38 / 41
第38話 祈りが届く瞬間
しおりを挟む
戦は熾烈を極めていた。王都の外れは炎に包まれ、夜空が赤く染まっていた。兵たちの叫びと剣戟の音が混じり合い、地面は震えているように感じられた。医務室では次々と運ばれる負傷兵を前に、私は必死に祈りを重ねていた。
「光よ、この者を救いたまえ……」
淡い輝きが兵士の傷を覆い、苦痛に歪んだ顔が安堵に変わる。だが、その度に胸の奥で不安が膨らんでいく。アレクが最前線で孤立しかけている――その報せが脳裏から離れないのだ。
◇
戦場。アレクは剣を振るい、押し寄せる敵兵を次々と退けていた。鎧は裂け、肩からは血が滴っていたが、その瞳は決して揺らいでいない。
「退け! 王都を渡してはならん!」
彼の声が兵たちの心を奮い立たせ、必死の防衛線を保たせていた。だが、敵は執拗に彼を狙っていた。矢が雨のように降り注ぎ、その一本が彼の腕を貫いた。
「ぐっ……!」
痛みに顔を歪めながらも、彼は剣を落とさなかった。だが数で劣る兵たちが次第に押し込まれていく。
◇
その頃、城内。私は窓辺に立ち、遠く赤く燃える空を見つめていた。胸の奥から熱が込み上げる。
「どうか……どうか、殿下をお守りください……!」
祈りは涙と共に零れ落ち、夜の風に溶けた。その瞬間、体の奥から熱が溢れ出し、光が広がる。医務室にいた兵士や侍女が驚きの声を上げた。
「聖女様が……!」
光は窓から夜空へと舞い上がり、戦場を包み込む。
◇
戦場に突如として降り注いだ光に、兵士たちが息を呑んだ。傷を負った者たちの呼吸が整い、力が戻っていく。
「これは……聖女様の祈りか!」
アレクの体にも温もりが流れ込み、血が止まり、痛みが和らいでいく。彼は驚きに目を見開き、そして深く息を吐いた。
「セリーナ……君か」
力が戻った剣を再び握り締め、彼は立ち上がった。
「ここで退くわけにはいかない!」
その声に王都の兵たちは歓声を上げ、勢いを取り戻した。
◇
敵兵の波は確かに揺らいでいた。だが伯爵家の指揮官が叫ぶ。
「怯むな! 魔女の幻術だ!」
彼らの剣はなお鋭く、戦は決して容易には終わらなかった。けれどアレクはその中心で光に包まれ、まるで導く者のように立ち続けていた。
「俺は必ず勝つ! セリーナと共に、この国を未来へ導く!」
その叫びは雷鳴のように戦場に響き渡り、兵士たちの心を震わせた。
◇
城内で祈りを続けながら、私は涙を流していた。
「殿下……あなたは一人ではありません……」
遠く離れていても、確かに心が繋がっているのを感じた。私の祈りは彼に届き、彼の声は私に届いていた。
――この絆こそが、私たちの力。
「光よ、この者を救いたまえ……」
淡い輝きが兵士の傷を覆い、苦痛に歪んだ顔が安堵に変わる。だが、その度に胸の奥で不安が膨らんでいく。アレクが最前線で孤立しかけている――その報せが脳裏から離れないのだ。
◇
戦場。アレクは剣を振るい、押し寄せる敵兵を次々と退けていた。鎧は裂け、肩からは血が滴っていたが、その瞳は決して揺らいでいない。
「退け! 王都を渡してはならん!」
彼の声が兵たちの心を奮い立たせ、必死の防衛線を保たせていた。だが、敵は執拗に彼を狙っていた。矢が雨のように降り注ぎ、その一本が彼の腕を貫いた。
「ぐっ……!」
痛みに顔を歪めながらも、彼は剣を落とさなかった。だが数で劣る兵たちが次第に押し込まれていく。
◇
その頃、城内。私は窓辺に立ち、遠く赤く燃える空を見つめていた。胸の奥から熱が込み上げる。
「どうか……どうか、殿下をお守りください……!」
祈りは涙と共に零れ落ち、夜の風に溶けた。その瞬間、体の奥から熱が溢れ出し、光が広がる。医務室にいた兵士や侍女が驚きの声を上げた。
「聖女様が……!」
光は窓から夜空へと舞い上がり、戦場を包み込む。
◇
戦場に突如として降り注いだ光に、兵士たちが息を呑んだ。傷を負った者たちの呼吸が整い、力が戻っていく。
「これは……聖女様の祈りか!」
アレクの体にも温もりが流れ込み、血が止まり、痛みが和らいでいく。彼は驚きに目を見開き、そして深く息を吐いた。
「セリーナ……君か」
力が戻った剣を再び握り締め、彼は立ち上がった。
「ここで退くわけにはいかない!」
その声に王都の兵たちは歓声を上げ、勢いを取り戻した。
◇
敵兵の波は確かに揺らいでいた。だが伯爵家の指揮官が叫ぶ。
「怯むな! 魔女の幻術だ!」
彼らの剣はなお鋭く、戦は決して容易には終わらなかった。けれどアレクはその中心で光に包まれ、まるで導く者のように立ち続けていた。
「俺は必ず勝つ! セリーナと共に、この国を未来へ導く!」
その叫びは雷鳴のように戦場に響き渡り、兵士たちの心を震わせた。
◇
城内で祈りを続けながら、私は涙を流していた。
「殿下……あなたは一人ではありません……」
遠く離れていても、確かに心が繋がっているのを感じた。私の祈りは彼に届き、彼の声は私に届いていた。
――この絆こそが、私たちの力。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!
阿里
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!?
「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。
でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした!
「君がいたから、この国は守られていたんだよ」
えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!?
竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート!
そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。
婚約破棄されて追放寸前だったのに、なぜか冷徹なはずの氷の公爵様から世界で一番甘く愛されています。
黒崎隼人
ファンタジー
「リゼット・フォン・ヴァインベルク! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!」
卒業パーティーの夜、公爵令嬢リゼットは婚約者の王太子から冤罪を突きつけられ、全てを失った。
絶望の淵に沈む彼女に手を差し伸べたのは、『氷の公爵』と噂される冷徹な美青年、キリアン・アシュフォード。
「ならば、俺が君を娶ろう」
彼の屋敷で始まったのは、戸惑うほどに甘い溺愛の日々。
不器用な優しさに触れるうち、凍てついた心は少しずつ溶かされていく。
一方、リゼットを陥れた偽りの聖女は王宮で増長し、国に災いを招き寄せていた。
やがて真実が暴かれる時、元婚約者は後悔の涙を流すけれど――もう、遅い。
これは、不遇の令嬢が本当の愛を見つけ、世界で一番幸せになるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるような溺愛があなたを待っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる