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5話 自信と思いの目覚め 後編
しおりを挟む日曜日の朝、目覚まし時計が鳴り響く。
目覚まし時計を止めて時間を見ると、7時丁度だ。
今日辰支くんとの約束の時間と場所は9時に俺たちの家の最寄り駅に集合だ。
朝飯を食って、準備などを済ませた。持ち物を確認し終わった後、まだ時間があるのでしばらくゆっくりしていた。
そろそろ出る時間になったので、家を出る。マンションから駅までいつも通り歩いていき、丁度いい時間に駅の前に到着する。
すると、辰支くんの姿を見つける。もう着いていたようだ。
「おはよう!ごめん。待たせた?」
と俺が駆け寄りながら聞くと、
「いえいえ!ついさっき来たところです。」
と言った。こんな寒い中待たせたんじゃないのかと思ったため、彼の返事にホッとする。
「それでは行きましょうか。」
俺がホッとした後に彼がそう言い、駅に入っていき、俺も続いて入っていく。
電車は数分後にすぐ来て、俺たちはそれに乗り込む。まずは京都駅に向かう。
京都駅まで6駅ぐらいあるが、急行に乗ったため、3駅で着いた。
休日だからか、人がたくさんいる。辰支くんが人をよけながら先に進んでいく。俺はそれに続いていく。時々辰支くんが待っていてくれたこともあり、離れずに済んだ。
京都駅から嵯峨嵐山駅に止まる電車に乗る。まだ出発時間ではなかったので人も少なく、椅子に座れた。
この人の多さではラッキーだ。
そう思っていると、いつの間にか人がどんどん入って来て、あっという間にぎゅうぎゅう状態になった。すると、突然辰支くんが立ち上がり、ぎゅうぎゅう状態の中に入っていく。よく見てみるとその中にはお年寄りの女性がいた。立つのも大変そうなご年配だ。
辰支くんはおばあさんに話しかけ、彼が座っていた席まで戻って来るとおばあさんに席を譲った。おばあさんは辰支くんにお礼を言って譲られた席に座った。
凄いな…よく見てる。座っている自分が恥ずかしい…
と思いながら辰支くんを見ると、彼はニコッと笑った。
その笑顔にドキッとした。
電車が出発し、しばらくしたら嵯峨嵐山駅に着いた。着くまで、辰支くんは人のぎゅうぎゅうの中でも頑張って立っていた。
俺が変わると言っても大丈夫だと言って断られていた。
駅に着いて電車を降りたら彼は背伸びをした。
「ごめんね…何も出来なくて…」
と俺が謝ると、辰支くんは笑いながら
「僕がしたくてしたことです。それに星野さんも何度か変わろうとしてくれたじゃないですか。」
と言ってくれた。俺はその言葉にありがたみを感じながら彼の横を歩いた。
駅から出て、しばらく歩いていくと、テレビで見た事ある嵐山の風景が飛び込んできた。
俺はその風景だけでも感動した。
辰支くんにまずは有名な渡月橋に行こうと言われ、渡月橋に向かう。
渡月橋に着くとテレビで見た事ある風景がまた現れた。
「わあ、すげーな!」
俺がそう言うと、辰支くんが「良かった」と笑っていた。
ちょっとはしゃいだみたいで恥ずかしかった。
渡月橋を渡りながら川を見て、渡りきった後にまた戻って今度は天龍寺に行くことにした。
天龍寺はすごく落ち着いた雰囲気があり、庭園もすごく綺麗で、植えられた木の並び方がまるで龍のように見えた。
実は辰支くんも昔伯母に連れてきてもらった時に俺と同じことを思ったそうだ。
その後に天龍寺の庭園を一通り見て回った後に今度は有名な竹林に行くことになった。
竹林は天龍寺から出てる道を歩いて行くとすぐに入れる。
辰支くんに案内されて入って行くと、とても自然豊かな感じで、すごく落ち着く雰囲気だった。だからなのか、すごくリフレッシュした気分になる。
竹林の道を出口まで歩いていき、先程の大通りに出た。やっぱり人がたくさんだ。
天龍寺でも竹林でもすごく人が多かった。人力車も通っている。
少しだけ人が少なくなり、俺たちは話しながら歩いていると、小さな男の子がジュースを持って走って来た。俺は避けようとしたら男の子は辰支くんの方に傾いてコケてしまった。しかもジュースがズボンにかかってしまう。
大丈夫かな…流石に怒る?
