女川君は女性運が悪い〜俺は普通の高校生なのにいつも女性に絡まれている。もう放っといてくれないかな〜

片野丙郎

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1章

昼休み

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 午前の授業が終わり、昼休みが始まる。俺は昼食をとるべく席を立つが、そこに話しかけてくる男がいた。残念な事に俺なんかに興味を持ってしまった微妙にイケメンな男、有馬翔斗である。

「透、一緒に昼飯食おうぜ!」

「すまないな……有馬。俺には行くところがあるんだ」

「なんだ? 先約でもあったか?」

「バカ野郎、有馬! ボッチが昼食をとる場所なんて、トイレしかないだろう!」

「なんで入学早々、トイレ飯しようとしてるんだよ! 悲しくなることすんな!」

「なんだと! なら、お前はボッチの俺に教室で一人、昼ごはんを食べる様子をクラスメート全員に晒せって言うのか!」

「誰もそんな事いってねぇよ! もう、いいから一緒に飯食うぞ!」

 有馬は俺の手を取り、無理矢理、教室内でも屈指のリア充集団が固まる場所の椅子に俺を座らせる。リア充集団は3人で構成されている。

 ボッチの俺をリア充集団の中に放り込むとは……。有馬、なんて的確な嫌がらせをしてくるんだ! こうなったら俺がすることは一つ、息を潜めて空気と化すことだけである。

 俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。

 俺が必死に気配を殺し、空気と化していることもいざ知らず、有馬は話しかけてくる。おいっ、空気になるのを邪魔すんじゃねぇよ。

「ほらっ、お前のこと知りたいってヤツが俺以外にもいるんだぞ!」

 そう言って、有馬はリア充集団を指を差す。ハハッ、有馬。冗談もほどほどにしとけっての。

「女川君ってヤバい感じの人かなと思ってたけど、結構おもしろい人なんだね」

 俺が空気との一体化を試みていると、リア充集団の中の女子の一人がクスクスと笑いながら口を開く。肩まで伸びた茶髪をサイドテールにまとめたギャルである。ギャルはパッと見でも目立つ、ふくよかな胸を携えている。

 べっ、別に大きい胸に興味なんかないんだからね(ツンデレ風)!

「んっ、俺がおもしろい? 有馬、俺なんかおもしろいことしたか?」

「……少なくとも、お前という人間の珍妙さは中々おもしろいぞ」

「なに!? 知らぬ間に俺はクラスメートからおもしろいと思われていた? もしかして俺……お笑いの才能がある?」

「何をもってその結論に至ったかは分からないが、もし、お前がテレビなんかに出たらかなりの放送事故になると思うぞ?」

「クッ! 上げてから落とすなんて、これがクラスカースト上位からのイジメってやつなのか」

「お前が勝手に上げただけだろ!? どんな脳構造してんだお前!」

「ハハハハハッ!」

 俺が有馬と話していると、ギャル以外の残りのリア充達が笑い声を上げる。

「本当だわ、翔斗。女川君、めっちゃおもしろいわ」

 そう言って、有馬に話しかけるのは有馬のような微妙なイケメン顔じゃなく、正真正銘のイケメンだった。そんなイケメンはひとしきり笑い終えると、俺に話しかける。

「俺は池谷龍二いけたにりゅうじ。これからよろしくね、女川君」

「ああ、よろしくイケメン君……じゃなかった池谷君」

「ほら、美樹達も自己紹介しろって」

 イケメン君こと池谷君はハハハと苦笑しながら、横にいる黒髪のギャルに自己紹介を促す。緩くパーマをかけた黒髪を背中まで伸ばしているギャルである。

 池谷君……! 顔だけじゃなく性格までイケメンなんて、俺が女だったら惚れていたかもしれない。有馬なんて顔も性格も微妙なのに!

「なんだろう。今、すごく失礼なことを考えられている気がする」

 有馬が何か言っている気がするが、俺にはまったく身に覚えがない。俺が池谷君のイケメンさに感動していると、黒髪ギャルさんが自己紹介を始める。

「私……河合美樹かわいみき。よろしく」

 河合さんと名乗るギャルはテンション低めに名乗る。

「はいはい! 次、アタシ! アタシは日野茜ひのあかねって言います! よろしくね、女川君」

 続いて、茶髪ギャルさんも河合さんと対照的にテンション高めで自己紹介する。

「こちらこそよろしくね、日野さん」

 なるほど。彼ら4人が1-A組のクラスカースト最上位、いわゆるイケてるヤツらだろう。このクラスにおけるメインキャラクターとでも言うべきか。

 まぁ、高校生活でボッチライフを送ることがほぼ確定している俺にとっては、今後、関わることもないだろう。

「それでね、女川君。明日って休日じゃない? 私の叔父さんがスポーツ施設を経営してるんだけど、明日クラスのみんなで親睦会も兼ねてスポーツ大会を開こうってことになったんだ! よかったら、女川君もどう?」

 クラス全体でスポーツ大会だと……! コミュ障を炙り出す最悪の大会ではないか。チームを組んでいたら、俺一人だけ余る光景が容易に想像できる。……バスだな。

「ごめんね、日野さん。明日は用事があるんだ」

「そうなんだ……。なら仕方ないね」

「……」

 ふぅ、何とか最悪の事態は避けられたぞ。よし、明日はケーキを食べに行こう。確か、隣町に新しくできた店のチーズケーキが評判なのだ。明日のスイーツに思いを馳せていると、有馬の声が邪魔をする。

「……ちなみに透、用事ってなんだ?」

「脳の円滑な動きを助けるために砂糖を使った料理が大量に並べられている店に行くとこだが?」

「ようは、スイーツを食べに行くってことじゃねぇか! お前、本当は明日、暇だろ! おいっ、透は明日参加だ、茜ちゃんよろしく」

「うっ、うん。参加者の欄に丸つけとくね」

 くっ、明日の予定をさりげなく(?)確認するなんて……。有馬、恐ろしいヤツ!

 有馬の巧み?な誘導により、明日のスポーツ大会に参加することになってしまった。ああ……俺のチーズケーキが遠のいていく。

 その後、リア充集団は昼休みが終わるまで話し続けるのだった。俺? もちろん、リア充集団から脱出すべくさりげなく去ろうとしたさ(すぐに有馬に捕まった)。
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