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6話 父子の星座 前編
しおりを挟むもう…いい加減に分かった。
あの男の子が誰かなのか、あの夢はなんなのか。
あれは自分自身の過去であの男の子は自分だ…
自分の今までの経験が夢に出ているのだろう…でもなぜあの夢を見るのか分からない…
あの夢が過去のものだと思ったら、繰り返し同じことを経験しているようで苦しい…
しかも自分が苦しんでいる姿を間近で客観的に見るというのはとても残酷だ…
でも…それでいいのかもしれない…
自分は、自分自身を傷つけ呪わないと存在を認識出来ないのだから……
最近の企画が功を成し、今日土曜日に出勤するくらい仕事も大分忙しくなったが、今までのように憂鬱な気分はない。何故かと言うと、自分には頑張れる理由があるからだ。
それは好きな人。辰支くんに向き合えるようにもっと自信をつけたいからである。ただし、彼の言うとおり無理しない程度に頑張る事は大事だ。無理してして働くと後に動けなくなり、余計に悪い方向にいってしまう。
簡単に出来ることではないが、出来るのであれば少しでも休まないといけないと俺は思う。
「今日は一段と調子いいな。星野」
鈴木が話しかけてくる。
「まあな、頑張ってちゃんと向き合えるようになりたい相手がいるからな。」
と俺が答えると、鈴木は驚いた顔をして、
「恋の力はすげーな!前のお前では考えられねえわ!」
と面白そうなものを見ているような様子で言ってくる。
その後鈴木は「俺も頑張るかー」と言いながら自分の仕事に戻る。
恋か…確かに凄いな。
そう思いながら仕事に戻る。
今回もいつも通り終わった後に、大学時代の先輩からメッセージが入っていた。
「よお!久しぶりだな!唐突で悪いんだが、お前に相談があるんだ。この後少し会えないか?」
という内容だった。先輩からの久々に連絡がきて嬉しくて、すぐにOKの返信をする。
その後先輩からの返信がきて、会社の近くの居酒屋に集合することにした。
会社を出て、近くの居酒屋に向かうとその前に先輩が立っていた。
「よお!星野!元気にしてたか?」
と俺に気づいた先輩が笑顔で言ってきてくれた。
2人で居酒屋に入り、とりあえず、2人ともつまみに枝豆とビールを頼んだ。
先輩と飲むなんて2年振りくらいか…
先輩の名は児島優馬。俺の大学時代のサークルの先輩で良くしてもらい、色々と世話になった。ただ、先輩も美波同様、当時からギャンブルなどをしていたなどの良くない噂はあったが、先輩は別にそんな風には見えなかった。
それ以外の噂だと、先輩の家が金持ちだからよく遊んでいるという噂だった。
確かに先輩は女遊びはしていたが、そこまで酷くなかったと思う。
だが、当時からの親友、住田祐介はずっと怪しいと思っていたらしい。
今でもそうかな?
と俺が考えていると、先輩が、
「なあ、星野、俺さ起業しようと思うんだよ。」
と言って来た。俺は一瞬驚いたが、すぐに
「すごいっすね!いつするんですか?」
と聞いてみると、先輩は「まだ決めていない」と言った。おそらく相談とはそれのことだろうと俺は思う。
「もしかして相談とはその事についてですか?」
と俺が聞いてみると、先輩は
「察しが良くて助かる。」
と言い、内容を話し始める。
「星野、お前、俺と一緒に起業しないか?」
と言われた。俺は一瞬耳を疑ったが、どうやら違うようだ。
俺は今、起業をしようと勧誘を受けているのだ。
だが俺は今の仕事が気に入っているし、辞める道理がないので、断ろうとしたら、
「頼む。お前の力が必要なんだ。起業に成功したらお前自身もっと変われるぞ!昔や今よりも自信がつくぞ!」
と言われた。最近自信はついてきている。
だが、まだ足りないのかもしれないと思う。もっと自信をつけたいと思う。
それであの子にも胸を張って告白出来るかもしれない…
「少し考えさせてください。」
と俺が答えると、先輩は少し訝しげな顔をしたが、「分かった。まあ前向きに頼むわ」
と言った。そのあとはもう帰ることにした。
少し酔っ払ったようだ。
自分のマンションに着き、部屋に入ると、俺は倒れるようにソファに寝転がったが、しばらくして、酔いが覚めた後にシャワーだけ浴びて、ベッドに入る。
明日丁度実家に帰るし、相談してみるか…
と思いながら、ゆっくりと眠りに入った。
