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4話 幸せの味
しおりを挟むもう慣れた光景だ…
また夢を見ている。
今度はどんなことを見ることになるのやら…
これから見る光景にすごく不安を感じていた。何故なら、この夢は辛いものばかりだ…
色々と考えていると、あの男の子が現れる。電気をつけているからおそらく夜だろう。
彼はハンバーグを食べていた。
……1人で食べていた。
テレビを見ながら食べており、テレビに出ているアニメの主人公が勝利したシーンを見て、「おお!やったー!」と叫んで立ち上がったが、そのあとはまた座り、ご飯を食べ続ける。
暖かいご飯、手作りの料理。それだけで贅沢だと言うものはいるが、
自分はどんなに美味しい手作りご飯があっても、誰かと食べないと意味はないんじゃないかと思う。
人によるだろうけど…
でも少なくともこんな小学生が1人で夕食を食べている風景は悲しくて寂しいに違いない…
そして、その後も彼は昼と夜のご飯を1人で食べていた。自分で作って…
ああ…誰か、彼の元へ来て欲しい…
現在18時05分。
「星野さん、生姜焼きは好きですか?」
辰支くんが俺の家のキッチンに立ち、スーパーで買ってきたであろう商品をエコバッグから次々と並べていきながら聞いてきた。
「ああ、大好物だよ。」
と俺は答える。何故このような状況になったのかというと、遡ること2日前。
俺は久々に実家に帰っていた。と言っても、駅1つ分の距離だからそこまで遠くはない。
その時に、
「あなた、最近痩せたんじゃない?ちゃんと食べてるの?部屋は散らかしてない?」
と母親に色々と心配された。実家に帰れば誰もがされることだ。
母親の名は星野恵。職業は弁護士、だった。
最近は俺たちが独立しているため、仕事する必要がなくなり、丁度家事に集中したいと思っていたらしかったので、今は専業主婦をしている。だからなのか、俺の生活をすごく心配してくる。
今までも心配はされていたが、最近はもっと心配をしてくる。
特に飯についてだ。いくら趣味で体を鍛えていても、食べることを怠っていては良くはない。わかってはいるが、出来ないから仕方がない。
「えーと、まあ、適当に作って食ってるよ。」
と俺が頭をかきながら答えると、母さんはじとーとした目で俺を見てきて、「嘘ね」とあっさりと嘘を見破った。俺は隠すのが上手い方なのに母さんには何故かいつもわかってしまう…
「な、何で嘘ってわかったんだよ…」
と俺が聞いてみると、母さんは
「分かるわよ。ちゃんとあなたを見ていたからね。そういうのも自然と分かるの。」
と言ってきた。母は昔からどんなに忙しくても育児などは決して手を抜いたりはしない人だ。母さん曰く「自分の子供の面倒も見れない人が依頼者の面倒なんて見れないでしょ?」との事。
たまに書類作成などで家にいない時はあったが、その時は必ず父親がいた。父に聞いたら母さんが父さんの休みに合わせて仕事をしていたらしい。
そう考えたらすごい人だし、俺たちにとってはすごくありがたい話だな。
「護也!聞いてるの?」
色々と考えていたが、母親の声ではっと我に帰る。
「ごめん。なんだっけ?」
と俺が聞くと、母さんは「全く…」と言いつつもう一度話してくれる。
「あなたが頑張っているのはわかるけど、料理くらい覚えなさい!次会った時に不健康な食事をしていると分かったら、私があなたの家に行ってご飯を作るからね!」
と言われた。作ってくれるのは大変ありがたいがいつまでも親に頼りきりはダメだなと思い、俺は何とか料理を覚えようとした。
実家から帰って来たあと、早速料理をしてみるが…大変不味かった……
見た目も見せられるものではなかった…
コンビニ弁当の方が何億倍もマシだ。
次の日、土曜日だったので筋トレをしたあと、ゆっくりしてから、散歩に出かけた時に偶然にも辰支くんに会った。
彼も散歩の途中だったらしい。
で、その後実家での話、料理したけどめちゃくちゃだったことを話すと、辰支くんが
「それならよろしければ、僕が作りに行きましょうか?」
と言ってきてくれた。すごく、いや、大変ありがたい話だったので頼むことにした。
一応連絡先を交換していたので、そこで連絡を取り合って18時に伺うと彼がメッセージを送ってきてくれた。
それまでに少しでも部屋が綺麗に見えるように散らかっていたものを片付けて、掃除機もかけた。
18時丁度に終わったので、間に合って良かったと思う。
大分長くなったが、そういうことがあり、現在に至る。
「料理得意なの?」
と俺がキッチンの台所の前にもたれながら聞く。
「人並み程度です。簡単なものは大抵作れます。」
と辰支くんが答える。自分が大変料理が下手なので人並みでも俺が「すごいね」と素直に褒めると、
「ありがとうございます。でもこういうのは慣れですよ。星野さんもやっていったら出来るようになりますよ。」
と言ってくれた。自慢になってしまうが、俺は一通りすぐに出来るが、確かにちょっと苦手だったことも慣れたら出来るようになっていた。
慣れってすごいよな…
と考えていると、辰支くんにソファでテレビでも見て待っていてほしいと言われたので、お言葉に甘えて、そうさせてもらった。
ソファに座り、テレビを見る。そして、キッチンに誰かが料理をしている。
こうしていると何だか、夫夫みたいでいいな…
本当にそうだったら良いのに…
(…ん?俺は今何を考えた?)
