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6話 父子の星座 中編
しおりを挟む先週の日曜日に父さんと喧嘩をして、家を飛び出し、自分のマンションに帰ったあの日から3日が経った。
今日会社は代休している。
今週の土曜日にまた実家に帰って両親と会って話をすることになっている。
今、祐介と電話で話しており、久々に先輩に会って勧誘を受けて、親に相談したら反対され、喧嘩になったことを伝えた。
「そりゃあ、反対するだろ!俺もそうだし。第1あの男の悪行を俺は見たことあるから、もう分かりきってるよ。」
と言ってきた。どうやら、先輩は昔家のお金が使えないから後輩や同級生から金を奪っていたらしい。その場面を祐介が目撃をして、警察に通報したらしい。
その時は初犯ということで、すぐに解放されたらしい。
信じられない事実を知って、俺はまたどんよりとする。
そうしていると、祐介が電話越しで驚いた声を上げて、すぐに
「おい!テレビ見てみろ!」
と言ってきた。俺がすぐにテレビをつけると、ニュースがやっており、その時に驚くべき映像が流れてくる。
それは…先輩、児島優馬が逮捕され、警察に連れいかれるものだった。
逮捕理由は、なんと薬を買いまくり、借金も増えていて、金欲しさに、泥棒をしたとのこと。
「…嘘だろ…先輩が…泥棒…?」
と俺が信じられないと思っていると、祐介は
「辛いだろうけど、これが真実だ。もしかすると、お前から金を何らかの形で騙し取ろうとしていたんだと思う…」
ときつい現実を言ってくる。
胸が、ドクッ、ドクッ、と鳴っているのがわかる。
祐介が「大丈夫か?!」と叫ぶが、俺にはもう祐介の声が聞こえない。
俺は電話を切ってしまう。
自分を大事にしてくれた人がこんなことをするなんて、ショックだ…
ショックでおかしくなりそうだ。どうしたら良いのか分からない。
俺が頭の中でぐるぐると考えていたその時、
ピンポーン、とインターホンが鳴る。その音で俺は我に返る。
誰だろうと見てみると、辰支くんが立っていた。
急いでドアを開けると、袋を持った彼がいた。
辰支くんが俺の顔を見た瞬間に心配そうな顔をして、
「どうされたのですか?!顔色が悪いですよ!」
言ってきた。俺が「どうしてここに?」と聞くと、どうやら昨日の俺の様子がおかしくて気になって来たようだ。
本当に優しい子だな…
俺は彼を家に上げ、リビングのソファに座ってもらう。
「わざわざ来てもらってありがとう…」
とお礼を言う。それに対して辰支くんは
「いいえ。僕が勝手にしたことです。そうだ!星野さん。甘いものは好きですか?」
と一言言った後に聞いてくる。
甘いものは普通だ。好きでも嫌いでもない。そのことを辰支くんに言ったら「よかった」と一言言って、袋からクッキーが入った袋を取り出す。
「母から教わりながら作って見ました。疲れた時は甘いものに頼るのが良いと思ったので、持って来ました。」
と言ってくれた。すごく嬉しい。昔からたくさんチョコなどクッキーをもらったが、今思えば、自慢みたいになるが、単に俺の見た目が良かったから渡していただけなのだろう。
見た目ばかり見て、少しでも情けない所を見せたら呆れられ、イメージと違うと言われたこともあった。そんなことがあったから野球でのこと含む様々なことに気付かないふりをしていたのかもしれない。
でも、この子は俺が泣いた姿を見ても、こんなことまでしてくれる。
友達以外では初めてだ。
「ありがとう。食べても良い?」
と俺がクッキーを受け取り、そう聞くと、辰支くんは「もちろん」と言ってくれた。
食べてみると、サクッとなり、丁度良い固さで、甘すぎない味でとても美味しい。
俺が「美味い」と言うと、彼は「良かった」とホッとしたような表情で言った。
その顔を見たら、何故か、もう情けないと思われても良いから話そうと思ってしまう。
ゆっくりと口を開き、
「実は、今父さんと喧嘩してて…ちょっと落ち込んでいるんだ…」
と話してしまった。辰支くんは先程の笑顔を変え、真剣な表情で聞いてくれる。
先輩のこと、両親のこと、自分が子供みたいで情けないこと、そして、つい先程先輩が逮捕されたことと自分が利用されそうになったことが悲しかったこと。
全て話し終えて最後に俺は
「自信をつけたいのだけど、実際、先輩が捕まっても何も出来ない…父さんの言う通りだ…俺は最初否定されたことが悲しかったけど、自身の意志を強く持ちたかったために反発して、結局このザマだ…無駄なことをして、情けない…」
と言った。これで、彼には嫌われただろう。恋が終わったと思ったが、
聞いていた彼は
「今お持ちの気持ち、僕は無駄では無いと思いますけど?」
と意外なことを話し始めた。