翌日、実家に帰ると、父さんも今日は休みらしく、家のソファに座って新聞を読んでいた。
「おお!護也、久しぶりだな。母さんから聞いたぞ。ちゃんとしないといけないぞ。」
と出会い頭に母親と同じことを言って来た。
父親の名は星野護人。精神科の医師をしており、精神科医の中でも飛び抜けていて有名である。精神病にかかった人が父さんの病院に行くと、時間はかかる時もあるが、必ず治ると有名だ。
人柄もよく、母と同じく優しい人だ。小さい頃から色々な場所に連れていってくれた。
父さんと少し話すと、今ある患者を扱っているが、その人は1年経っても、心を開いてくれないらしい。
父さんでもかなり難しいらしい。
そんな子がいるなんて大変だな。
そんなことを思いながら、両親2人と昔話などをしていると改めて両親の凄さなどに気付かされる。
両親は本当に良い人だ。昔から色々と応援をしてくれたから今考えている起業の話をやろうということを話せば応援をしてくれるだろう。
俺が両親に相談があると言い、2人に
「俺、今の会社を辞めて先輩の会社に行こうと思うんだ!」
と話すと、両親は「えー!」と驚いた表情をして、すぐに母さんが
「ど、どういうことなの?!」
と言って来て困った表情をしている。
それに対して父さんは冷静に
「なぜそう思った?」
と聞いてきた。俺が昨日の話をすると、父さんは「ダメだ」とあっさりと言った。
「何でだよ。」
俺が聞いてみると、
「お前の話を聞いている限りその先輩さんは児島グループの息子だが、つい最近会社が倒産したんだ。そんな状態で起業なんて出来るわけないだろう!お前は何も知らずに利用されるのかもしれないぞ!」
と言ってきて、母さんも頷く。
いつも応援してくれる父親と母親がまさか反対するなんて思わなかった。しかも俺がお世話になった先輩のことも悪く言われ、俺は少しイラついた。
「でも、もしかしたら先輩は貯金とかして、それで起業するんだと思うんだよ!」
と訴えてみたが、父さんは、断固として許可をしてくれない。冷静な話し合いも出来るはずもなくイラついた俺が「何でだよ!」と怒鳴ると
「お前はいざとなったら何も出来ないだろう!!」
と怒鳴り返した。俺は自分を否定されたことがなかったので、さらに怒りが強くなり、
「父さんは何も俺の事わかってねえじゃんかよ!!」
と言ったら、
バシッ
と父さんが俺の頬を殴った。俺は唖然としており、母さんも口を手で抑えた状態で驚いた顔をして固まっている。
俺は、父さんの方を見る。父さんはしまったと言う顔をしている。俺はもう何が何だか分からず、家を出ていった。そしてそのまま駅に向かい、自分のマンションの最寄り駅の方面の電車に乗る。自分の駅で降りて、改札を出る。
携帯を見ると母さんから連絡が来ていた。
「大丈夫なのか」ということと、「戻って話をしましょう」ということが送られていたが、既にもう自分の駅に着いてしまったため、また日にちを伝えて、今日はもう帰ると返信をした。母さんは「分かったわ。ちゃんと健康に気をつけてね。」と送ってきてくれた。
現在21時43分。俺は「は~~…」と大きなため息をつきながらマンションに向かう。
しばらく歩いていると、前に辰支くんが歩いているのが見えた。
彼の姿を見ただけでも癒されるが、今の状態では話しかけづらいため、どうしようか悩んでいると辰支くんが後ろを振り返り俺に気づく。
「星野さん!こんばんは!」
と笑いながら近づいてきてくれたが、すぐにギョッとした顔になる。
「どうしたのですか?!その顔!」
と俺の頬をまじまじと見る。
「ちょっとね…色々あって…」
と言うと、彼は「すぐに冷やさないと」と言いハンカチを出したが、残念ながら水はなかったようでどうしようかと考えている。
本気で心配してくれてすごく嬉しいな…
と心の中で思うが、やっぱり知られたくない…情けない自分を…
と考えていると、辰支くんが
「どうしましょう…?そこの公園の水飲み場で濡らして冷やしますか?」
と心配そうな顔で言ってくれたが、俺は
「いいよ…家で冷やすよ…じゃあ、おやすみ…」
と言って彼の返事も聞かずにマンションに早歩きで帰って行く。
今回のことは言いたくない…子供みたいで情けない…
でも、どういう顔で父さんに会えばいいのかも分からない…
一体どうすれば…
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