星空に咲く花畑

セイカ

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9話 泡沫の存在

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また……夢を見る。

今度はなんだ…?

と思うと、目の前に男性が立っている。その男性はこちらに手を差し出している。
おそらくおいでという意味だろう。
だが、自分…いや、僕は何故かその手を取ろうとはしなかった。

取ってしまったら、何か見えてしまいそうで…

そして、手を取らないまま2人が向かい合って立っているという状態が続いた。












辰支くんが俺の実家に来て色々あってから1週間が経った。
その間、彼は1度も俺の前に姿を現さなかった。
1度話をしたいが、なかなか会えない。

会いたい…

その気持ちが1番にあるが、彼がそれを望んでいないのかもしれないと思うと、悲しくなってくる。
今日は仕事が早く終わったので、昼に帰れた。
いつもとは違う時間に帰るのは新鮮だった。
自分の駅に着き、マンションに向かっていると、コンビニ前で偶然にも辰支くんを見つける。
久々に見た好きな人の姿に俺は胸の高揚を抑えられず、すぐに声をかけようとしたら、辰支くんに話しかけた男の子がいた。辰支くんより少し身長が高いが見た感じ同い年だと思う。
彼が辰支くんの肩に手を置き、そのまま自身の方へ引き寄せる。
それを見た俺は酷くムカついた。
そして、いてもたってもいられず、辰支くんに話しかける。

「た、辰支くん!」

すると彼は振り返り俺を見た瞬間に気まずそうな顔をする。

「辰支?こいつ誰?」

と辰支くんの隣にいた男の子が俺を睨みながら聞く。

「この人は…その…偶然知り合った人。」

辰支くんは下を向きながら答えた。
俺はその答えに少し悲しくなった。
確かに偶然なのは偶然だが、そこからは仲良くしていたと思っていたのに、そうではないと言われたようで胸が痛い。
お互いに黙っていると、男の子が

「話すなら場所変えましょう。」

と言いながら、辰支くんの腕を引っ張って歩いていく。それを見て俺は羨ましく思う。
俺は彼にあんな風に触れることが出来ない。

俺たちはいつもの近くの公園に移動した。

「で?あんたはこいつになんのようなんだ?」

男の子が俺を睨みながら聞いてきた。その目はまるで警戒をしているように見える。
いや、見えるではなく警戒をしているんだろう。

「その前に君は?」

と俺が聞くと、「俺?」と男の子が自分に指をさしながら、続けて

「俺は高岡剣介。こいつの小学生からの親友だよ。」

と答えた。彼は、辰支くんの小学校からの幼なじみで大学は違うが、時々会っていたりしていたらしい。

「少し、彼と話をさせてくれないか?」

と俺が言うと、高岡くんはあからさまに嫌そうな顔をしながら、

「はあ?何で?」

と聞いてきたが、辰支くんが

「剣介。大丈夫、少しだけ席を外してもらっていいか?」

と言った。いつもとは違う口調で驚いた。
高岡くんは「わかった」と一言言って、席を外そうとしたら、

「こいつに何かしたら許さねからな。」

と釘をさしてきた。
相当警戒されているようだ。

「それで、何か御用ですか?」

と辰支くんが口を開く。いつもの口調に戻っていたが、何故か虚しくなる。
多分今俺に見せている姿は偽りだからだと思う。

「君と話をしたくて…」

と俺が言うと、辰支くんは笑顔で

「話すことなど何も無いと思いますけど?」

とバッサリ言った。
今までの辰支くんとは明らかに違うのが分かる。

「あるよ。どうして教えてくれなかったんだ?父さん達のこと知ってるって…」

俺が聞くと、辰支くんはしばらく黙っていたが、1つため息をつくと、

「言う必要ないでしょ?そんな長く続く関係じゃないのだから…」

と今までの口調も喋り方とは違う話し方で言ってきた。
俺は驚いた。今までの優しい口調とは全く違うことに戸惑ったが、俺はそれでも話そうと
冷静になる。

「君がそう思っていても、俺は続くと思っていたし、続けるつもりだよ。」

と俺が話すと、辰支くんは「え?」と言ったが、俺はバクバクと鳴る心臓を落ち着かせながら、

「だって、俺は君のことが好きだから!」

と言った。
辰支くんはすごく驚いた顔をしていた。
彼はしばらくの間黙っていたが、下を向きながら、

「その気持ちは、前の優しくした時の僕に対してですよね?」

と話し始めた。

「だったらそれはただの早とちりですよ…僕の本当の姿を知らないだけ。」

俺は辰支くんの指摘に動揺してしまう。確かに今までの姿を見てたから好きになったのかもしれないと考えてしまう。
俺が黙っていると、

「ほらね。今の僕の姿を見ても好きだとは言えないでしょ?」

そう言われると、今の性格などを見てみると、思っていた辰支くんとは違う。

「それに、僕は人間なんかと付き合う気は毛頭ないです。」

その言葉に俺は

「君だって人間じゃん!」

と言うと、辰支くんはとんでもなく恐ろしい表情で睨みつけながら、

「俺を人間と一緒にするな…」

と低い声で言った。俺はその声と表情に怯えてしまう。言葉も出ない。

「あらら、ごめんなさい。僕ってばついうっかり。でも、本当に僕は人間とは違いますよ…確かに肉体、姿形は人間ですが、中身は違います…でも、そう追いやったのは人間ですけどね…」