「聞いてみて、僕が思ったことは、まずはもう少し警戒するべきだということですね。いくら信頼出来る人相手でも、1度冷静に考えてみたら良いと思います。起業なんて、本当に簡単な事ではありませんからね…」
と言われ、自分で振り返ってみると、確かに少し初凸猛進だったと思う。
彼はまた話し始める。
「何かに挑戦したいという気持ちや意志を持つことはとても大事です。でも、自分だけの問題じゃなければ、1度止まって、その人の声を聞くべきだと思います。前に言った冷静な話し合いにも関わってくるとも思います。
だから、止められたのならばちゃんと止まることも大事だと思います。」
確かにそうだ。ちゃんと止めてくれる人がいるというのはありがたいことだ。
と俺は思う…
でも、自分が情けないのには変わらない…
と思っていたが、辰支くんが
「あと、情けないと言っていましたが、情けなくなるのは、悪いことではないと思いますよ?」
と言った。俺はあまりにも驚いた表情をして「え?」と言う。辰支くんは
「情けなくなるのはある意味チャンスだと思います。大事なのはそこからどうするか、ですね。何もしなければ、本当に意味ありませんが、逆にそれをチャンスに変えて、成長する、という意味で、情けなくなるのは悪いことではないと僕は思いますよ?」
その言葉は少し強引にも聞こえるが、自然と俺もそうだと思えてくる。
失敗と同じだ。大事なのはそれで終わりにしないことだ。次に活かせるようにするのが大事なのだと思う。
辰支くんの話を聞いた俺は凄く救われた気持ちになった。
やっぱり好きだな…
俺は改めてそう思った。
救われた気持ちになったのに、俺は、
「やっぱり俺は父さんが遠く感じるな…」
とつい言ってしまった。
辰支くんが「どういうことですか?」と聞いてくる。
そりゃ気になるよな…
と俺は思う。
俺は昔から父が遠くいるように感じていた。人柄が良く、人望も厚く、仕事も出来て、家庭にも積極的で俺達兄弟の面倒もよく見てくれていた。
自分もああなりたいと強く思った。少しでも父に近づこうと。
しかし、現実は全く違う…
俺は父さんには届かない…
例えるなら、そう、父は夜空で多く輝く星で俺は地で寂しく咲く花だ。
そのことを辰支くんに話すと、辰支くんは優しい笑顔になりながら、
「それで良いと思いますよ?」
と言った。
俺はどういうことだと思い、少し嫌な顔をするが、彼は、
「実は星と花って、結構共通点や似ている部分があることって知っていますか?」
と聞いてくる。俺はそこまで星や花に興味を持ったことはない。
そう言うと、彼が話し始める。
「まずは共通点ですけど、星と花って、見たらとても綺麗ですよね?たくさん見えたら更に綺麗に見えると思います。そして、星と花にも無数なほど種類がありますよ。他にもたくさんあります。」
かなり楽しそうに話すんだなと思い、聞いていると、
「あと、ブルースターという花があるのですが、知っていますか?」
と聞いてくる。
名前は聞いたことあるが、詳しくは知らない。
「ブルースターはその名前の通り、青く星みたいな花なんです。花言葉は「幸福な愛」、「信じ合う心」、なんです。星由来の花に信じ合う心なんて凄いですよ!」
と辰支くんが優しい口調のまま話す。何故だろうと思っていると、彼は
「だって、星は他の星と繋がることで初めて星座になりますよね?星座の座には「集まり」という意味があるんですが、これは人にも共通するような気がするんです。人は集まって初めて会い、話し、そこから信頼が生まれて初めて繋がることが出来るんです。」
俺はなるほどと思いながら聞いているが、彼が何を言いたいのか分からない。
「つまりは、星も花も違うけれどで同じなんです。特に「集まる」ということは。どちらも人と共通している部分もあると思いますし、ブルースターはそういうものが詰まっている言わば象徴のようだなと僕は思います。
まあ、最終的に何が言いたいのかというと、貴方とお父さんも違う人間ですることも違うかもしれませんけど、人と信じ合い、繋がる事は同じだなと思うんですけどね。」
辰支くんの話を聞いていたが、何が言いたいのか分からなかったけれど、これを聞いたことによって次の話が理解出来る。
星も花も人も集まって、初めてひとつのものになる。例えば星なら星空と星座、花なら花畑や花束、人なら社会やチーム。違うけど同じ、集まることで出来ることが増える。
だから、俺と父さんが違う人間でやる事が違くても、信じ合い、繋がって助け合うことが出来る。だから違くてもいい。最初から人は一人一人違うのだからと
また、辰支くんに救われた…
彼は凄い…俺の辛さをいとも簡単に消してしまう…
この子を好きになって、良かったなと改めて思い、次父さんと会う日はちゃんと謝り話そうと決心する。
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