星空に咲く花畑

セイカ

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13話 星空に咲く花畑 前編

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僕は…俺は…自分が大っ嫌いだ。人間と同じくらい。

幸福感と感情がなきなっているくせに、何かを期待してしまうところが特に嫌いだ。

生の実感さえ無いのに…
唯一、生を実感出来るのは自分に不幸があった時だ。
例えば、痛み、精神的苦痛、そして、非難される時だ。
これだけを言えばドMのように聞こえるが、そんな問題ではない。

生の実感がなければ、自分は自殺をするか、自身の存在を否定する。

せっかく仲良くなったと言っても、相手にとったら自分はただ話しただけの薄い存在だ。
だからあっという間に自分の存在は忘れ去られる。

更には自分でも自分のことが全く分からなくなってしまった。
自分のことを1番分かっているようで分かっていないのは、自分自身なんじゃないかと思う。
だから、分からない部分は他人に教えてもらうしかない。

そういう人は自分の周りにはいなかった…

「……し」

「…つし」

「辰支!」

自分の名前を呼ぶ声でハッと我に返る。
今駅の近くの公園のベンチで剣介と話している途中だった。

「あー…ごめん…聞いてなかった…」

ボーッとしていたことを伝えると、剣介はじっと自分の顔を見て、

「また変なことを考えてたんじゃないだろうな?」

当たっていたが、あえて「まさか」と答える。剣介は納得してはいなかったが、それ以上探ってこなかった。

2人で世間話をしていたら、剣介の表情が少し暗かった。

「浮かない顔だね。剣介。」

と自分が聞くと、剣介は真剣な顔で、

「いや、この間の事件の犯人が捕まった時に言っていたあれ、本気かなと思ってさ。」

実は少し前にテレビのニュースに東京で殺人事件が起きたとのっていた。
犯人は男性で、元同級生達にいじめられており、その復讐をしていたとのこと。まだ途中だったらしく、逮捕時に犯人は

「逃げれたら必ず殺しに行く!」

と言っていたらしい。

「やるんじゃない?あそこまで人を殺した人物ならやりかねない。その時がきたら一切の躊躇もないでしょうね」

ニュースで聞いた話だともう既に10人を殺したとのこと。
そこまで命を奪ってしまえばもう歯止めがきかないだろう。
本当の意味で反省しない限り治らないだろう。

「俺は恐ろしく感じるよ。この世の中人を傷つけてそれを復讐するっていうループ。お前はこの人の容をどう思う?」

その質問に自分は

「人の世の容などどうでもいいわ!皆好きなように傷つけ合い、殺し合い、滅ぼし合えばいい!
奴らはそうやって、自然を破壊し、燃やし、汚して数多の国を作ってはまた燃やす。
挙句の果てに自分達が汚して住みづらくなったからって、地球を捨てて火星へ移住する計画まで立てている!」

1度開いた口は止められなかった。

「自分達を生かしてくれた土地を汚して捨てて別の星へ行くなんて、どこまで人間は色んなものを汚せば気が済むのか。
ただ、数と力で全ての支配者を僭称した無毛の猿ども、いっそ無残に滅べば良い!
どんな末路を辿ろうが知るものか!」

人間は自分達を生み、生かしてくれた地球を崩していっている。
他の生物も自然を必要以上に、自分達の邪魔になるものを殺し続ける。
それを知らん顔で住めなくなるからと火星の移住の計画までしている。

なんて最低なことなのか…いつから人間はそんなに偉くなったのか。

今の世の中あまりにも便利になりすぎて人間は「進化という名の退化」をしていっている。
こんな新しいものばかりに目が眩む人間なんていっそ滅べばいい。

先程の自分の言葉を剣介は黙って聞いていた。

「ごめんなさい…お前もその人間の1人でしたね。」

と自分が謝ると、

「気にしないでくれ、お前の怒りも尤もだ。」

その言葉に申し訳なくなってくる。

「さぞやおぞましい存在だと思うでしょう。お前ほどの人間の側に人間嫌いがいるのだから。」

自分でももう何を言っているのか分からない。

「いいや、お前の言っている人間が嫌いというのは、"人間の思想、行い、傷つけ合い"のことで"人間という生命自体"を嫌っているわけではないんだろ?」

そう、自分は人間が大っ嫌いだ。だけど、嫌いなのは"捨てる・傷つける・破壊"と言った行いだ。
人間という生命自体は嫌いではない。
それすら嫌いになってしまったら、"守る・助け合う・修復"を行っている人間達を責めることになる。
つまりは、何かに頑張っている姿、助け合っている姿、まともに生きている人間を非難していることになる。
それだけはしてはいけない。
人間は星と花と同じく、集まり、繋がり、助け合うことで初めて輝くというのに。

実際自分は人が助け合っているところ、誰もが楽しく笑いあっている姿を見るのが好きである。

自分は傍観者にしかなれないけれど…

我ながら矛盾している。

「矛盾してるだろ?」

と俺が心の中の言葉をそのまま言うと、

「いいや、矛盾にもいいものと悪いものがあると思うぜ?お前のは良い方だと思う。誰がなんと言われようが、俺はお前を信用する。その事に一切の悔いはない。」

その言葉は凄くありがたいものだった。

「ありがとう…こんな俺のために…」

俺が素直にお礼を言うと、剣介が唐突に頼みがあると言ってきた。
俺が「何?」と言うと、

「実は、今夜ここに来て欲しいんだよ」

と剣介が言いながら、何やら地図のようなものを見せてきた。よく見るとそれは、この間星野さんと出会った公園の木々の中だった。地図にはその場所に行くためのルートと辿り着くべき場所に丸が書いてあった。

自分が何故かと聞くと、剣介は

「行ってからのお楽しみ~」

とニヤニヤしながら言った。
夜に来て欲しいとのことだった。
怪しいと思いつつ、自分はOKをした。


そして夜、言われた時間に例の場所に行く。少し迷いかけたが、何とか着きそうになる。歩いている道中、星野さんのことを思い出す。
結構酷い言い方したなとかあの人は悪い人間じゃないのになど色々考えた。

まあ、もう会うこともないけど…

そう思い、目的地の目の前までに着いたところ、先客がいたようだ。
人影がある。どうしようと悩んでいると、人影はこちらに振り返ると、自分は驚いた。
その人影の正体は星野さんだった。
自分はすぐに逃げようと走り出そうとしたが、星野さんに

「待って!」

と言われ、立ち止まる。
何を言われるのか怖い。どうしようかと悩んでいると、

「こっちで話そうよ」

と星野さんが手を差し出しながら言った。

自分はその手を取ろうか悩んだが、何故か自然と手を出して、星野さんの手を取っていた。




その手はとても冷たいはずなのに、暖かく感じる。その感覚が何なのかは分からなかったが、少なくとも、この人は暖かい人なんだなと思った。
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