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1章
天使さん
しおりを挟むまったく計画通りにいかなかった高校初めての登校日を終え、俺は土曜日を迎えていた。つまり、学生にとってのTHE休日! である。
しかし、悲しいことに俺はボッチだというのに、今日クラスのスポーツ大会に参加するなどというボッチにとっての拷問に行くことになっている。
だが、俺はスポーツ大会に参加する気はないッ!
ボッチにはイベント事を休むための最終奥義があるのだ。まぁ、ざっくり言うと、仮病である。
昨日は有馬の策略(?)にハマって不本意ながら参加する事になったが、俺を舐めてもらっては困る。多少の障壁程度で高校初めての休日を諦める気はない。ちなみにスポーツ大会は10時からで、今は9時過ぎである。
昨日もらった茶髪ギャルちゃんこと日野茜さんの連絡先へ風邪にかかったフリをして話すため、喉を調整する。なんとしても、俺が健康体であることがバレるわけにはいかない。
「んっ、……うぅん! あー、あー」
よし、風邪にかかったフリの準備は完璧だ! これならば日野さんも完全に騙せるだろう。準備を整え、俺は意気揚々と茶髪ギャルちゃんへ電話をしようとするのだが……
ピンポーン!
電話をしようとしたタイミングで玄関からチャイムが鳴る。しょうがなく携帯をベッドの上に置く。そして、ウチへの来訪者に対応しようと1階の玄関に下りる。すると、1階に降りた当たりで聞き覚えのある声が聞こえて来る。
「おーい、透! 一緒にスポーツ大会に行こうぜッ!」
玄関の覗き穴から玄関の外を見ると、予想通り、玄関の前には微妙イケメン、有馬翔斗が立っていた。相も変わらず、微妙な顔である。
なんて印象の薄い覚えにくい顔だ。どうせなら池谷君のようなイケメン顔か、一目見たら忘れられないようなドブサイクな顔になって出直して欲しい。
ふぅ……なんでアイツがウチに来てるんだ!? いや、今重要なのは、どうやって有馬に帰ってもらうかってコトだ! どうする? 居留守でも使うか? うーむ、アイツには悪いが居留守を使わせてもらうか。まぁ、有馬だし大丈夫だろ。
そんなことを考えている間にも、有馬は絶えず俺のことを玄関の外で呼ぶ。おいっ、近所迷惑になるから止めろ。隣の田中さんは夜勤が多くて、昼間は寝ている事が多いんだぞ! 田中さんの安眠を邪魔しないであげて!
「おーい、透~! 早く出てきてくれよ~」
ふっふっふっ、無駄だよ有馬君。俺はスポーツ大会には行かないのだよ。せいぜい、クラスメートと青春とやらを楽しむがいい。
「モンブラン持ってきたからさ~。お前甘いもん好きなんだろ~?」
おいおい、モンブランぐらいで俺が釣れるわけ無いだろ。たとえ、俺がスイーツ好きだとしてもな。甘く見てもらっちゃ困るぜ、モンブランだけに(上手くない)。
「おーい!」
ふっふっふっ……無駄無駄無駄無駄無駄ァー!
「透~!」
ふっふっふっ……。
「陽キャの透くーん!」
瞬間、俺は無意識で叫んでいた。
「俺は陽キャじゃねぇ! 陰キャでボッチの男、女川透だッ!」
「やっぱり居んじゃねぇーか! おいっ、透! 早く出てこい!」
クッ……! 有馬……なんて策士なんだ! 言葉巧みに俺の行動を誘導するとはッ! こうなったら直接応対して帰ってもらうしかない。
渋々ながらも、玄関の扉を開ける。すると、つい昨日見た微妙にイケメンな顔が目に入ってくる。
「お前……やっぱり居んじゃねぇか。ほら、準備しろ! さっさと行くぞ」
有馬は呆れたような顔を作り、俺をスポーツ大会に行かせようとさせる。まだだッ! 有馬に自慢の仮病の演技を見せて、諦めてもらう!
