魔女扱いされて国を追われた聖女は、隣国の王子に溺愛される~いまさら戻ってきてくれなんて言われてももう遅いです~

さら

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第37話 戦火の下の祈り

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 夜空は赤く染まり、遠くで鬨の声と鉄のぶつかる音が響いていた。伯爵家の兵が王都の外れに迫り、アレクは最前線に立っていた。城門の内側に立つ私は、祈るように空を見上げながら人々の不安を受け止めていた。

「戦が始まったのか……」
「殿下は大丈夫だろうか……」

 怯える声に胸が締め付けられる。私は深く息を吸い、群衆に向き直った。
「大丈夫です。殿下は必ず皆さまを守ります。どうか信じてください」

 声は震えていたが、必死に祈りを込めた。子どもが母の手を握り、老人が杖を強く掴み直す。小さな希望の光が、確かに人々の目に宿っていく。

     ◇

 医務室では、次々と運ばれる兵士の手当てに追われた。傷ついた体に手を添え、祈りを重ねる。光が溢れ、血が止まり、兵士の呼吸が楽になるたびに、人々の目が驚きから信頼へと変わっていった。

「ありがとう、聖女様……」
「まだ戦える!」

 その言葉が私の力となる。恐怖は消えない。けれど、守られるだけの存在ではいられない。私はここで、人を支える役目を果たすのだ。

     ◇

 一方、戦場。アレクは先頭で剣を振るい、伯爵家の兵を次々と薙ぎ払っていた。鎧は血に濡れ、肩に傷を負いながらも、その瞳は決して揺るがなかった。
「退け! 我らは正義の旗の下にある!」

 その声は雷鳴のように戦場を震わせ、兵士たちの士気を奮い立たせた。だが敵は数で勝っている。押し寄せる波に、王都の兵たちは苦戦を強いられていた。

     ◇

 夜半。医務室の扉が開き、重傷を負った兵士が運び込まれた。
「殿下が……最前線で孤立しかけておられる!」

 胸が凍る。私は震える手で兵士の傷を癒やしながら、必死に祈った。
「どうか……どうか、殿下をお守りください」

 涙が滲む。だが同時に、心の奥から確かな声が聞こえた。――逃げるな。あなたはもう一人ではない。

     ◇

 戦場では、アレクが血に塗れながらも剣を構え続けていた。敵兵の刃が迫る瞬間、彼は自らを奮い立たせるように低く呟いた。
「セリーナ……俺は必ず君のもとへ戻る」

 その誓いは風に溶け、月明かりの下で輝いていた。

     ◇

 城壁の上から炎に包まれる戦場を見つめ、私は両手を組んだ。人々の安否を祈るだけでは足りない。アレクと共に未来を掴むために、私はこの祈りを力に変える。
 ――どうか、光よ。彼に届いて。

 夜空に星が瞬き、確かな希望の兆しを告げていた。
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