自分が今すごいことを考えたことに気づき、恥ずかしくなってくる。
どうしてそういう考えになったのかは分からないが、偶然そういうシチュエーションだったからそう考えたんだと言うことにした。
俺が悶々としているといつの間にかすごくいい匂いがしてきた。
生姜焼きのタレの匂いが食欲を刺激する。
いい匂いだなあ…
しばらくして、出来上がったみたいで、お箸などを並べるようにお願いされたので、お箸などを並べた後に辰支くんがメインの生姜焼きとさらに作ってくれた卵焼きを持ってきてくれた。
それを見て更に腹が減ってきたが、少し気になることがあった。
「なんで1人分だけなの?」
そう、辰支くんが持って来たのは1人分の量だけしかなかった。
「え?何故って貴方の食事を作りに来ただけですよね?」
辰支くんがキョトンとした顔でそう言った。俺は普通に2人で食べるのだと思っていたが、どうやら彼は作りに来ただけだったらしい。
(一緒に食べよって言っとけば良かった…)
心の中でそう思いながら、辰支くんに一緒に食べようと誘うが、
「お誘いはありがたいですが、人様の家で僕まで食べるのは迷惑でしょう?」
と彼は断った。その言葉に俺は疑問に思った。俺が一緒に食べたいから全然迷惑じゃないのに、どうしてそんなふうに思うのだろう?
俺は疑問に思いつつ、彼に自分の気持ちを話した。
「俺は一緒に食べたいから一緒に食べよって言ってるから全く迷惑じゃないよ?」
そういうと彼は「えっ?」と言い、その次に
「そうなのですか…?
……それならお言葉に甘えて一緒に食べましょう」
と言ってくれた。一瞬の間は何だったのか気になったが、とにかく一緒に飯を食えることに心の中でよしっ!と心の中でガッツポーズをした。
辰支くんは実家暮らしなので、母親に連絡をしていた。
彼が自分の分も持って来たところで、いただきますをして、食事を始める。
メニューは生姜焼きに卵焼き、そしてサラダと味噌汁だった。
まずは卵焼きから頂いた。出汁がしっかりと聞いており、辛すぎずうすすぎない味がまた白いご飯に合う上にフワフワの食感だった。俺はだし巻き玉子が好きだから嬉しい。俺はあっさりと卵焼きを食べてしまっていた。
サラダも食べてしまい、味噌汁も飲んでみると、人参、大根などの野菜が入っていた。
野菜の旨みも残っており、味噌汁に合う!
最後に生姜焼きを食べると、タレがしっかりと豚肉に染み込んでいて噛んだ瞬間にジュワーと味が広がっていく。焼き加減もよくこれもご飯に合う!!
「美味しいですか?」
俺が食べているのを見て、そう辰支くんが聞いてきた。
「すごく美味しいよ!久々にこんなご飯食べたよ!」
と俺が美味いことを伝えると、彼はホッと胸を撫で下ろしていた。
他人に振る舞うからそりゃ心配もするか。
食事をしながら話をしていると、あっという間に夜の20時になっていた。
楽しい時の時間の流れは本当に早くて短い…
俺はそう思った。
辰支くんは食器を全て洗ってくれた後少しゆっくりしてから母親が心配するからと帰る準備をしていた。俺はすごく寂しい気持ちになる。
やっぱり誰かとご飯を食べるのって良いもんだな…
と俺が考えていると、辰支くんが
「生姜焼きとお味噌汁はまだ残ってますので温めて食べてくださいね。」
と言ってくれた。本当にありがたい。彼が玄関で靴を履き、ドアに手をつけた瞬間、
「また一緒に食べてくれる?」
と俺は自分の気持ちをそのまま彼に伝えた。
彼は1度手をつけたドアから手を離し、こちらに振り返り、笑顔で
「はい、また一緒に食べましょう。」
と言ってくれたのでその言葉に俺のテンションはすごく昂っていた。
辰支くんが「それでは、おやすみなさい」と言って玄関を開ける。俺も「おやすみ」と返す。彼は玄関が締め切る前にまた会釈をしていたので俺も会釈をする。
完全に締め切った玄関を俺はしばらく見ていた。少し寂しいが、何故だかすごく腹が満たされた気分だ。
彼が作ってくれた料理の味は、母親の手料理を食べて以来の幸せの味だった。
その幸せの味を味わえた俺は明日から始まる仕事を頑張ろうと心に決めた。
この感情が何なのかは分からないが、
また彼と一緒に幸せの味を味わうために。
また彼と一緒に楽しい時間を過ごす為に。
明日からも頑張ろう。
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