と辰支くんは先程の恐ろしい表情から暗い表情になりながら言った。
俺は彼が何を言っているのか分からなかったが、彼はとんでもないものを抱えているとは感じた。
あと、振られたことも。

「あっ、喋りすぎましたね…それでは今度こそさようなら。」

そう言いながら、彼は携帯で先程の高岡くんを呼んで帰ろうとしたが、高岡くんが先に帰るように辰支くんに言う。
辰支くんは何かを察したような顔をして「わかった」と言ってその場を去って行った。
俺が呆然としていると、高岡くんは俺を哀れなものを見るような目で見つめながら、

「あんた、あいつのことなーんにも知らないんだな。知ったつもりでいたとかカッコ悪…」

俺は、その言葉に反論出来なかった。まだ出会って日が浅い。それで付き合うカップルは沢山いるが、相手の気持ちすら知りもしないで告白しても、傷つけるだけだ。
俺は花野辰支という人物を知らなさすぎた。だからこんな結果になってしまったのだろう。

「諦めんの?」

俺が色々考えていると高岡くんが聞いてきた。

「諦めるならもうあいつに関わらないでくれ。あいつは人間が大嫌いなんだよ…」

その言葉に俺は、焦った。
確かに、先程の辰支くんは本当の辰支くんかもしれない。だけど、俺は何故か今までの彼が偽りの姿とは考えられない。

「諦めない…でも、そのためには、辰支くんを知る必要がある。だから教えてくれないか?」

俺がそう頼むと、高岡くんは驚いた顔をして、

「こりゃ驚いた。あいつのあの姿を見てもなお知ろうとするとは。変な人だな。」

と笑った。だが、また真面目な表情になり、

「だが、変にあいつに触れるのはやめてくれ。あいつは何かあれば消えてしまうからな…」

と言った。
その言葉に俺の顔は強ばった。

「消える?どういうことだ?」

俺が聞くと、高岡くんはしまったという顔になったが、ため息をつくと、

「これだけは教えといてやる。辰支はな、
"自分自身を呪わないと存在を認知できない"んだよ。それに今まで関わった人間は時が経てばあいつの存在を泡のように忘れる。長い間関わってた奴もだ。その上、あいつはもはや"自分がわからなくなって、生きているのかも分からない"状態になってる…」

そう言って彼は暗い表情になる。
俺は彼が何を言っているのか分からない。
俺が悩んでいる様子を見て、高岡くんは

「あんたには難しすぎたかな。まあ、そのうち分かるさ。諦めなければな。」

その言葉に俺は少しだけ希望が見えた。諦めずに、彼を知れば、またわずかでも希望が見えるかもしれないと。
知るためにはやはりまずは、父さんに辰支くんがどのような人物なのか聞く必要がある。
そこで、次の土曜日に実家に帰り、父さんに聞いてみることにした。

土曜日になり、実家に帰り、父さんに辰支くんがどういう感じなのか聞いてみるが、患者の情報は当たり前だが、他者には言えない。それでも、俺は引けず、必死にお願いしたら、少しだけ彼と話した時の印象を教えてくれることになった。

「彼は、初めて会った時は本当に分かりやすく警戒をしていた。今でもそうだがな…」

父さんから見た辰支くんの印象は、本当に人間とはかけ離れている考えを持っているが、完全に人間を嫌っているわけではなさそうということだ。
俺はそれを聞いて、ますます分からなくなった。
人間が嫌いと言っていたのは嘘なのかとか、でもそれを言った時は本気の顔をしていたとかと考えていた。

「あまり、彼のことを知らない方が良い…」

と父さんは暗い顔をして言った。

何も分からないまま、実家から自宅に帰る道の途中、高岡くんを偶然見かける
やはり、彼に聞くのが1番だと思い、話しかける。

「高岡くん。」

俺が声をかけると、高岡くんが振り返る。あからさまに嫌そうな顔をしたが、気にせずに話す。

「唐突にすまない!だが、頼む!辰支くんのことを教えて欲しい!」

「本当に唐突だな…」

と高岡くんは呆れていたが、とにかく2人で話せる場所へと移る。

「分からないんだ!彼に一体何があったのかを教えて欲しい!なんでも良い!」

と俺が勢いに任せて聞くと、

「はー…わかったよ。俺の知っている範囲で教えてやる。ただし、これを聞くからには覚悟をして、必ずあいつを助ける努力をするというのが条件だ!」

と高岡くんが言う。
俺は少し戸惑ったが、すぐに気を取り直して、「頼む」とだけ言った。







だが、これから彼から聞く話だけでも予想をはるかに超えているとはこの時の俺はまだ知らない。
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