていた。兵たちの叫びと剣戟の音が混じり合い、地面は震えているように感じられた。医務室では次々と運ばれる負傷兵を前に、私は必死に祈りを重ねていた。

「光よ、この者を救いたまえ……」

 淡い輝きが兵士の傷を覆い、苦痛に歪んだ顔が安堵に変わる。だが、その度に胸の奥で不安が膨らんでいく。アレクが最前線で孤立しかけている――その報せが脳裏から離れないのだ。

     ◇

 戦場。アレクは剣を振るい、押し寄せる敵兵を次々と退けていた。鎧は裂け、肩からは血が滴っていたが、その瞳は決して揺らいでいない。

「退け! 王都を渡してはならん!」

 彼の声が兵たちの心を奮い立たせ、必死の防衛線を保たせていた。だが、敵は執拗に彼を狙っていた。矢が雨のように降り注ぎ、その一本が彼の腕を貫いた。

「ぐっ……!」

 痛みに顔を歪めながらも、彼は剣を落とさなかった。だが数で劣る兵たちが次第に押し込まれていく。

     ◇

 その頃、城内。私は窓辺に立ち、遠く赤く燃える空を見つめていた。胸の奥から熱が込み上げる。
「どうか……どうか、殿下をお守りください……!」

 祈りは涙と共に零れ落ち、夜の風に溶けた。その瞬間、体の奥から熱が溢れ出し、光が広がる。医務室にいた兵士や侍女が驚きの声を上げた。

「聖女様が……!」

 光は窓から夜空へと舞い上がり、戦場を包み込む。

     ◇

 戦場に突如として降り注いだ光に、兵士たちが息を呑んだ。傷を負った者たちの呼吸が整い、力が戻っていく。
「これは……聖女様の祈りか!」

 アレクの体にも温もりが流れ込み、血が止まり、痛みが和らいでいく。彼は驚きに目を見開き、そして深く息を吐いた。
「セリーナ……君か」

 力が戻った剣を再び握り締め、彼は立ち上がった。
「ここで退くわけにはいかない!」

 その声に王都の兵たちは歓声を上げ、勢いを取り戻した。

     ◇

 敵兵の波は確かに揺らいでいた。だが伯爵家の指揮官が叫ぶ。
「怯むな! 魔女の幻術だ!」

 彼らの剣はなお鋭く、戦は決して容易には終わらなかった。けれどアレクはその中心で光に包まれ、まるで導く者のように立ち続けていた。

「俺は必ず勝つ! セリーナと共に、この国を未来へ導く!」

 その叫びは雷鳴のように戦場に響き渡り、兵士たちの心を震わせた。

     ◇

 城内で祈りを続けながら、私は涙を流していた。
「殿下……あなたは一人ではありません……」

 遠く離れていても、確かに心が繋がっているのを感じた。私の祈りは彼に届き、彼の声は私に届いていた。

 ――この絆こそが、私たちの力。
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