と俺は思ったが、男の子が震えて泣きそうになりながら
「ご、ご、ごめ、んだ、ざい…」
とかろうじてわかるくらいに謝った。俺が何かする前に辰支くんは男の子を抱えて立たせると、
「痛かったね。ちゃんと謝れて偉い偉い!でもこれで分かったでしょ?注意せずに走ったりしたら危ないって。」
と優しく微笑みながら言った。それを見た俺は数秒前の自分を殴りたい。人がいるので、道の脇に避ける。
男の子は膝を擦りむいてしまっていた。血が少し出てきており、俺は困った。
絆創膏も何も無い。どこかで買おうとしたが、辰支くんがカバンから消毒液とティッシュと絆創膏を取り出した。
「少しだけ染みるけど我慢してね。」
と辰支くんが微笑みながら言った。
ティッシュに消毒液をつけて優しくポンポンと怪我のところに触れた。
男の子は少し痛がっていたが、辰支くんが話しかけたりしていたからそこまで染みらなかったようだ。怪我のところ絆創膏を貼り治療は完了した。本当に辰支くんは凄いと思う。
その後、どうやら男の子は母親とはぐれてしまったらしく、一緒に探したら彼の母親が見つかった。
母親は怪我や一緒に探してくれたことにお礼を言い頭下げた後男の子を連れて行ってしまった。辰支くんは男の子にバイバイと手を振っていた。
「君はすごいね。電車でもそうだし、子供にもあんなにしてあげるなんて。」
と俺が言うと、
「子供はまだ危なかっしいからちゃんと見てあげないとですし、お年寄りも困ってたら助けないとですしね。彼らに限らず、困ってどうしたらいいのか分からない時は助けてあげるべきだと、僕は思いますけどね…」
と言った。だが、彼はまた暗い顔になっていた。
何を言えばいいのか分からないが、とりあえず
「俺もそう思う。」
と自分の気持ちをそのまま言うと、辰支くんがニコッと笑った。
どうやら正解だったようだ。
その後も色々な観光地にいき、なんやかんやで帰る頃には18時を回っていた。嵐山から京都駅へ京都駅から俺たちの街の駅へ帰って来た時には18時57分だった。
「明日お仕事なのにすみませんね。」
と辰支くんが謝ってきたが、俺は楽しかったので、大丈夫だと言うことを伝えた。
お互いに帰ろうとなった時に辰支くんが「星野さん…」と俺を呼び止める。どうしたのかと思い、彼の方を見る。
「また偉そうなこと言っちゃいますけど、星野さんは自信がなくなったと昨日仰ってましたけど、自信というのはその場その場で変わると思います。大事なのは、自信を無くしかけた時にどうリフレッシュして自信を持ち続けられるようにするかだと僕は思います。今日のことで貴方がリフレッシュできたならば僕も嬉しいです。仕事、無理しない程度に頑張ってください!」
と優しい笑顔で言って来た。そして「では」と言って彼は帰って行った。
ああ…そうか…そういうことか…
最近感じてた自分の気持ちに今気づいた。俺は彼のことが恋愛的な意味で好きなんだ…
いつもあの優しい笑顔と言葉に何度も助けられるうちにいつの間にか好きになっていたんだと思う。
「マジか…」
と俺は顔を両手で覆う。目覚めた意識を抑えるように。
落ち着いた後、家に帰り、風呂に入ってゆっくりした後にベッドに入り、眠りにつく。
今夜もよく眠れそうだ。
そして朝会社に行き、まず鈴木に話しかけ、2人だけで話せるところに移動する。
「すまん!あの時嫌な言い方をして放棄してしまって、俺はもう一度考えてお前と意見を出し合って、素晴らしい案を出したい。」
と俺が言うと、鈴木も同じことを思っていたらしく、俺に謝った後に「もう一度よろしくな」と言いながら手を差し出してきた。俺はその手を握り握手をした。
その後は2人で協力して意見や案を出し合ったが、前のように喧嘩する感じではなく、落ち着いた感じで話し合う。
結果、自分たちの納得のいく案が出来上がり、上司からもOKを出され、上や取り引き先にも素晴らしいと太鼓判を押された。
大成功だった。
俺たちは嬉しくてグータッチをする。
「星野、これからもよろしくな!」
と鈴木に言われ、俺もニヤッと笑い、「おう!こちらこそ!」と答えた。
俺の中にはしっかりと自信がついていた。
これからまた自信をなく仕掛ける時が来るかもしれないが、その時はまリフレッシュをしよう。結果次第で自信になるかどうか知るのではなく、これまでの頑張った経緯で自信になるかどうかを知れば良いと俺は思う。
結果も大事だが、1番重要なのはそれまでの頑張りだとも思う。
おそらく、彼もこれに気づいて欲しかったのかもしれないな。
と思いながら、好きな人の姿を思い出す。
これからもこの目覚めた自信と彼に対する思いを大事にしようと心に決めた。
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