「ゴホッ、ゴホッ。あ~、これは風邪引いちゃったかな。こりゃあ、スポーツ大会にはいけないなー」
「……」
渾身の演技を見ても、有馬は胡散臭いものを見るような目で俺を見るだけである。クッ! コイツには俺の演技が効かないのかッ! こうなったら雰囲気で誤魔化すしかない!
「ほら、透。早く行くぞ、早く来いよ?」
「だが断るッ!」
ポーズを取り、有馬の誘いをキッパリと断る。この俺が醸し出す雰囲気を持ってすれば、有馬も諦めるはず……!
「「……」」
しばらく、沈黙がその場に流れる。こっ、これはいったか? 誤魔化せたか?
俺は期待を込めて、有馬が諦めたか? と、静かに待つ。しかし、その願いは潰える事となる。
「いや……いいから行くぞ?」
そう言って、有馬は俺の首根っこを掴み、引きずってスポーツ大会に行かせようとする。
「いっ、いやぁぁぁ! 今すっぴんなの! せめて、化粧をさせてぇ!」
「お前、元々化粧なんかしてねぇだろ」
俺の必死の叫びも空しく有馬に否定され、ほぼ強制的にそのままスポーツ大会の会場まで連れて行かれるのだった。
おのれ有馬……。
ーーーーーーーーーー
ドナドナド~ナ~ド~ナ~。
俺は思い切って、荷馬車に乗せられた子牛の気持ちになりきっていた。荷馬車には乗っていないが、まあ、大体同じだろう。現実逃避をしている内に会場の体育館まで来ていた。
「あっ! 翔斗君おはよう!」
受付をしているのか、昨日の茶髪ギャルちゃん、日野茜さんが体育館の入り口で紙を持って点呼をしている。
「ああ、おはよう茜」
「みんなもう来てるよ! 結構早めにみんな集まっちゃった!」
「なに? もっと早く家を出るべきだったか……」
「ううん、大丈夫だよ。それじゃ、みんーー、……翔斗君、誰をひきずってるの?」
茶髪ギャルちゃんは俺に気づいたようで、目の前の光景を説明してもらおうと有馬に質問する。言ったれ有馬ッ!
「いや、コイツがスポーツ大会をサボろうとしてたから、無理矢理引っ張ってきたんだ」
「そっ、そうなんだぁ……」
日野さんの表情は「まったく理解できてないけど、これ以上突っ込むのはやめとこう」と見るからに物語っている。
「あっ、日野さんおはよう!」
「うっ、うん。おはよう女川君」
有馬に引き摺られながら挨拶をする俺を見て、困惑しながらも、日野さんは挨拶を返してくれる。
あー、なんて良い人なんだ日野さん。ボッチの俺にも挨拶を返してくれる。見た目は結構軽い感じだけど、俺に挨拶を返してくれるんだ。間違いなく、生まれ持っての善性を持っているのだろう。ギャルはみんなビッチとか偏見を持っててごめんなさい。
日野さんのような方をそのまま日野さんって呼ぶのは失礼かもしれない。よし、今度からは天使さんと呼ぼう。いや、大天使の方がいいか?
日野さんの呼び方を再考している間にも、俺は有馬に体育館に引きずられ、クラスメートが集まる場所に連れていかれる。やがて、全員を点呼し終わった天使さんがみんなの前に立ち、スポーツ大会の始まりを告げる。
「これからクラスの交流会を兼ねたスポーツ大会を始めます! みんな、今日は集まってくれてありがとう。今日は楽しい1日にしようね!」
天使さんの言葉に伴って、クラスの陽キャたちがワーキャーと俄かに騒ぎ出す。
あー、ついに始まっちまった。こうなったら、また空気になるしかないかぁ。
俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。俺は空気。
ぼんやりとそんな事を考えながら、それぞれ、チームに分かれていくクラスメートをボーっと見つめる。
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